親子 25
……見慣れた天井だ。
と言っても、別に朝を迎えた訳じゃない。
宿のベッドの上。
横には獣っ娘が寝っ転がっている。
「どうかしましたか?」
「いや、なんでもない」
俺がぼーっとしてたからか。
少し不思議そうな顔をして尋ねてきた。
気にする必要はない。
獣っ娘のフェロモンに当てられるような形で、情欲を刺激され事に及んだ訳だが。
王都で買ってきたランジェリーまで着せて。
随分と、楽しませてもらった。
別に何か考え事をしていた訳じゃなくって。
当然、思うところがある訳でもない。
男ってのは、一度満足するとその欲が一気に落ち着くもので。
ついでに軽い眠気も襲ってきて。
それで、少しばかりぼんやりとしていただけだ。
言っちゃえば、単なる賢者タイムである。
「なんでもないなら良かったです」
さっきまでの獣っ娘ならもう少し突っ込んできそうな物だが。
俺のさらっとした誤魔化しに納得したらしい。
いや、まぁ……
詳しく聞いてこられても困るんだけどね。
男特有の感覚だろうから、説明がむずいってのはもちろん。
何と言うか、ちょい躊躇われるし。
やる事やっといて、今更何をって話だけど。
相手が知り得ない感覚とか。
それを説明するときに、少しばかり言葉を選ぶことになってどうにも答え難いのだ。
賢者タイムの話はそこまででもないが。
それこそ、私の中どうだったとかそういう系の質問は。
とりま、納得してくれたならそれでよし。
何が楽しいのか。
天井しか写っていなかった視界に、ニコニコとした笑顔がひょっこりとカットイン。
俺の事を覗き込んでどこか満足気なご様子。
……そう言えば。
いつの間にやら機嫌も直してくれたっぽいな。
獣っ娘が、片付けしてくれてる間に。
寝落ちしかけて。
放置されたとでも思ったのか。
ちょっと、ご機嫌斜めになりかけてたのだが。
その誤解も解けてくれたらしい。
いやー、良かった良かった。
余計な心配させて、全くの不本意だったからね。
王都土産、獣っ娘はかなり恥ずかしがってたけど。
あれが効いたのかもな。
だって、わざわざ彼女用に買って持って来たってことはだよ?
忘れてない証明だし。
そういう事するつもりだった証拠でもある。
だから素直に着てくれたって可能性。
実は嬉しかった説。
恥ずかしいのは恥ずかしいから、結局文句は言われた訳だが。
あり得なくは、ない。
我ながら随分と俺に都合のいい解釈だけど。
「?」
獣っ娘がこてっと首を傾げる。
さっき、無防備な腹に飛び乗られた後にされた時はちょっとイラっとさせられたものだが。
改めて見るとこんな魅力的な仕草もない。
それに……
視線を顔から少し下げる。
スラリとした獣っ娘の、それでもしっかりと膨らみが見て取れる胸部。
その膨らみを優しく包み込む。
いや、包み込むというよりは飾りつけるって感じか?
包むにしては布が少ない。
羞恥心には慣れたのか。
それとも他に思うところでもあったのか。
実は彼女、例のランジェリーを着たままだったりする。
気に入ってくれのなら良かった。
自分で身体を見下ろしては、軽く触れてみたりして。
綺麗な装飾だよね。
着心地は分からないけど丁寧な作りだと思う。
こういう服、結構好きなのだろうか?
もしくは目覚めたのか。
どちらにしろ、そうだとすれば嬉しい限りである。
少なくとも嫌がられてはないらしい。
脱ごうとする気配もないし、それどころか行為中も身に付けたままだったし。
ま、本来着たまま楽しむ物だからね。
それでいいのだけど。
行為の邪魔にならないように、紐を解くと簡単に大事なところにアクセスできちゃう神仕様。
こう、とても普段使いは出来ないデザインをしている。
コスプレ、とは違うのかも知れないが。
せっかくのランジェリー。
脱いじゃうのは勿体無いからね。
スク水も、バニーも。
ああ言うのは、脱がしたり切ったりせずにずらしてやるべきなのだ。
……何の話だっけ?
取り敢えず、最高だったって事よ。
あの商人、元娼婦で店持ってから一年たってないだろうに。
いい仕事をする。
次王都行った時にも寄らないとだな。
「ご主人様?」
流石に見過ぎたか。
獣っ娘も俺の視線に気づいたのだろう。
だが、別に恥ずかしがって隠したりするつもりもないらしい。
むしろさらに密着してきた。
賢者タイムの俺には毒。
ってか、タイマーがものすごい勢いで消費されてる気が。
尻尾が巻き付いてきて。
どうやら、まだ足りないご様子。
本当凄い体力である。
「ひゃっ」
お返しだ。
一方的に攻められるというのも、不服だからね。
少しぐらい反撃したって別に構わんだろ。
尻尾の根元。
確か、尾てい骨だったか?
とんとん。
指二本ほどで叩く。
面白い反応をする。
巻き付いてきていた尻尾が、悶える様にクネクネと動き。
本人も内股になってモジモジとし始めた。
「ひゃうっ!」
止めとばかりに、獣っ娘の耳を咥える。
そしてハムハムと追撃。
流石に少しうざいかもしれない。
でも、ピロートークと性的な行為の中間と言うか。
好きなんだよね。
こうやって戯れてる時間が。
「この! そっちがその気なら……」
ただ、少し挑発しすぎたらしい。
もともとまだ満足出来てないとおねだりしてきていたぐらいなのだ。
獣っ娘の目が、獣そのものになって。
こんこん
ドアがノックされた。
一瞬他の部屋かとも思ったが、ここだ。
……そういや、いつもと違ってこの宿かなりお客さん多かったような。




