死闘
チュンチュン、チュンチュン
鳥の囀りが聞こえる。
ぼんやりと意識が覚醒し、まぶたの奥がうっすらと明るい。
もう朝か……
そう意識すると、途端に眩しいほどに光が強く感じた。
「ん、んっんん。ん〜〜」
腕を限界まで伸ばし、力を抜く。
重力に任せるままにベッドに勢いよく落ちる。
あー、よく寝た。
まだまだ半覚醒の中、うっすらと目を開ける。
見慣れた天井だ。
旅先でそう感じるのもいささか不思議な気分ではあるが、なんだかんだ毎年泊まってる所だからね。
それに、今回は冬に来てから数ヶ月も経ってないし。
そりゃ、ね。
既視感も覚えるって物だ。
掛け布団を巻き込みつつ、ゴロりと転がり。
枕に顔を埋める。
あぁ、このままずっとゴロゴロしていたい。
「ご主人様、おはようございます」
そんな思考のままに、ベッドの上でだらけていると。
横から獣っ娘の声が聞こえた。
唸ったり、ゴロゴロ転がったり。
1人で暴れてたからね。
俺が起きたのに気づいて寄って来てくれたらしい。
どうやら、先に起きてたご様子。
昨日は本能のままに少しやりすぎちゃったかと思ったけど。
元気そうだ。
いやー、若いっていいね。
昨夜の疲労を感じさせない。
夜だけじゃなくて、昼も森の中を散々駆け回っていたはずなのだが。
ほんと、年齢というやつはいかんともし難い。
前世の感覚的に俺なんてチートなかったら今日は一日中ベッドから起き上がれなかった説濃厚である。
朝起きて、そのまま側に脱ぎ捨ててあった俺の服を羽織ったのだろう。
ゆったりとした格好だ。
朝チュンの上に彼シャツとは。
なんて素晴らしき光景であろうか。
眼福、眼福。
それに、俺を覗き込むように屈んだせいで首周りが大きく空いていて。
胸元が随分と無防備な状態に。
下着も昨夜のままらしい。
女体を飾りつけるために特化した衣装は、当然の用に俺の視線を釘付けにする。
日も昇って明るい時間帯にこれはちょいと刺激が強い。
かなりだらしない顔を披露してる自覚がある。
獣っ娘には変態扱いされそうだが、昨日の事を考えれば今更か。
ふと、昨夜の光景がフラッシュバックした。
最高の思い出、それもそうなのだけど。
女将さんのジトっとした視線。
一瞬で冷や汗が。
咄嗟に周りを見回すも、女将さんの姿はない。
そういえば、女将さんが獣っ娘に甘いことに付け込んでとんでもない格好をさせたような……
いや、言い訳するとしたら。
旅先で少し気分が高揚していたといいますか。
ね?
それに、見たかったのだから仕方がない!
「……あの、女将さんは何処に」
「女将さんですか? もうお仕事行っちゃいましたけど」
あ、そりゃそっか。
別に今日って休みでもなんでもないもんな。
俺が休暇として来てるだけで。
にしても女将さんも凄いな。
チートも無いのに、朝からバリバリ働いて。
流石である。
「呼んできた方がいい?」
「いや、全然! ……うん。全然大丈夫だから、気にしないで」
「?」
ひとまず、助かった。
とりあえずの賭けには勝ったらしい。
よかった。
なんとか生き残れた。
何もないってのも、それはそれで後の事が怖いような気がしないでも無いが。
先ずは今日生きて朝を迎えられたことに感謝を。
俺の様子に獣っ娘が首をかしげる。
一応言っとくけど、お前も共犯だかんね?
犯罪教唆?
残念、異世界にそんな法律はありませーん。
普通に実行犯の方が重罪でーす。
まぁ、女将さん相手にこんな詭弁が通用するとも思えないけど。




