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7話 捕獲

 あの後も黒爪の捜査をしていた俺達はそれらしき場所まで辿り着いた。

 スラムの端の端だ。


「これは………」

「どうやら当たりのようだな」


 地震で建物が崩れたのだろう。

 瓦礫だらけの中にそれはあった。

 大量の黒い爪の破片。


 それがそこかしこにあった。

 壁にはひっかいたような傷。

 それにメッセージ性はなくただの傷だ。

 だが同時に何となく理性のようなものを感じるのは気のせいだろうか。


 壁から目を離して爪を1枚拾う。

 先程拾ったものと同じだ。

 ただし風化しているのか少し潰そうとするとパラパラと砕け散った。


「古いものかもしれないな」

「いや、こちらはまだ新しい」


 そう言ってフィオナは別のものを拾った。

 そちらは確かにまだ色鮮やかだ。


「直近でもここに来たのかもしれないな」

「待ってみるか?」

 

 俺に聞いてくるフィオナ。

 さてどうするか。


「あんたはどっちがいいと思う?」

「私は………どちらでも構わない」

「なら待ってみよう。会えたのならそれこそいいことだしな」



 深夜まで待った。

 家や金のない者が本格的に活動し始める時間だ。


「グルル………」


 野犬が近付いてきた。

 物が足りないのは人間に限った話ではない。俺達を食い殺しに来たというところだろう。

 そのまま噛み付いてくるが。


「下らん」


 ザシュッ!

 俺は首にナイフを突き立て野犬を殺す。


「………」


 その様を黙って見ているフィオナ。


「何か言いたいことでもあるのか?」

「相当慣れているんだなと思って………その………」

「あんただってそうだろ?モンスターを倒すうちに命を奪うことに抵抗はなくなった。それは動物とて同じだ」


 そもそも俺が殺してきたのは人間だ。

 当然感情も出すし声も出す。

 だが俺は何の迷いもなく葬ってきた。


 そうしなくては生きていけないからだ。

 この監獄は全てが最悪だ。

 生きていくためには常に勝ち続けなければならない。


 そもそもの話こんな場所で善意を振り撒くというのは底なしのアホだ。

 監獄の住民たちにとってのいい餌にしかならない。


「フィオナ」

「何だ?」


 怪訝な目で俺を見る彼女。

 一つ取引をしたい。


「話がある。聞いてくれるか?」

「物によるがとりあえず話してくれ」

「黒爪は確実に捕獲する」

「本当か?先程は厳しいと」


 確かに俺はそう言った。

 実際加減を誤って殺す可能性もあるしそちらの方が楽だ。


「取引だ。黒爪を捕獲出来れば関所を開放してくれ。あの封鎖されているあの関所を通してくれ。あんたならできるだろ?俺は3区に行きたい。そこで暮らしたい」


 本当はこの島について知りたいからもっと上の階層。

 1区に行きたいところだがとりあえずは3区だ。


「上に話す事は出来るが………」

「それでいい。無理に約束はしなくていい。あんたにだって事情があることは分かってる」


 だから、だ。


「相談してくれるだけでいい。とりあえず話は通してくれ。その条件を飲めるなら俺は黒爪を捕獲すると約束する」

「分かった。だが、関所を開放できるかは分からない。それは分かってくれるな?」


 頷く。

 それだけでいいと言った。


「流石にあんたと協力して黒爪を捕獲すれば通してくれるだろう?でなければあの関所は本当に閉鎖されていて監獄が見捨てられていることを自分たちで証明してしまうだろう」

「痛いところを突いてくるな。分かった私もディランが通れるように掛け合ってみよう」


 助かる。

 そうして会話していた時だった。


「グルルル………」


 獣のような声を鳴らしながら何かやってきた。


「黒爪!」


 キン!

 甲高い音が鳴り響く。

 その一閃が見えた時フィオナは反応出来ていなかったから突き飛ばしてナイフで攻撃を受けた。


「こ、これが黒爪………」


 フィオナは足を震わせるだけ。


「グルゥ!」


 余った方の腕を振る黒爪との距離を更に縮める。


「!」


 ナイフを胸に突き立てる。


「グゥ………」


 それだけで膝を折り地に倒れる黒爪。

 その前にナイフを抜きとる。


「い、今何を?」


 驚くフィオナ。


「まさか正々堂々戦うとでも思ったか?即効性の強力な麻痺薬をナイフに塗布しているんだよ。化け物だ。死ぬことは無いだろう」


 捕獲となるならばこのように身動きを封じればいい。

 手段としてはそのような選択もできる。


「約束、ちゃんと果たしてくれよ?」


 ニヤッと笑ってフィオナにそう告げた。




 夜のうちに黒爪の体をブラッディキティの倉庫に運んだ。

 勿論魔法によって作られた魔道具を使って強力に縛ってある。

 これで抜けられることは無いだろう。


「相変わらずお仕事が早いことで」


 ジードとフィオナそれから俺の3人でジードの部屋に集まっていた。


「それで衛兵殿、ディランに聞いたぜ関所開放の件。どうしてくれるわけ?まさかあんな化物捕獲させて『悪いが無理だ、これからもあの関所は封鎖させてもらう!監獄の住民が3区に上がるなんて冗談じゃないわ!ということでよろしくな!!』なんて言うつもりないよな?」


 ジードのセリフはいつも見事な煽りだな。

 キレッキレである。


「勿論………必死に掛け合うつもりだ」

「そりゃありがてぇことで。感動だなぁ。初めての関所通過が我が大親友ディランで良かったぜぇ」

「ま、待て!まだ許可が下りるとは」

「あのさ隊長さん。許可は下りるのを待つんじゃない。下ろさせるんだよ。黒爪をぶち込んでいる倉庫の現在の所有者は我々にある。その意味が分かるな?間違えて火を放たれることもあるかもだぜ?その場合あれも燃えちまうかもな?」


 つまりそれをネタに下ろさせろと言っているらしい。

 ジードらしいと言えばジードらしい。

 頼りになる男だか敵には回したくないな。


「………あなた最初からそれを狙って………」

「さぁ、どうだろうな。関所が股を開ける、これ以上に監獄住民をワクワクさせるものなんてないからなぁ?それと1部で流れている噂だがよ」


 真面目な顔を作るジード。


「あのキツキツの関所が中々開かないんで罪人達、つまり監獄民が無理やりこじ開けるっていう計画も耳にしたぜ」

「脅すつもりか?」

「いや、忠告だよ。こんな偉業を成し遂げた我が大親友ディランでさえ通過が叶わないことが分かればどうなるか分かるよな?今度こそ暴動が起きても不思議じゃねぇよ?」


 苦い顔を作るフィオナ。

 そろそろか。

 フィオナの肩に手を回して抱き寄せた。


「でぃ?ディラン?」

「そんなこと起こらないから安心しろ。そんな暴行を止めるのがお前の仕事だろ?ジード」

「ご尤もで」


 喉を慣らしてくっくっくと笑うジード。


「ま、話は終わりだ。隊長さんを送ってやれ」


 フィオナを詰所まで送ってきた。


「その、今日は礼を言う。あの時ディランが助けてくれなければどうなったことか。思えば………私を助けてくれたのだなディランは」

「そりゃ協力者だからな。それにあんたが俺に敵対意識を持ってないことは分かる。邪険には扱わないさ」

「すまない。恩に着るよディラン」

「それよりこれからの予定を教えてくれないか?」


 黒爪の引渡しなどの話が気になるが。


「これから報告書を書いて日が登れば上官に渡すつもりだ。そして昼頃にはこちらまで来て黒爪の引渡し交渉が始まると思う。その時に私から例の件についてはそれとなく話を切り出す」

「そりゃ、どうも。よろしく頼むぜ」

「あぁ。きっと納得のいく答えを返せるように努力する」


 最後に別れの言葉を言い合ってフィオナと別れた。

 楽しみだな。


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