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結界を

「アンデッド対策が、分かりました!お願いします、騎士の皆さんの力をを貸してください!」


 時間の要する術式なので、はやる気持ちを抑えきれずにその勢いのまま、ジェシカさんと共に騎士団の詰所に駆け込んでいました。


 私の前のめりの勢いにちょっとだけ引かれてしまいましたが、手伝いは心良く応じてもらえました。


 教えてもらったことを整理しながら、ジェシカさんや騎士の皆さんの力を借りて、早速、結界作りを開始します。


 スコップを両手に持って、土を掘り起こしていって、単純で地道な作業が求められるものでした。


「セレーナ様自らする必要はとも思うのですが……」


 ジェシカさんに、心配そうに言われました。


 すでに土まみれの姿に不安を抱かせてしまったかもしれません。


 自分で掘った穴に落ちたり躓いて転んだりと、薄々は気付いてはいましたが、実はかなり不器用な事が露見してしまいました。


「結界は、私が関わらないと、意味がありませんので。手伝ってくださり、ありがとうございます。ジェシカさん。近衛騎士団の皆さん、聖騎士団の皆さん」


 ザックザックと、スコップを動かしながら伝えます。


 あの聖女さんは、私でもできる方法を教えてくれました。


 助力を得れば、できる方法をです。


 何の疑問も抱かずに私の望む通りに手伝ってくれる騎士さん達には、感謝しかありません。


「当然のことをしているまでで、こちらこそ光栄です。岩は、ここに置いておきますので」


 竜の紋章を身につけた、白を基調とした団服姿の近衛騎士の方が、手頃な岩を見つけては運んできてくれています。


 それを青い団服姿の聖騎士の皆さんが、祈りを込めながら丁寧に磨いてくれます。


 聖騎士さんの紋章は王冠で、それは精霊王を讃えたものです。


 仕上げに、私が一つ一つに紋様を刻みます。


 全て大切な楔岩になるので、失敗しないように気を付けました。


 自分の指を傷付けないようにと、それも気を付けました。


 たくさんの種類がある細かな紋様を忘れることなく、ずっと頭の中に記憶し続けていられるのは、あの聖女さんのおかげではないかと思います。


 だから作業に集中できて、何も考えずに無心で土を掘り起こし、紋様を刻み、抱えるほどの石を並べて、簡易の祭壇を作り終え、そこで祈りを捧げ続けること、3日。


 国全体が、見えない結界に覆われていくのが分かりました。


 国を結界が覆ってしまえば、私が死ぬか、この祭壇が壊されない限りは存在し続けてくれます。


 これで、アンデッドの大群と弱い力しかない魔族は退けられます。


 これだけでも、戦闘能力の高い竜族なら随分と戦い方が有利な方に変えられるのではないでしょうか。


「皆さんのおかげで、無事に結界が張れました。ありがとうございます」


「お礼なんて、とんでもないです。我が国民の為に、ありがとうございます」


「聖女様の力になれて、光栄です」


 騎士の皆さんから、口々に言っていただき、本当に上手くいって良かったです。


 心の中では、教えてくれた聖女さんにも報告をしていました。


 片付けを終え、ほんの少しの安堵と共に部屋に戻っていましたが、その途中でラドルファスさんとすれ違い、軽い挨拶を交わしただけで、彼はジェシカさんとは目も合わせません。


 ジェシカさんもそうです。


 寂しい思いでそんな二人を見つめ、少し前の事を思い出していました。


 以前にこの国を訪れていた時の事です。


 用事を終えて大聖堂から城へ戻る途中に、私服姿のラドルファスさんと、ジェシカさんが一緒にいるのを見かけました。


 その日はお二人ともお休みをとってもらった日で、どうやらお出かけをしていたようです。


 ジェシカさんは、いつも私の事を最優先にするので、特定の誰かとお付き合いするということが今まではありませんでした。


 でも、それには理由があったのだと、その時に確信を得て嬉しく思っていました。


 今はこっちに来たばかりで、母国があんな事になったばかりではあります。


 心から何かを楽しんだりする事は難しいものです。


 ジェシカさんがラドルファスさんの番なのかは分かりませんが、でも、こんな時だからこそ、好きな人と結ばれて欲しいと願います。


 私がいくら家族のように思っていたのだとしても、ジェシカさんには今まで家族がいた時がなかったので、もしラドルファスさんが家族になってくれるのなら、私にとっても嬉しいことです。


 後でジェシカさんと話し合ってみたいと思いました。





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