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プロローグ

4話まで一気に投稿します。その後はできるだけ頑張ります。

よろしくお願いします


2019/10/09 本文を差し替えました

『老衰が希望だったけど病死するのだな。方法は選べないのだから仕方ない。病気は思った以上に苦しい。人生で最も苦しいのは生まれる時と死ぬ時って聞いたことがあったな。進行形で苦しいってことはまだ生きているらしい』


 意識がぼんやりしているのにそんなことを思った。もう何日も眠っていた気がする。今は目を覚ましているのだと思う。でもよく見えない。話したいけれどうめき声のようなものしか出なかった。

何か聞こえている気もする。そばに誰かいるのだろうか。


 唐突に電源が落ちたような真っ暗闇が訪れた。


 気がつけば世界は白かった。上も下も分からない中で漂っている。


とてつもない大きなエネルギーが近くにある気がした。

『触れてみたい』

そんな欲求が湧いてきたので頑張ってみた。すると大きなエネルギーが私に気が付いたらしく何かを伝えてきた。


『・・・願いを一つだけ聴いてあげる』


聞き取りにくかったけれどかろうじてその部分だけ理解できたから


『穏やかに生きたい』


と伝えた。それなのに


『その願いを叶えるのはとても難しい』


と返事を返される。


『でも、願うことができたのです。あなたは強いのですね。それなら・者の・・』


後はよくわからなかった。







 アランとイリアの夫婦に子どもが生まれた。






 アランとイリアの夫婦は森に住んでいる。アランは(きこり)のように森を切り開き、木材を加工し、大工のように家を建てた。夫婦して住んでいる家はもちろんアランが建てた家だ。

 イリアは森の魔物を狩り、獲物をさばく。必要な分を食料や道具に加工し残りはセイトの街に運んで売る。

 森に住む人は他にいない。魔物が住む森なのだから。森の家から最寄りの街まで二人の足でも5時間かかるがアランとイリアの暮らしに不自由はない。最寄りの街の名はセイトといった。

 そもそもアランは騎士団にいたのだし、イリアは王宮魔術師だった。何故二人が辺鄙(へんぴ)な森で暮らすようになったのか。それは二人の馴れ初めにまで遡る。




 アランはセイトの街の出身だ。赤いクセ毛で茶色の眼、背が高く肉着きが良い。5歳の時に『刃物の才』という祝福を授かった。両親は今もセイトの街に住んでいる。警備兵をしていたアランの父アレルは

「『刃物の才』ということは、おそらく剣の才能だってあるのだろう」

と喜び、自ら剣を教え更に王都の学園にも通わせた。


 イリアは黒く真っ直ぐな髪に茶色の眼。小柄な体格だが気性は激しく一つの事にのめり込むと他が見えなくなりやすい。先の魔族軍との大戦の折、泣いていたのを兵士に拾われた。戦場近くは親を亡くした子どもが溢れていたので、孤児院をたらい回しにセイトの街までたどりついた。孤児院での生活は貧しかったが、自立できるように手を尽くしてもらえた。『魔術の才』の祝福を授かっていたのを知り王都の学園への入学を勧めてくれたのは、セイトの街の司祭だ。


 アランとイリアは学園で知り合い友人として付き合った。学園に在籍して5年目、イリアの才能が王宮魔術師の一人の目に留まり弟子になる。身寄りのないイリアにとっては願ってもない話だった。


 アランは焦った。イリアが王宮魔術師に弟子入りしたことで王宮の敷地内にある魔術師エリアで生活することになったから。王宮の敷地には簡単に出入りできない。つまりイリアに会えないのだ。会えないことでアランはイリアのことをどれほど恋しく思っていたのか自覚した。


『イリアに会いたい。俺も王宮で雇ってもらえば会えるじゃないか。騎士団は王宮の敷地内にあるよな。よし!騎士団へ入団しよう』


 アランはイリアに会いたい一心で騎士団への入団を果たした。


 イリアは魔術師として認められ王宮魔術師の職に就く。アランも騎士として活躍し、それなりに出世した。

 アランはイリアを口説き続けた。イリアは魔術以外に興味がなくアランの思いに気付かない、それでもアランは挫けなかった。


 王宮魔術師には貴族の出身者が多い。彼らは物影に隠れてヒソヒソと話をする。貴族同士の情報共有は彼らにとって重要なものだが、重要な話ほど物影でヒソヒソするものなのだろう。


 王宮に入って10年目、イリアは貴族がヒソヒソ話をすることに気が付いた。気が付いてしまうとそれが目に付き気持ちが悪い。気になるとストレスになって蓄積してしまう。とうとうイリアはヒソヒソ話する奴らに向けて火球を放ちたいような衝動に駆られるようになってきた。


悩んだイリアは師匠のベスに相談する。

「あんたねえ」

と言った切り、あきれた顔でイリアを見つめていたベス

「少しは周りを気にするようになったと思えばそっち?そんなことよりアランを気にしてあげなさい。あんたに纏わりついてるアランの気持ちに気づいてよ。あんたに会いに来てはプロポーズしてるじゃないの」


師匠に言われて初めてアランの気持ちに気が付いた。


「それにしてもイリア、アランに対して鈍すぎる」


師匠に言われてすぐさまイリアはアランの元に行き頭を下げた

「プロポーズをありがとう。結婚しましょう」

そう言いながら。


ようやく結婚したのはアラン30歳の春だった。結婚しても二人は働き続けるつもりだった。ところが結婚式の最中に二人は祝福を授かってしまった。


 大抵の者は生涯に一度だけ祝福を授かる。祝福は信じている宗教にも種族にも関係ない。5歳の時に祝福は授かるものだ。


稀に例外がある。


婚礼の折に祝福を授かった記録は380年前に一度きりだ。その祝福された夫婦から生まれた子が現在この国の王族の祖とされている。


 祝福は授かった時に当人の頭の中に響き渡るものだが、『巫女』や『司祭』は他人の祝福を受信する。『巫女』や『司祭』は受信を拒否できない。受信すると同時に祝福の内容を叫んでしまうが、これも自身ではコントロールできない。叫んでいる時の記憶は残るのだが。


 アランとイリアの婚礼の式を行っていた司祭が式の進行中に『婚礼に祝福を授かった』と叫んだ。聖堂内は騒然となった。


 『婚礼に祝福を授かった』件は王宮でも注目された。ただし、祝福の内容はどんなものなのか分からなかった。おそらく二人の間に生まれる子が5歳の祝福を授かるときに明らかになるのだろう。二人から生まれる子が新しい国を建てるのか?それとも今の王族と交わり国を栄えさせるのか?国の益になる子であるなら王家に取り込まなければならない。現王家に不利益を出してはならないのだから。王宮はアラン夫婦に監視を付けた。


 二人に注目したのは王宮だけでなかった。書き物を生業とする者や吟遊詩人がネタにしようと付きまとう。貴族が二人のどちらかを養子に迎えようと動き出す。商人は利益になりそうだとばかりにすり寄ってくる。正体不明の団体が近づいて来て危険を感じたことも度々。噂好きの有象無象も騒がしい。なんだかんだと群がってくる。


 騎士団での任務に支障がでてきた。王宮魔術師も同様に。そんなわけで二人は王宮を辞して森に引っ込むことにした。二人の実力であれば魔物が住む森で暮らせるが一般の人では森に入れないから。


 二人の間に可愛い女の子が生まれた。セイと名付けた



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