死闘 16
「……これで以上かな」
ひと通り山菜を堪能したところで、お待ちかねの魚料理が登場した。
いやー、待ってました!
こっちは前回と同じらしい。
包み焼き。
大ぶりの葉をホイル代わりに使い、じっくりと蒸し焼きにした料理だ。
手間をかけて丁寧に火入れされた一品。
既に立ちのぼる香りが鼻腔をくすぐる。
でも、この料理のポテンシャルはこんなもんじゃない。
葉をゆっくりとめくると、内側に閉じ込められていた空気が一気に開放され。
むわっとした熱気。
湯気と共に、芳醇な香りが周囲を満たす。
うん、間違いないな。
うまいやつだ。
包まれていたベールを脱がせ……
改めてのご対面。
葉に包まれたその内には、形のいい魚が丸々1匹。
見た目からして贅沢な一皿だ。
ただ、前回食べたものに比べるとやや小ぶりかもしれない。
それでも十分大きいが。
あの時は店主もいいのが入ったって言ってたしな。
確か5〜60センチはあったと思う。
あんなサイズ、そう毎回手に入るものでもないのだろう。
何せ、この温泉街。
結構標高の高い位置にあるからね。
近くの川は渓流なのだ。
川のスケールを考えれば、あの大きさの個体が数いるとも思えないし。
数がいない以上、獲ろうと思って獲れる物でもない。
今回のは、大体一回りほど小さいかな?
ま、この世界にきて長らく欲してきたものが今日も味わえるのだ。
それだけでありがたい。
先ずは腹側から頂こう。
さっそく、身にナイフを入れる。
皮に触れたと思ったら、ふわっとなんの抵抗もなく刃が通った。
ナイフなんて必要ないかもな。
フォークだけで問題なく身をほぐせそうだ。
……ああ。
これだよ、これ。
脂の乗りも申し分ないし。
何より、口に広がるこの旨み。
相変わらず美味い。
身は前回と同じく白身で、見た目こそ違うけど。
間違いなく鮭のそれだ。
隣では獣っ娘も美味しそうに頬をふくらませている。
こちらも満足そう。
何よりだ。
俺も、もう身も心も満杯である。
ふー、満足満足。
ご馳走様でした。
「お、今回は泣いたりしないんだな」
「うっさい!」
さっきの仕返しだろうか?
店主が余計な小言を挟んでくるが、この料理に免じて許してやろう。
それに、そもそも泣いてはないからな。
確かにずっと求めていた鮭の味に少々感動した記憶はあるが。
うん。
流石に泣いてはない、はず……
んな事はいいのだ。
しかし、この店のレベルが高いのは前回で理解していたけど。
今回初めて食べた肉料理、これもなかなか良かったな。
また食べたくなる。
とは言っても、山菜と魚の上に肉を追加で頼むのは少し食べ過ぎだろうか?
ま、どうせ温泉街に来たら獣っ娘も一緒に来るだろうし。
彼女も気に入ってたっぽいからね。
そう考えれば、ちょっと多いかもしれないがそこまででもないか?
山菜と魚料理に続いて。
さっきの肉料理もこの店での俺のスタメン入り確定だな。
「美味しかったか?」
「はい!」
「どれが一番美味しかった?」
「うーん、どっちも!」
横で満足げにお腹をさすっていた獣っ娘。
俺の質問に、少し悩むような仕草をした後。
笑顔でそう答えた。
そうか、どっちもか。
ナチュラルに山菜が除外されてる気もするが。
ま、胃が受け付けるうちはガッツリしたもののほうがうまいわな。
店主も嬉しそうにニコニコしているし。
いいのだろう。
……本当にいいのか?
ここ、山菜が売りの店だった様な。
そういえば、今回やけに手間のかかりそうな肉料理が真っ先に出てきたけど。
普通野菜先だよね。
今回もこの前も魚は後回しだったし。
贔屓か?
嬉しそうに肉を頬張る獣っ娘の姿を見て、店主も明らかに目を細めてた。
これは黒寄りのグレー。
いやまぁ、別にいいんだけどね。
むしろ、だ。
こんな可愛い娘相手に贔屓しない方が逆におかしいまであるか。




