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3話 エルフの護衛

 酒場に入ってきたジードと話をする。


「来る前にお前の家の前通ってきたが男が死んでたな。あれはお前か?」

「そんな訳ないだろ。何もしてこないやつを殺すほどの人殺しじゃないぞ」

「でも人殺しだと認めているんだな」

「仕方ないだろ」


 俺は人殺しだ。

 それをメインで生計を立てていた時期も確かにあるし今も大事な食い扶持の1つであるのも確かだ。

 でも仕方ないで終わる話じゃない。厳しい声はあるものだ。


「おうおう、兄ちゃんまた殺したのか?」

「全く人の心がないよなー人殺しなんて」


 とは言えここにいるのは俺の知り合いだけだ。軽口の一種だ。

 部外者は俺が殺しをしていることを知らない。だから気にはしていないが同時にこうも思う。

 俺に人の心は確かにないのかもしれない。

 全てを削ぎ落とした時に心までも落としたのかもしれない。


「言い訳をさせてもらえるのなら監獄の環境はそれほど甘くなかったというところだな」


 監獄が出来てからの俺は兎に角食い扶持を探した。

 なんだって良かった。

 食えるなら金を稼げるのならなんでも良かった。


 そんな時に見つけたのが人殺し。

 身寄りのない俺の面倒を見てくれたのはジードの爺さん。

 ジードの爺さんは俺のその腕を見込んで俺に仕事をくれた。

 勿論━━━━人を殺す仕事だ。


 モンスターを狩るよりも人を殺す方が報酬は多かった。

 何でって真に敵なのはモンスターではなく人であることが多かった。

 ジードの爺さんは監獄が出来てから無法地帯となった監獄にルールを与えた言わば監獄の王。

 その邪魔になるやつを全員消したのが俺という存在だった。


「あの人たちディランさんの気も知らないで………」

「言わせておけ。あいつらを黙らせても結局他のやつが口にするだけだ」

「そりゃ、そうだよな。1度汚した手が綺麗になることなんざねぇよな」


 ジードもそう口にしている。

 それにもう慣れた。

 どんな口汚い言葉で罵られようが全部俺の過去なんだから。

 俺が選んだ道だ。


 それにこんな場所ではきれいごとなんて何の意味もなさない。

 心がどうのかんのなどというのは私はバカですと自己紹介しているの過ぎない。

 だから気にしない。


「それよりよディラン」

「ん?」

「今夜店に来てくれるか?」

「別に行ってもいいが」

「いつもの場所で待っている。今日はこの辺りで俺は帰るぞ」


 そう言って出ていくジード。

 俺達も一旦帰ることにした。




「他の女と遊ばないでくださいね?私がいますから帰ってから私と遊んでください」

「分かった分かった。遊ばないから安心しろ」


 俺が家を出ようとしても袖を離そうとしないティナ。


「………金は置いていく」


 そう言ってティナに財布を押し付けた。


「遊べる金なんてもってない。なら行ってくる」

「はい」


 それでも不安そうに見てくるがいくら俺とジードの仲と言っても金なしで店では遊ばせない。

 さて、行くか。

 暫く歩いたらピンク色の館が見えてきた。


 ジードの家でもある【ブラッディキティ】の本拠地だ。

 ちなみにこの館は対価を払えば女と遊べる場所だ。

 俺は遊んだことは無いが。


「ディランさんこんばんは」

「あぁ。ジードはいるか?」


 黙って上を指さすカウンターにいる男。

 上にいるという意味だ。いつも通りだな。

 礼を言うとロビーの奥に設置された階段に向かう。

 階段を上り終え突き当たりにある扉をノックした。


「開いてるぞ入れ」


  扉を開けて中に入る。


「臭いな」


 煙が凄いし臭いもすごい。

 また葉巻をやっているらしい。


「そうかいそうかい。悪かったな!消せばいいんだろ?!」


 何故か逆ギレするジード。


「と、まぁそんな訳だ。適当に座ってくれー」


 適当な調子で自分の座る対面のソファを指さすジード。

 遠慮なくその身をソファに沈ませた。

 ふかふかのこの辺りで手に入るものでは最高級のものだ。


「お前を呼んだ意味分かるよな?」

「俺じゃなきゃ出来ない仕事ってことだろ?」

「そうそう。クズ騎士でなくてはできない事だ」


 そのあだ名を聞いて苦笑いする。


「で、内容は?」

「荷物の護衛をして欲しくてね。今衛兵が巡回していてな。お前が付いて怪しまれないように切れ抜けてくれ。今回は高い金を使った。その代わり1区から来た上玉だがな」

「1区からだと?」


 思わず声を上げてしまった。

 1区の女を買い上げたと今こいつは言ったのだ。


「驚いたろ?俺も驚いたさ。まさか1区のエルフを仕入れられるとは思わなかったからな」

「エルフかよ。すげぇな」


 今では希少種に数えられるエルフ。

 その女、しかも1区に住んでいる上品なエルフを買い取れた、となると大事だ。

 事件と言ってもいいかもしれない。


「俺がたらふく調教した後はお前にも遊ばせてやるよディラン」

「遊べば殺されるから辞めておく」


 間違いなくティナが殺しにくる。


「ティナちゃんにビビりすぎだろお前」

「この前は騎士の恥である背中に傷をつけられたばかりだ」


 包丁を持って追い回された時はマジで死ぬかと思ったが何とか許してくれた。


「ヤンデレにも程があるだろそれは」


 ジードも少し引いているらしい。

 正直俺も引くレベルの所業だったなあれは。


「で、引き受けてくれるか?俺の頼んだ仕事の件だが」

「別に構わないが」

「助かる。お前でなくては死体が1つ増えて金が失われるところだったでしょう。それに行き先を失ったエルフは路頭に迷うし何もいいことは無いだろう。頼んだぜ相棒」


 俺の肩に手を置くジード。

 やはり俺のことを信用してくれているらしいな。

 それもそうか。俺もジードを信用しているし長い付き合いだ。


「日時ルートは?」


 そう聞くと用意していた地図を机に広げるジード。

 そのまま指を地図に置いて説明し始める。


「今晩深夜3時。場所はここだ。裏道分かるな?ここに馬車が待機しているはずだ。近くに御者がいるはずだからそいつに話しかけて鍵をもらえ。制限時間は夜が明けるまでだが十分間に合うはずだ」

「ふむ。分かった」


 地図を見ても確かに十分間に合いそうだ。

 楽勝かな今回の仕事は。

 そう思ったとき。


「だが気をつけろディラン」

「ん?」

「噂だが最近黒爪という化け物がでると聞く」


 黒い爪を持った化け物が出るという話か俺も聞いたことがある。

 戦闘力も化け物でかなり強いと聞くが。


「噂は噂だろ?」

「だが死体が上がってるのも事実だ。お前の家の前にだってあったろ?」

「偶然だろ」


 馬鹿馬鹿しい。

 化け物だなんて話信じられるかよ。


「一応気をつけてくれ」


 こいつがそこまで言うくらいなら頭の片隅にでも置いておこうか。


「分かったよ」


 なら、仮眠でも取っておこうか。


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