第4話 旅立ち
俺は16歳になった。
この町では16歳でなおかつ魔法修行、知識、体術をある程度取得した者は旅立ちを許可される。
世界を見て回ってもいいとう決まりになっていて、するもしないも自由だ。
「カナタ、本当に行ってしまうの?」
「うん、母さん。俺は世界を見て回りたい。先生と約束したんだ」
「そう……わかったわ、カナタも男の子だもんね。母さん、準備しといてあげるから町のみんなに挨拶してらっしゃい」
「わかった! ありがとう! ちょっと行ってくる!」
俺は今日、旅立つ。
先生との約束を守るため。
もっと色んなことを知るため。
「お、カナタの坊主じゃねぇか。今日はどうしたんだ?」
町を歩いているとすぐに声を掛けられた。
小さい町だから大抵顔見知りだ。
「今日、旅にでるんだ。だから町を見て回るのと挨拶周りだよ、おっちゃん」
「え、なになにカナタくん、旅に出るんだって?」
「もうそんな大っきくなったんかい。カナタくん、旅の途中のご飯とかちゃんとしろよ」
おっちゃんに話かけられてからわらわらと人が集まってきた。
「カナタの坊主ならなにかでっけぇことしそうだな!」
「そういや、エリナちゃんには挨拶したのかい?」
「今から行こうと思ってたんだ」
「エリナちゃん、凄く美人になったし置いて行ったら別の人に取られるぞー」
「? 取られるも何もそれはエリナの自由じゃないですか? おっと、そうだ、いかないと!」
みんなにあいさつ出来たしあとはエリナだけか。
この時間なら部屋に居るかな?
とりあえず向かうか。
「エリナー」
「あ、カナタ。上がってきてー」
二階の部屋から声が聞こえた。
オッケーも出たし入るか。
「お邪魔しまーす」
「いらっしゃい。それで、カナタ。どうしたの?」
同じ黒髪でサラサラな長い髪は相変わらず目を引く。
スタイルもいいし、優しい。
俺と違ってよくモテる。
おっと、そんなことより
「挨拶に来たんだ。今日、俺はこの町から旅立つ」
「え、そ、そっか。カナタ、ずっと楽しみにしてたもんね。ねぇ、カナタ。その旅立つは来年とかじゃダメなの?」
「うん、俺は今すぐ行きたい。今日というこの日を楽しみにしてたんだから」
「そうだよね、うん、昔からそうだったもんね。行ってらっしゃい、カナタ。元気でいてね。あ、お茶持って来なきゃね、ちょっと、待ってて」
急ぐように離れていくエリナ。
あんなエリナ、見たことないな。
どうしたんだろう?
とりあえず待ってみた。
だけど、エリナは一向にもどって来なかった。
「エリナ?」
−エリナside−
「はぁ、おもわず嘘付いて飛び出しちゃった。分かってたはずなのにな。でもカナタだって悪いよね、今までずっと一緒に居て、ずっと過ごして来たのに」
家から飛び出して、当てもなく外を歩いた。
カナタがずっとこの日を楽しみにしてたのは知ってる。
けど、その隣に私はいれない。
それが急にもどかしくなった。
「どうして、後1年早く産まれなかったのかな…。産まれてたらカナタと一緒に行けたのに」
これはずっと思ってた。
あの日、先生の試験をカナタがクリアした時、カナタから聞かされた。
外への想い。
たしかにカナタの力はこんな小さな町で発揮出来る訳ない。
もったいない。
でも一緒に居たかった。
「カナタの夢、私が壊しちゃダメだよね。カナタのことはみんなより知ってるんだ。だから私は泣かないよ」
「エリナー!」
「カナタ? どうしてここが……いや、それよりもごめんね。勝手に出て来て」
「いや、俺のほうこそ。場所はなんとなくこっちに居るかなって思って」
私がカナタをよく知ってるように。
カナタも私のことを良く知ってくれている。
「カナタ、私は一緒には行けないけど…来年は必ず私も外に行く。だから先に行って待ってて。これ、カナタに」
私はずっと手に持っていた物を強引に渡した。
カナタがいつの日か旅立つときに渡したくて。
「これはお守り? ありがとう、エリナ。俺は先に行くよ。だからエリナ、試練頑張れよ」
「カナタもね」
そして……。
旅立ちのとき。
「じゃあ、みんなー! 行ってくるよ!」
「行ってらっしゃい! カナタ、先生にはまた来られたら旅立ったこと伝えておくね」
「うん、よろしく! 母さん、父さん、エリナ、みんな。行ってきます!」
勢いよく俺は母さんが準備してくれたものを持って旅立つ。
その中にエリナから貰ったものをポケットにいれて。
「気をつけてね、カナタ。母さんはあなたがたまにボケッとしてるのが心配よ」
「私もです」
−続く−
ようやく旅立ちまでかけました!
次回よりようやく異世界探索!