病室での再会
刑事さんに誘導されて警察車両に乗せられ私は香港警察へと移動した。
(あの・・・私、どうなるんですか?)
(ちょっと会いたいって人が警察本部に来てるから。)
(? 会いたい? 私にですか?)
誰だろう・・・まさか大学から先生たちが来てるんじゃ・・・ こんなことになってこれじゃ間違いなく退学だろう。
せっかくイギリスに来て名門校にも留学して・・・それなのに・・・強烈に不安が過る。
香港警察本部に到着。
刑事さんに介助され私は警察署内へと入った。
これから取り調べやら医療行為などでいろいろ聞かれるのだろう。無免許で手術をしたのだから香港とはいえ、逮捕は免れないかもしれない。
(さ、こっちよ。)
案内された部屋は取り調べ室とはほど遠い何か偉い人がいるような広くてきれいな部屋だった。
(今、こちらに来られるからこのまま待ってるといいわ。)
(あの、刑事さん、待ってるって・・・誰が来るんですか?)
(うん、ま、会ってみると分かるから。)
少し、時間が経ち扉が開いた。 刑事さんが深く頭を下げている・・・・
(貴女が手術をした方かな?)
警察の署長らしき人と一緒に部屋に入って来たその人は私に語りかけた。
(は、はい・・・あの・・実は・・・私、医師ではなくて・・あの・・・つまり・・・)
警察の署長より偉い人なのだろう。この人に取り調べをされるのか?
(ハハハ・・いいんだ。貴女に感謝の気持ちを伝えたくて、貴女をここに連れて来てもらったんだよ)
(か、感謝の気持ち?)
(この方はね、香港一の大企業、(ハンソン・グループ)の会長なんだ。貴女が手術をして助けたのは会長の息子さんなんだよ。)
警察署長によると、私が執刀した刑事さんはこの(ハンソン・グループ)という会社の会長の息子さんで病院に運ばれたあと意識を取り戻し経過は良好だそうだ。
(そこで、会長と一緒に搬送された病院に行って欲しいんだ。息子さんも貴女にお礼を言いたいと言ってるそうだ。)
(私も一緒に行きます。彼女を介助する義務も発生しましたので。笑)
(そうか。笑。 じゃ会長と一緒に病院に同行してくれ。)
こうして私と刑事さん、(ハンソン・グループ)の会長と、私が執刀した刑事さんがいる病院へと行くことになった。
しかし、意外な展開にビックリだ。 まさかこんなことになろうとは。てっきり取り調べを受けて逮捕でもされるのでは、と思ってたのだから。
でも、大学はどう説明したらいいのだろう・・・一週間という約束で香港に来たし、ソンファとクララと一緒に戻らなければならない。
考えるだけで不安になってくる。 香港なんて来るんじゃなかった・・・・
(でも、ほんとによくやったわ。これからいく病院でも見事な処置だって医師たちが言ってたから。あ、そう、何て呼んだらいいのかしら?)
(愛です。月岡 愛といいます。)
(私は、スラン。よろしくね。)
病院に到着し刑事さんが入院している病室へと向かった。
しかし、香港の大企業の会長ともなると護衛もすごく日本でいう(SP)みたいな人たちが取り囲んでいる。
この病室がまたすごい。 個室は当たり前だが広くてまるでホテルのスィートルームみたいなお部屋だ。 私の車イスをスランが介助してくれる。
部屋には担当医師もいてその医師が、
(いやぁ、見事な処置だったよ。こちらでも術後の処置をしたが完璧な手術だ。どんな方法でやったんだい?)
タブレットを使い、熊本の病院へ連絡をして映像を送り指示を受けて執刀と経過を伝えた。しかし私は医師ではない。この行為が香港ではどう処罰されるのか、そちらがとても心配なのだ。
(それにしても、このような方法を考えるとは。素晴らしいとしかいいようがない。)
医師は驚くばかりだけど、
(あの・・・私、医師免許などないんです。無免許でこんな手術をしてしまって・・・香港ではどんな処罰があるんですか?)
(それは心配しなくていい。私が間に入るから。貴女は何も心配しなくていいし処分や処罰など受けることもない。)
会長が私に言った。 医師も、
(今回の手術は、緊急なんだ。よく意識を失って倒れたりするだろ? 日本でも(AED)って一般の人が応急処置などしないか? それと一緒で処置をしたからといって何かあるわけじゃないし、大丈夫だ。)
(貴女が僕を助けてくれたんだ? ありがとう。)
術後の経過は良好のようで、少し入院はしなければならないが回復は期待できるようだ。
(さすがに撃たれたときは意識がなくなってね。目が覚めたらこの病院だったよ。笑。でも、色々、話を聞いて貴女にぜひ会いたいと思ったんだ。)
こんな話せるまでになって、私は嬉しい。
(僕はジュンジェ。貴女は?)
(月岡 愛です。)
(愛か・・・素敵な名前だね。)




