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プロローグ1


 酸素を求めて喘ぐ自分の呼吸音が煩い。


 息を吸い込むたびに胸が痛い。


 カツカツと、ここにいる事を知らせるように響くヒールのある靴はとうに脱ぎ捨てた。


 人目につかないように、狭い路地を走り抜ける。


 どこをどれだけ走ったかは分からない。


 吸い殻が浮いている汚水を裸足で踏みつけて、何で私がこんな目にと忌々しく思った。


 舌打ちの一つも出るというもの。


 遠くの方ではパトカーのサイレンが幾重にも重なって聞こえている。


 追い立てるように何台も行き交うのが見えて、身を隠しながら移動した。


 あれが私を探しているのは確実だ。


 その元凶が、べったりとこの両手に付着している。


 乾きかけの他人のソレが気持ち悪い。


 早く落としたくて、途中で見つけた公園で手を洗った。


 水だけではなかなか落ちない赤に、イライラする


 この血の持ち主、彼を刺した包丁は、どこかに捨てた。


 その彼のことを思い出すと、悔しさが溢れる。


 心から愛していたのに、あの男は私を裏切った。


 私と結婚すると言いながら、他の女を選んだ。


 私は悪くない。


 あれは当然の報いだ。


 でも、逃げなければ、罪に問われるのはこの私だ。


 どこに逃げるべきか、考えがまとまらなくても頭を動かさなければならない。


 誰かに匿ってもらおうかとも思ったけど、スマホもどこかに落としたらしい。


 これでは、連絡先が分からない


 周りを見渡す。


 日が沈む寸前、不気味なほど静かな公園で、風に揺られたブランコが私の不安を煽るようにきぃきぃと音をたてている。


 そして、頭上ではそんな怯えを嘲笑うようにカラスが鳴いていた。


 悠長に考える時間はない。


 指を噛んで焦りを募らせていると、視界の端に不自然な光が映り込んだ。


 そちらを注視すると、公園の地面が何かの模様の形に円形に光っている。


 その地面を思わず二度見した。


 まさかなとは思った。


 そんな夢みたいなこと……


 でも、


 ダメ元でそこに足を踏み出した。


 私に選択肢は多くないから。


 ここにいても、いつか殺人で捕まるだけだから。


 そして私は、その光に吸い込まれていった。



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