親子 12
「お待たせしました。ご主人様!」
窓の外を眺め、ぼんやりと黄昏ていた所に。
獣っ娘が突撃してきた。
「うぐ……」
あれから、まだ一刻も経っていない。
予想より早かったな。
どうやら速攻で任されていた仕事を終わらせてきたご様子。
多分、女将さんが気を利かせてくれたのだろう。
……にしても。
この獣っ娘、加減というものを知らないらしい。
ノックもせず。
横腹にダイレクトアタック決めてくるとは。
完全に不意を突かれてしまった。
前々から感じてはいたが……
この威力。
普通に、俺以外だったら骨でも折れてそうな勢いである。
質量自体は人と大差はないのだけれど。
むしろ、俺の様なおっさんと比べればずっと軽いはずで。
その上でこれ。
確か、この手の計算は重さと速さを掛けるんだったか?
流石獣人。
獣の特性は人の力を容易に凌駕するって事だ。
女将さんとか、スタッフの娘とか。
他の人相手にちゃんと加減出来てるのか少々心配になる。
……いや、まぁ。
そこら辺はしっかりやれてるんだろうな。
仲も良好らしかったし。
2人して獣っ娘相手には甘そうだけど。
流石に、スタッフの娘も自分の事を怪我させてくるような奴とは関わり合いになりたくないはず。
女将さんに関しては。
そもそも、従業員の事怪我させるような行動は許さないだろう。
さっき俺と遊んでるところを見つかって。
ちょいビビりしてたから。
これまでの間に、何度かミスって怒られてた説はあるが……
仮にやらかしてたとしても。
既に、改善された後って事だろうな。
とすれば、俺相手には何故加減してくれないのか。
嫌われてるとは思いたくない。
いわゆる信頼の証ってやつかね?
俺に突撃して、そのまま抱きついてる獣っ娘。
彼女と目を合わせる。
「……」
「?」
が、こてっと首を傾げられてしまった。
何かを聞く訳でもなく、ただ目を合わせただけだったからな。
意味も意図も、全く伝わらなかったらしい。
ただ、何と言えば良いのか。
これを言葉にするのもどこか照れくさいし。
別にいいや。
否定されるのが怖いとかそんな事は考えていない。
しかし、獣っ娘……
仕草も含めて何度見ても可愛らしい。
未だ、頭にハテナを浮かべ首を傾げたままの彼女。
さっきのお返しとばかりに。
揉みくちゃになるまでなでまわしてみた。
迷惑そうな表情。
突然の蛮行に抗議するかの様な視線を感じる。
ただ、抵抗はしない。
されるがまま。
多分、獣っ娘が突撃してくるのも似た様なモノなんだろうな。
ちょっとしたじゃれあいと言うか、動物で言えば甘噛みみたいなことだ。
それを俺だけに。
こちらとしても幸いチートのおかげで多少強くても何の問題もないのだし。
そう考えると優越感すら覚えるから不思議なものだ。




