表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ギルドの片隅で飲んだくれてるおっさん冒険者〜蛇足編〜  作者: 哀上
蛇足③

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

52/94

親子 22

 浅めの鍋。

 たっぷりのお野菜に、鶏肉に近い淡白なお肉がゴロゴロと入っている。

 かなり食べ応えのありそうなお鍋だ。


 ……熱っ、でもうまいな。


 直前でお預けくらってたのもあり、威勢よく大きめに一口。

 見るからに熱そうなのは分かっていたのだがちょっと欲望を抑えられなかった。


 本当、チート持ってて良かった。

 これが無ければ、食欲に負けて熱々のお鍋を頬張った結果火傷するとかいう。

 また結構な間抜けを獣っ娘の前でやらかす所だったし。

 感謝しかない。


 しかし、出されてからの待ち時間が無いってのは良いな。

 お鍋に火が通るのを待ってる間って、それはそれでいいものだけど空きっ腹には苦行だからね。


 まぁ、その結果火傷しかけた訳だけど。

 そこは自己責任と言うか。

 冷ましもせずに頬張ればどんな作り方してもこうなる気はする。


 もう一口。


 入ってる野菜とお肉はどちらも新鮮で。

 変な臭みなんかはなく。

 事前の火入れも、煮過ぎて形が崩れていたりとか食感が悪くなっちゃってるって事もない。

 これ、実は相当な手間がかかっているのでは?


 スープも透明だしね。

 沸騰させず。

 丁寧に作られたであろうことが見て取れる。


 ……お鍋の味付け自体は少し薄めだろうか?

 ただ、出汁がよく効いていて塩分控えめながら味気ない印象はない。


 この鶏肉っぽいのから取れた出汁がベースだと思う。

 が、味が抜けていたりもせず。

 鍋の具として入ってるお肉はちゃんとジューシーだし、パサつき少なめでしっかり肉汁を閉じ込められている。

 おそらく、先に骨やアラから煮出してスープを取ったのかな。

 野菜にもよく染みていて相乗効果を感じる。


 シンプルながら、旨みの強いお鍋だ。


「はふはふ」


 ふと、顔を上げると。

 猫舌なのだろう。

 獣っ娘が熱々のお鍋相手に苦戦している様子。


 俺と違って、ちゃんとふーふーと冷ましてはいる様だが。

 それ以上に熱に弱いらしい。


「大丈夫か?」

「は、ひゃい。だいじょうぶです」


 なんか、あんまり大丈夫そうではないな。


 おかしい……

 さっきまでお仕事モードで出来る子な獣っ娘がいたはずなのだけど。

 まるで別人である。


「そうだ、そんなに熱いの苦手なら良い方法教えてあげよっか」

「良い方法ですか?」


 どうやら、ようやく飲み込めたらしい。


 猫舌なのだから、自分の分は炭火用意しなきゃ良いのにと思わんでもないが。

 そういう事では無いのだろう。

 熱いのは苦手だけど、冷めちゃうのもそれはそれで困ると。


 わがままな奴め。

 でも、その気持ちも分からなくはない。


 なのでちょっとした小技を伝授してやろう。

 スプーンで鍋からスープをすくう。

 そして、横から。

 すくったスープに渦が二つ出来るように息を吹きかける。


「……ご主人様、何をしてるんですか?」

「見て。渦が二つ出来てるだろ?」

「はぁ」

「こうすると早く冷める」


 分かりやすく実践して見せたのだが。

 初めに怪訝な顔を向けられ、説明をしてもそこに疑わしげな目が加わるだけだった。


 さっき、1人で慌ててたのを見られたせいだろうか。

 それ以外にもこれまでの積み重ねも合わせて。

 どうにも獣っ娘から俺への信頼が、少しずつ削られていってる気がする。


「騙されたと思って試してみて」

「……はい」


 一応、やってくれる程度には信頼が残ってるらしい。


 ふーふー……

 口を尖らせて俺の真似をする。

 可愛いな、本当に。


 そして、恐る恐る口を付ける。

 初めは多少ビビりながらといった感じだったけど。

 安全を確認し。

 ちゃんと効果がある事に驚いていた。


「ご主人様、凄いです!」

「だろ?」


 これまで結構悩んでたのか、大袈裟に見えるぐらい喜ぶ獣っ娘。


 鍋があるってことは。

 ちょくちょく鍋料理も出るって事だもんな。

 そうでなくとも汁物とかあるし。


「もう一つ、とっておきを教えてやろう」

「本当ですか!?」


 すっかり、信頼も取り戻せた様子。

 これで取り戻す信頼ってどうなんだと思わなくもないが。

 まぁ、無いよりはいいだろ。


 お鍋を小皿に取り分け。

 首を軽く振りながら強めに息を吹きかける。


「……本当ですか?」


 同じセリフながら、乗ってる感情がまるで違う。


 どうやら見た目がバカっぽかったらしい。

 そこに関しては俺も同意である。

 でも、ちゃんと効果があるのはマジだ。


 一応試してくれた。

 ただ、ちょっと恥ずかしそうなご様子。


 宿のスタッフやってるからね。

 働き始めて数ヶ月、マナーなんかもそれなりに教わってきたのか。

 奴隷だったし良いとこの生まれってことも無いと思うが。

 流石に、かなりの抵抗感を覚えると。


「え、本当に効果あった……」


 半信半疑といった様子で口を付け、想像以上に冷ませていたのだろう。

 さっき以上に驚く獣っ娘。


 ……確か、波うたせる事で表面積を増やすんだったっけ?

 後スープの中で複数の水流が起こり。

 それが対流を後押し。

 結果早く冷めるとかそんな感じだった気がする。


 理屈はうろ覚えだけど。

 まぁ、効果があるんだからそれで良いでしょ。


 ただ後者の方法、行儀悪いから外ではやっちゃダメだからね。


「言われなくても。やりません!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ