プロローグ2
額から大量の汗が伝って、ポタポタと地面に落ちる。
走って、走って、兄と妹を殺した女を追っていた。
あの、ストーカー女を、
絶対に、
許さない。
俺の大事な兄妹を殺した、あの女を。
たまたま会社の取引先で見かけただけのくせに、何年も兄貴に付き纏いやがって。
兄貴と婚約者との通話を何度も手を変えて盗み聞していたから、きっと今日も何らかの手段で行動を把握していたんだ。
あの女、兄貴ばかりか、妹まで。
妹は、結婚が決まっていたのに。
やっと、やっと、あの子が掴んだ幸せだったのに。
くそっ
父親と帰宅すると、むせ返る血の匂いの中、兄貴に馬乗りになって刺し続けているあの女がいた。
部屋中が血に染まり、赤で埋め尽くされていて、それに一瞬立ち竦んだのがいけなかった。
あの時に取り押さえていれば良かったのに、兄貴や妹の状態に気が逸れている間に女は家から飛び出していた。
兄と妹は明らかに息をしてなく、すでに何をしても手遅れなのは俺でもわかった。
だから、茫然とする父をその場に残し、警察に通報しながら、女を、追いかけていた。
ぜっったいに、逃がさない。
この手で捕まえてみせる。
あの女は、こっちに逃げたはずだ。
肩で息をしながらも、周囲に目を凝らす。
いた。
公園で手を洗っているその女を見つけた。
息を殺し、はやる気持ちを抑え、慎重に近付いた。
ここで逃すわけにはいかない。
ギリギリまで近付き、地面を蹴れば捕えられるはずだった。
けど、その女は、瞬く間に光る地面に吸い込まれていき、俺の目の前から消えていた。
自分の目を疑った。
何が起きたんだと。
だが、それ以上考える時間はなく、
後を追うように、俺もその光る地面に飛び込んでいた。
その瞬間に、その光が消えたのは、知る由もなく。




