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2話 モンスターの討伐

「ガーガー」


 カラスの鳴き声で目が覚めた。

 またか。

 扉を開けると広場に男の死体が転がっていた。

 それにカラスが寄り付いて死体を啄んでいる。


 珍しいことじゃない。

 この監獄という場所は最悪に最悪を塗り重ねたような場所。

 死体が増えることなんてよくあることだ。

 

「はぁ〜」


 欠伸をして扉を閉めるとすぐ横にある井戸で水を汲み上げると顔にぶっかける。

 冷たいがいい目覚ましになる。

 そうして家に戻るとユミナに声をかける。


「ふぇぇぇ?!!!!」

「悪い」


 扉を開けると絶賛着替え中のユミナが見えたから急いで扉を閉めた。

 しばらく経ってから扉を開けると中に戻る。

 そこには私服姿のユミナの姿があった。

 ちょっと寝癖がついているがそこも可愛いところか。


「寝癖着いてるぞ」

「ディラン様が付けたのでは?」

「そんなことできるかよ」


 答えて笑う。

 どんな超人だと思っているのだろうか。

 無理だ無理。


「俺はあのバカの所に行くがどうする?」

「ティナ様のところへですか?」

「そうだな。あいつ俺がいかないと殺しにくるからな」


 この前は割と本気で半殺しにされたのを覚えている。

 あの姫様の機嫌は取っておかないと不味い。


「分かりました。私が行けば多分殺されちゃいますのでお掃除しながら待っておくことにしますね」



 ここは酒場の玄関なのに俺が行くと既に金髪の美少女が立っていた。


「遅いんですけど?!」

「すまん。すまん。すまん」


 大事なことなので何回も謝っておく。これで殺害ルートを回避できるなら安いものだ。


「許します」


 毎度のことだが単純なバカで助かる。


「結婚してください!」

「………」


 急に求婚してきたティナを冷やかな目で見る。


「どうして私はこんなにも愛しているのに答えてくれないのですか?」

「逆に聞くがお前は俺に何度求婚すれば気が済む?」


 俺は既にこの女ティナと婚姻関係にある。

 それでも飽き足らずこいつは毎日求婚してくる。

 別に嫌いではないがこう何度もされるとまたか、という感は拭えない。


「ぶぇぇぇ………そんなこと言わないでくださいよー」


 いつも通り泣きながら俺に抱きついてくるティナ。

 その時


「朝から見せつけてくれるな?兄ちゃ………」


 ドゴッ!

 後ろから近付いてきた男に裏拳を打ち込み黙らせる。

 いちいち絡んでこないで欲しい。


「あ、あのー死んでないですか?」


 一応後ろを見たがピクピク動いているので死んではいないだろう。


「それより花嫁修業とやらはどうだった?」


 こいつは普段俺の家で暮らしているが数日前花嫁修行です!とか言って飛び出してここに来た。


「それが………」


 指を見せてくるティナ。


「見事にズタボロだな。兎に角指を切り落とさなくて良かった」

「私のことを………心配してくれてるのですか?大好きです!ディランさん!」


 キスしようとしてくるティナの額を抑えてやめさせる。


「おい、やめろ!道端だぞ?」

「なら帰ってからしますー」

「………それならいい」


 3歩歩いたら忘れる鳥頭だ。覚えていることは無いだろう。


「今日もイチャイチャしてるわね」


 その時この酒場の店主が出てきた。

 

「そんなことしてる暇あるならディランも男の子なんだからモンスターの1匹でも狩って来て欲しいんだけど」

「何がご所望だよ。監獄のモンスターなんか大したものがいないが。にしても神様も人間だけ浮かび上がらせてくれたら良かったのにな」


 神様もいい加減なものだ。

 モンスターなぞ落として俺達人間だけを生かしてくれたら良かったのに。


「そんな事言わないでほら行った行ったー。依頼書上げるから」


 はい、どうぞと渡してきたのはゴブリン五匹の討伐を依頼する紙。


「ツケチャラにするから行ってきてくれない?」

「分かったよ」




 歩いて草原まで移動してきた。


「ギィィ!!!!」


 農作物を食べてしまうからということで依頼された。

 依頼書にあった目的地その近くまでやってきたら自分たちから出てきてくれた。

 丁度5匹だ。

 俺一人くらい何とかなると思ってかかってきたのだろうが。


「下らん」


 呟き魔法を使った。


「ぎ………」


 一瞬にして凍るゴブリン達。

 そしてそれを砕く。

 血と共に肉片が周囲に飛び散った。


「相変わらず凄いですねこの魔法」


 後ろでティナが珍しく真面目な顔で呟いている。


「心臓だけ残して後は砕くなんて芸当宮廷魔法使いでも無理じゃないですか?」

「そこまでいけば流石に出来るだろうよ」


 答えて心臓だけを集める。

 中々良さそうなびくつき方をしている。

 まぁ売るわけではないしどうだっていいのだが。


「でも、死体は残した方が良かったのではないですか?お肉は売れますし素材だって売れます」

「………あ」

「そういう抜けてるところも愛してますー!」


 飛びついてくるティナ。

 それにしても毎日姫様の愛は重いな。

 そう思っていた時だった。


「フコー!フコー!」

「ひっ!」


 何かの声にビビって俺の後ろに隠れるティナ。

 音の聞こえる方を見るとボアがいた。


「凍れ」


 凍らせて砕く。

 それだけで死ぬボア。


「………ちょっと!あのボアはキングボアで討伐難易度Sランクなんですよ!」

「そうなのか?」


 それにしてもこんなところにSランクモンスターがいるなんて珍しいな。


「そうなのかじゃなくて………凄すぎですよ」

「別に普通だろ?それよりそろそろ帰ろうぜ」


 何やらモヤモヤしてそうなティナを連れて帰ることにした。



「ほら」

「相変わらず早いわねー。はいチャラにしといたわよツケ」

「サンキューな」


 そう言って店を出ようとしたところ。

 カランカランと音を鳴らして入口の扉が開いた。


「まぁ、待てよ兄弟」

「あーらジードいらっしゃい」

「ちっ………」


 面倒くさいのが来たな。

 今日はこいつに付き合わされるのだろうと思うと少し泣けてくるのだった。

 こいつが俺の近くに来ると大抵面倒ごとを押し付けられる。


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