親子 15
良さげな倒木に腰掛け。
獲物を追って、森の中を走り回っている獣っ娘を眺める。
いやぁ、元気よな。
一応、魔眼での警戒は続けつつも。
近くに大きな魔力を持つような存在はいなそうだし。
ある程度リラックスして、その様子を見守る。
ネズミっぽいのやら、トカゲっぽいのやら。
そういう小さめな生き物を捕まえては俺に自慢げに見せてきて。
頭を撫で、褒めてやると。
獲物をポイっと捨ててまた狩に向かう。
どうやら捕らえた小動物達には興味が無いらしい。
用済みと言わんばかり。
まぁ、美味いかどうかも知らんしな。
食いたいって言われても困るからこっちの方が都合はいいか。
このサイズじゃあんまり食べる所もなさそうだし。
所謂、キャッチアンドリリースってやつよ。
とか言いつつ、実態としては単にいたぶってるだけなのだが。
別にこの世界に動物愛護法なんてないしな。
被害者の小動物達より、獣っ娘のストレス発散の方が余程重要である。
……ほら、獣っ娘って奴隷ではありつつ。
俺も女将さんも普段の行動に制限なんてかけていないから、街の中ならある程度自由に動ける。
でも、こういう森は魔物なんかもいるからね。
1人で入るには危険で。
だから、これまでも行こうと思えば行けたけどやらなかったのだろう。
そうやって欲求を抑えられてたのは偉いとは思うけど。
ある日爆発しても困るし、そもそもあまり溜めすぎるのも良くはない。
仕事始めて、言わば新社会人になった訳だ。
獣人としての本能もある。
精神の健全の為にも、適度にストレスは発散しないとね。
これから温泉街来る時、獣っ娘の事を毎回森まで連れ出してあげた方がいいかもな……
「楽しんでるとこ悪いが、そろそろ時間だぞー」
「?」
「今、休憩中だろ?」
「……あ。そう言えばそうでした」
声をかけると、獣っ娘が不思議そうに首を傾げる。
そして、今思い出したと言わんばかり。
忘れていたらしい。
まぁ、それだけ狩に熱中していたってことだ。
楽しいのならよかった。
獲物追って、ずっと走り回っていたしな。
見ていて楽しそうなのは伝わってきた。
ちょっと心惹かれてたり?
いや、俺みたいなおっさんにそんな元気はないのだが。
チートあるから、身体能力的には行けるはずなんだけどね。
どうにも精神的についていけないのだ。
「んじゃ、戻るか」
「はい……」
見るからに気落ちしている獣っ娘。
もうしばらく、森の中で思う存分狩を楽しみたかったらしい。
思いっきり後ろ髪を引かれているご様子。
別に個人的な予定がとかだったら、いくらでもずらしてあげたんだけどね。
流石に仕事をすっぽかすわけにも行かないだろう。
「はぁ、また今度連れて来てやるから」
「……本当ですか?」
「こんな事で嘘つく訳ないだろ」
「やった! ご主人様、ありがとうございます!!」
俺の一言に一瞬で調子を取り戻した。
現金な奴め。
「あれ……?」
調子を取り戻したついでに。
いつものように、俺に突撃でも仕掛けようとしたのだろう。
ただ、毎回不意打ちを受ける俺ではない。
今回は事前に勘づき。
しっかり受け止めてやろうと、身構えたのだけど。
俺にぶつかる前に獣っ娘がふらつく。
「おっと、」
事前に身構えていたおかげもあってか。
下手に転んだりする前に、獣っ娘の事を抱き上げる。
「大丈夫か?」
……ちょっと狩に全力を出しすぎたらしい。
初めてだったからな。
これまで欲求を抑えていたのもあって、ちょっと加減が効かなかったのだろう。
さっきまでは元気いっぱいで、体力有り余っていそうな様子だったが。
流石に無限って訳には行かなかったと。
「おぶってくか?」
「……ご主人様、ごめんなさい」
「いいって」
しゅんとした雰囲気。
自分でも、ちょっと調子に乗りすぎたと反省しているのだろう。
分かっているのなら何も言うことはない。
獣っ娘を背負う。
背中から、彼女の温もりが伝わる。
ずっと走り回っていたせいか。
獣っ娘はもともと体温が高い方だったけど、さらに暖かく感じる。
ちょっとした湯たんぽのようだ。
あれだけ運動したのだから、当然の様に汗だく。
しっとりとしたものを感じるが。
別に、嫌な気はしない。
せいぜい首筋にかかる息が少々こそばゆいかなってぐらいだ。
これが野郎だったら、全力で拒否していたところだけど。
控えめではあるが。
獣っ娘の胸元の膨らみも感じられるしな。
不快どころか、むしろ役得である。
……しかし。
全体力を使い果たしてヘトヘトなご様子だが。
いいのか、これ?
今はあくまで休憩中なのだ。
この後は普通に仕事。
仕事する体力まで使い果たすとか、女将さんにどやされそうな気しかしない。




