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ギルドの片隅で飲んだくれてるおっさん冒険者〜蛇足編〜  作者: 哀上
蛇足④

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死闘 17

「ご主人様、ごちそうさまでした!」


 会計を済ませ店を出る。


 もちろん、支払ったのは俺。

 流石にね。

 獣っ娘相手に割り勘にするほど落ちぶれちゃいないし、まして奢って貰うなんて持っての他だ。


 食事のおかげで、一旦目が覚めのか。

 俺におぶられてここまで連れてこられたのはどこへやら。

 やたらテンションの高い彼女。


 両手を広げ、まるで綱渡りでもするかのように。

 体を揺らしながら大股で歩いている。


 何をしているのかと思ったら、影と日向の境目を器用に渡っていたらしい。


 あぁ、なんか懐かしいな。

 昔を思い出す。

 もう何十年前だろうか、子供の頃学校からの帰り道。

 白線の上を通って家まで帰ったりしたっけ。


 この世界にそんなもの存在しないのだけど。

 整備されてる道自体が希少だからね。

 わざわざ区画線を引いたりなんて、そう細かい事やってる余裕はないのだ。


 それでも、人間は無いなら無いなりで遊びを見つけるのか。

 やってることは前世の小学生と一緒。


 建物が途切れ、行先に影がなくなった。

 どうするのかと思えば。

 ひょいと、俺の影を利用して上手いことその難関を乗り越えてみせた。


 ……身軽だな。

 獣人の獣っ娘がやってるせいか、子供の遊びなのに謎に見応えがある。


 少々背中を押してみたい感情に襲われるが。

 可哀想か。

 食後だしな、勘弁してやろう。


「そこから落ちたらどうなるんだ?」

「え? うーんっと、ゴブリンに襲われちゃいます」

「そうか、それは怖いな」


 多分、本当は何も考えていなかったのだろう。

 なんとなく遊んでいただけで。


 にしても、ゴブリンか。

 あの巨大猪とやり合ってた姿を見るに、よほど大規模な群れじゃなければ落ちても余裕な気もするが……

 それを言うのは野暮というものかね。


 くだらないことを話しながら、俺たちは宿へと帰ってきた。


 今日は獣っ娘の仕事もお休み。

 いや、正確に言えば俺の専属スタッフってことになってるのだろうが。

 中身は一緒だ。

 そのまま部屋へと戻る。


 お昼も過ぎた頃。

 春の陽射しが窓から差し込み、心地のよい風が肌を撫でる。


 窓辺で2人して横になった。


 朝から運動して、たっぷり食べて。

 獣っ娘も眠た気。

 さっき、店から出た瞬間は元気になっていたけどそこから時間も経てばね。

 血糖値も上がって、むしろ眠くなるのが当然だろう。


 贅沢だよなぁ。

 わざわざ遠出して、お昼寝するとか。


 別に、この行為に金が掛かるわけじゃない。

 それでも。

 旅先で時間を無駄に出来るってのはこれ以上なく贅沢なように思える。


 ちょっと勿体無いけどね。

 これほど、幸せなこともない。


 ふと、視線を横にやるとすでに寝落ちしたらしい。

 寝息が静かに聞こえてくる。

 仰向けでの雑魚寝。

 獣っ娘の胸が上下にゆっくりと揺れている。


 ちょっと邪な考えが脳裏をよぎるが、そこまで鬼畜じゃない。

 それに。

 今回は馬車できたから移動に2日掛かったが、そうでなければいつでも来れるのだ。


 なんとなく、勝手な縛りみたいになってた冬にしか来ないってのも。

 今回でなくなったしな。


 窓の外、青い空に白い雲が映える。


 木造の室内から覗くその光景。

 空の一部が窓枠によって切り取られ、一つの作品に押し込まれたように見えた。

 日本ではないのに。

 どこか、田舎の日本の風景を幻視する。


 ……さてと。

 後、数時間したら帰るかな。


 初めから今日には帰るつもりだったのだが、夜遅くに出ると言うのもなんだ。

 その時間じゃ街から出る馬車もないし。

 明らか不自然だろう。

 日が落ちる前なら、どれかの便で帰ったんだなってそんな話ですむ。


 いつでも来れるのだ。

 一度に長居するより何度も来る方がいい。


 まぁ、起こすのも気が引けるし。

 勝手にいなくなるのも、ただでさえ寂しい思いをさせているのだ。

 獣っ娘が起きたら。

 その時にちゃんとさよならして帰ろう。


 それまでは、俺も気持ちよく昼寝してもいいかもな。


 こんこん

 ドアがノックされた。


 わざわざ起き上がるのも面倒で。

 誰だろうと思いつつ、視線を向けただけ。

 向こうにいたのは女将さん。


 室内を見て、窓辺で寝っ転がる2人。

 寝てると思ったのだろう。

 そのまま帰りかけたが……

 途中で俺と目が合い、手招きされる。


 なんだか嫌な予感がしないでもないが、寝ぼけてるせいで思考がうまく回らない。

 行かないほうがいいと思いつつ。

 そのまま、招かれるままに女将さんの方にふらふらと近づいた。


 ふと、彼女の手にもふもふとした物が握られているのが視界に入る。

 それはまるで動物のしっぽの様で。


「……あっ」

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