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5歳の祝福2

3話目です

 青白い光が辺り一面を覆いつくし、やがて白いだけの世界になった。

 上下左右の感覚がない。むしろ身体の感覚がない。それなのに不安は少しもなかった。目の前に誰か、いや何かがいるのが解る。大きなエネルギーのようなものだ。それは私に向かって話しかけた。


「久しぶりですね、セイ。今日から勇者として覚醒することになります」


 その瞬間、以前ここに来たことがあると解った。生まれる前に来たのだ。目の前の存在を今は女神さまみたいに思う。前回は観音様とか菩薩様みたいな感覚だったかな?あれ?観音様って何だっけ?

 それはまあいい。大事なことを言わなければならない。


「勇者は嫌ですよ。私は穏やかに生きたいって望んだ気がします」


「いや、その、ですからね。勇者は決定なのです。あなたの(たましい)をこの世界に送り届ける前提としてですね・・・」


「確か、望みを一つ叶えるって約束しませんでしたか?」


「うろ覚えのふりして図々しいですよ?普通の(たましい)は私の前に出たらひれ伏すものです。文句どころか口もきけないですからね。あなたの魂が強いからそんな真似ができるのですよ?そんな強い魂を受け入れられる身体(からだ)は勇者か魔王くらいしかありません。魔王の方は500年くらい前から活動していますから残っているのは勇者だけです!」


「それじゃあ、私の身体は残り物なのか?」


「勇者の身体を残り物とか言わないでください!とっておきです!」


「えっと、私の望みは穏やかな人生だったような?勇者の人生とは真逆な気がします」


「むしろ勇者でなければ穏やかな人生など手に入れられませんてば。どんなに気を付けて慎重に生きていても、突発的な事故とか災害とかあるでしょう?そういうことを回避したり乗り越えたりする能力は勇者が一番優れているのです。魔王ですらねじ伏せることが可能な能力を持っているのですよ。もっとも先代の勇者はあと少しの所で魔王にねじ伏せられましたけど。だから今回の勇者に頑張ってもらわないと世界のバランスが崩れます。つまり勇者しか選択できません。私に文句を垂れるくらい強い(たましい)であるあなたは勇者になるより他にないんです!」


 女神さまっぽい神々しいエネルギーは言い負かされないようにムキになっている感じがする。私は受け入れるしか選択肢がないと理解しているのだけどな。それにしても今、不穏な発言を聞いた気がする。


「前の勇者は魔王にねじ伏せられたのですか?」


「ええ、まあ。もう少しじっくり修行してから魔王に挑めばよかったのかな?でも彼、40歳半ばに差し掛かって身体能力はピークから下り坂まっしぐらでしたし、技は若いころより磨きがかかっていたけど、あれ以上の成果は無理だったよね?」


 先代勇者は頑張り屋さん?40歳過ぎてから魔王に挑んだってことは人生のほとんどを修行だけで終わらせたんじゃないかな?子孫とか残す時間はあったのかな?


「あの・・・私、修行オンリーの勇者人生なんて嫌なんですけど?」


「わかっています。確かに先代はアレでしたね。なんだかアレはなんというか」


「先代勇者に哀悼の意を表明いたします」


「それ、5歳児の発言じゃありません!いや、今は魂だからそれなりの言葉が使えましたね。いえね、先代勇者はそういう人生を願ったというか謳歌したというか。とにかくまじめに修行するのは大好きでした。『人生これ修行也』とか先代勇者の石碑に刻まれていますもの。漢の中の漢とも呼ばれていますし。パーティーメンバー全員男性でしたし。だからって男尊女卑とかそういうわけではなかったのですけど。なんというか暑苦しい感じでしたね。ですからね、今回はもっと華のある勇者になってほしいです」


「先代勇者のことはともかく、お願いした件のことですが」


「あなたが先代勇者の話題に食いついたのですよ?お願いのことは生まれてからの五年間で充分に実感できているでしょう?穏やかな環境で育ちましたよね?他の幼児はあなた程すくすくと育ちませんよ。私は充分約束を果たしていますので、あなたも祝福を受け入れてください。それではここでの記憶を封印します。良い人生を送ってください」


女神さまのような神々しいエネルギーは一呼吸置いてから祝福を告げた。


『勇者であるセイは、やがてこの世界を救うことでしょう』



 

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