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ギルドの片隅で飲んだくれてるおっさん冒険者〜蛇足編〜  作者: 哀上
蛇足③

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親子 10

「休憩入ったらまたこの部屋に来ると思うので、その時は思いっきり構ってあげてください」

「もちろん」

「あの娘、随分と寂しくしていたみたいですから……」


 否と言う理由もない。

 迷いなく頷いた。


 そのために、この時期に温泉街まで来た訳だしね。


 ……なのだけど、女将さんからもの言いたげな目を向けられる。

 あれ?

 俺、何か選択肢ミスりました!?


「今まで、ずっと冬の間しか来てくださらなかったのに。あの娘の為なら雪解け後でもなんて。女としては少しヤケてしまいます」


 何を言われるかと一瞬身構えた所。

 完全に、予想外の言葉を投げかけられた。


 そ、それはですね……


「なーんて」

「へ?」

「ロルフ様、そんな顔なされないでください。ただの冗談ですから」


 ……いや、なんだ急に!

 びっくりした。

 心臓に悪い。

 俺は、人の嘘を見抜くのが下手くそなのだ。

 勘弁してくれよまったく。


 無駄にドキッとしてしまったではないか。

 そんな妖艶な雰囲気まで醸し出して。


 ってか、俺以外でも引っかかるだろ。

 女将さんの様な女性にこんなこと言われて、まともでいられる男が存在するとは思えん。

 随分と悪質な冗談もあったものだ。


 種明かしされなかったら。

 そのまま、手を胸の辺りにでも伸ばしていた所である。

 危ない危ない。

 んなことをすれば、さっきせっかく貰えた及第点が赤点になりかねん。


 何がしたくてこんな罠みたいな事をしたのやら。


「あのー、女将さん?」

「今の言葉は冗談ですけど……」

「?」

「私も、嫌ってる相手に体を預けたりはしませんからね」


 今までの妖艶な雰囲気はどこへやら。

 頬を染めて。

 まるで、普通の女の子みたいに恥ずかしげな表情を浮かべる女将さん。


 こんな顔の彼女は初めて見た。

 いつも余裕ありげで、そんな姿しか知らなかったから。


 ここまで言われてわからないほど鈍感ではない。

 体を重ねたのは前回だけ。

 それも、経験の無かった獣っ娘が頼ったからって理由。

 数日泊まっていたのだが。

 その日以降、関係を持ったりはしなかった。


 これだけだ。

 憎からず思われてるとは感じていた。

 しかし、そんなつもりないのかと思っていたのだけど。

 どうも違ったらしい。


 獣っ娘だけじゃなく、女将さんにも寂しい思いをさせてしまっていたと。


「そんなこと言って、まだ日も高いうちから仕事抜けちゃって良いの?」

「魅力的なお誘いですが。それは2人に示しがつきませんね」


 まぁ、だよね。

 流石にそれは怒られそうだ。


「仕事終わった後、お誘いしても?」

「あの娘はいいのですか?」

「そりゃ女将さんには懐いてるし。何なら、逆に喜ぶんじゃないかな」

「ロルフ様ったら、勝手な人」


 その言葉とは裏腹に。

 少し嬉しそうな、笑みを漏らす女将さん。


 獣っ娘も嫌とは言わないだろう。

 既に経験あるし。

 なんなら、あの後もまた誘おうとしてやんわり断られてたりした気がする。


 断ったのは、多分教えるって免罪符がなくなったからかな?

 恥ずかしくなったのだろう。

 今まではそんな人には見えなかったけど。

 人間、誰しもいくつかの顔があるものだ。


「それでは、今宵伺いますね」

「はい!」


 楽しみだ。


 思いがけない幸運である。

 前回、もうそんな機会はないのだと思っていたのだけれど。

 まさかこんなすぐに回ってくるとは……


 唐突な思いつきから今日温泉街に来る事になった訳で。

 昨日の俺グッジョブ!


「あ、それと。お話は変わりますが」

「?」

「馬車でお疲れのところ申し訳ございません。お風呂の方は準備が整うまでもうしばらくお時間をいただきたく」


 分かってますって、清掃中ですよね。

 この前が例外だったのだ。

 大体、これぐらいの時間帯は準備中である。


 俺が昨日から馬車に乗りっぱだって話たからかな。

 気を遣わせてしまったらしい。


 確かに入りたい気持ちはあるけど。

 仕方ない。

 そもそも今の時期。

 客も冬季より入るようになって、仕事も増加してるだろうからね。

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