死闘 3
目の前に餌ぶら下げたせいか、一度止まった俺への揺らし攻撃が再開。
しかも、出力がかなり上がってるような……
ついにはベッドから落とされそうになったので渋々起き上がる。
ま、そりゃこうなるよな。
しゃーない。
そして、起きたものの未だうだうだしていた俺を相手に。
服を剥ぎ取り。
何なら着るのまで手伝ってくれた獣っ娘。
最低限の身支度を済ませ、テンション高めな彼女に手を引かれて宿を出た。
……眩しい。
室内にも日の光は差し込んではいたが、にしても寝起きでの急な外出だからね。
眼球に与える刺激は強め。
片手で日差しを遮りつつ、目がショボショボする感覚がある。
と言っても、それも数秒あれば慣れるのだけど。
人の体ってのは不思議な物だ。
昨日も思ったが、やはり街を歩いてる人が多い。
見慣れて既視感すら覚えるようになった宿の天井と違って、同じく散々訪れた街並みのはずなのにこうも人が多いと少し新鮮な気分になる。
しかも、時間も時間だしな。
女将さんも獣っ娘も先に起きちゃってて、なんならさっきまで寝坊の様な扱いを受けていた俺だが。
それでもまだ朝と言っていい時間帯である。
んな時間からここまで人通りあるんだなと。
温泉街のこんな活気ある姿を見るのはかなり久しい気がする。
普段、冬にばかり来てるからね。
人が居なさすぎて、女将さんの宿潰れちゃったりしないかとか。
振り返ってみるとかなり失礼な心配もしてたが。
シーズン入りかけでこれなら、多い時期はかなり客も入っているのだろう。
完全に、無用な心配だったらしい。
「ご主人様?」
ちょくちょく周りを見ながら止まってるせいか。
獣っ娘が、こちらを振り返って不思議そうな視線を向けてきた。
ただ、首を傾げつつも付き合うつもりは無いと。
早く行こうと言わんばかりに、チラチラと様子見しながらも歩みを止める気配は無し。
さっさと狩に向かいたいご様子。
どうやら、獣っ娘はこの景色に思うところはないらしい。
働き始めて結構経った。
慣れたのだろう。
獣人だし、元は別の国の出身だと思うが……
住み始めて数ヶ月。
まぁ、そんなもんかね?
メインの通りを抜けて、街を出た。
ここの街道ってそれなりに整備されてるんだよね。
街の規模にしては少し過剰に感じたけど。
こんなに人が集まるなら納得である。
道なりに少し歩いて。
流石に、森の中への道なんて整備されてないので適当なところから草木を分け入る。
明確な目的地がある訳でもないのだ。
一応、源泉には行くつもりだけど。
結構数あるからね、森への入り口なんて適当でいい。
前を進んでいた獣っ娘が止まった。
何か見つけたらしい。
目が合った。
はて?
……あぁ、なるほど。
これ、許可を求める視線だったのね。
「いいぞ」
そのためにわざわざ来たんだからな。
否と言うはずが無い。
俺の言葉を聞くなり、獣っ娘は目一杯地面を蹴った。
一瞬でトップスピードに乗る。
流石、獣人。
別に普段から冒険者の様な事をやってる訳でもないし。
まだまだ若く経験不足。
実際に出てる速度自体はチート持ちの俺からは勿論、そこそこ経験を積んだ冒険者にも劣る程度だと思うのだが。
疾走感と言うのか、それが数割増しに思える。
そして、見事獲物を捕らえてみせた。
昨日捕まえたのと同じ、ネズミに似た小動物。
この森に多く棲息しているのだろう。
俺に自慢げに見せつけてきて、また次の狩に移る。
しっかし、昨日の今日で飽きないね。
ま、本能ってのはそんなものか。
特にタガが外れたら。
俺だって、昨夜は散々搾り取られてカラカラになったってのに。
朝から誘惑に負けそうになってた訳だしな。
獣っ娘には色々我慢させちゃってるからね。
女将さんやら他の宿のスタッフもよくしてくれてるみたいけだけど。
それでも。
慣れない場所に放り込まれて、大変だったのは想像に難くない。
せめて、俺が来た時ぐらいはめいいっぱい遊ばせてやろう。
まぁ、一緒に走り回れるほど元気一杯とはいかないのだけど。
付き添いぐらいならね。
全然。
適当に、良さげな木の幹に腰掛けて狩の様子を見守る。
あ、そうだ。
念の為、魔眼使って周囲の警戒はしておかないとだな。




