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Give and take 留学編  season2   作者: 月岡 愛
20/31

危険な医療行為

 お店の中は見た感じ、中華料理屋のようでなんだかチャーハンやラーメンの香りがしてくる。 こんなときだというのに私ときたら・・・


(ちょっと、みんな、お腹すいてんじゃないか? 何か作ってあげるわ。)


私のテレパシーが通じたのかお店のおばさんが私たちに賄いを作ってくれるようでなんだかうれしい。


(でも、みんな若いのによくがんばるよねぇ・・ほんとに感心するわ。でも、あまり露骨にやり過ぎると公安に逮捕されるからほどほどにしなよ。)


(よかったね。私、さっきからもう何か食べたくて・・・w)


ソンファも私と同じだ。 女は食べ物には勝てない。



でも、香港の人たちはこんな状況で生活はどうしてるんだろう?


(私たちは基本、時間が取れる人が集まってるんだけど、でも会社や学校などに行ってる人も積極的に参加してるのね。だって、学校の先生や会社の経営者の人たちもこのデモ活動を支援してるんだから。だからこれだけの人たちが集まるのよ。)


(でも、日常の生活とかはどうしてるんですか?)


(普通よ。ほんとに。終われば家に帰って普通に過ごしてるし、デモの呼びかけがあれば、じゃ、いくかってそんな感じよ。)


(仕事や学校だって1日や2日くらい休むくらいだし。一週間も一か月も休むことはないし、また、会社に行って、休んで抗議・・・ってことよ。)


はぁ・・・なんだか分かったような、分からないような・・・



(みんな、助けて!!!)


突然、デモ隊の人たちがお店に入り込んできた。


けが人がいるようでその人を担いでいる。



リンさんが、問いかけた。


(どうしたの?)



(警察が拳銃を発砲してそれがこの人に当たったの。)


しかし、よく見るとデモ隊の人ではなく警察官・・・刑事のようだ。肩に銃弾を受けたらしく顔は青ざめて気を失いかけている。


でも、リンさんは、


(早く助けなきゃ!! 救急をお願い!!)


(どうしたんだい? こりゃ大変じゃないか?)


厨房にいたおばさんも出て来てすぐに電話を取った。 が、表はデモ隊と警察、機動隊の群衆で救急もままならない状態だった。


(ダメだ。すぐには救急も来れない。)


(すぐにでも手術が必要よ。どうしよう??)


リンさんもおばさんも困惑していた。



なんとかする方法はないか・・・私は考えた。


あ!もしかしたら???



私はデモ隊の人の中で(タブレット)を持ってる人を探した。 みんなビデオカメラやスマホなど持ってるはずだから絶対にいる。


その時に、私のがあるわ。これでいい?


ソンファが持参していた。私はこの香港から日本に映像を送ることが出来るか、デモ隊の人たちに聞いた。


(このお店にはwifiがあるしそれに日本とネットでやりとりも出来るわよ。でもどうするの?)


(日本にいたときに、熊本地震があってそのときに医療チームに参加したの。そのときのチーフドクターに映像を見せてどうしたらいいか聞けるかも知れないの。出来る?)


(OK。出来るわよ。じゃ、すぐにでも繋げるから。)


デモ隊の一人でもある、女の子が(タブレット)を操作してくれた。


(これで日本とも連絡がとれるわよ。どうぞ。)


(ありがとう。やってみるわ。)



私は、熊本地震でもお世話になった、救命救急医療センターに連絡した。


(はい、熊本○○総合病院です。)


(もしもし、あの、私、4年前に熊本地震で医療チームに参加した月岡と言います。その時のチーフドクターの先生はいますか?)



渡米前に熊本、益城町に行き避難所で被災者の人たちと再会したときにチーフに連絡をしたけどそのときには中東に派遣されていて会えなかった。でも4年経った今、もしかしたら救命に戻ってるかもしれないと私は一つの願いを賭けてみたのだ。



その思いは正解で、チーフは熊本に帰ってきていた。



(愛・・・元気か? 今、どうしてるんだ?)


(チーフ、私、海外留学でアメリカにいるんです。でも、今、香港にいるんですけど・・)


(香港? 香港で何してるの?)


(実はケガ人が出ていて銃弾を受けてるんです・・・)


事の詳細を私はチーフドクターに伝えた。


(分かった。とにかく患者を見せてくれ。タブレットで映像を送れるか?)


(はい、分かりました)


音声から映像に切り替えて私とチーフが写し出された。


(チーフ、お久しぶりデス・・・w)


(元気だったか? あれ、どうして車イスなんだ?)


(説明は後にします。とにかく患者を映します。)


タブレットをケガ人の刑事に向けた。


(肩に弾がめり込んでるようだな。すぐに救急車の手配をするんだ。)


(それが、大勢のデモ隊と機動隊で救急車が入ってこれないんです。)


(デモ隊? まさか、香港のデモ隊に参加してるのか?)


チーフも驚いたようで、


(愛・・・大丈夫かい? それにしても香港でデモ隊か・・・ でもその患者、すぐにでも治療が必要なんだ。その中に医療関係の人はいないのか?)


お店の中にいる人たちに問いかけてみた。そしたら、



(僕じゃダメかな? 医者ではないけど鍼灸・・・針と薬草で治療はしてるんだ。とにかく止血をしければいけないから、こうしないと・・・)



銃弾を受けた肩をタオルで囲い止血をしている。


(これはね、緊縛止血法っていって血液の流れもコントロール出来るんだ。とにかく銃弾を受けたとき出血がひどいから圧迫止血と緊縛止血の両方を試みて救急が来るまで応急処置をしておくんだ。)


映像を見ているチーフが、


(愛、その人と一緒に救急が到着するまで処置に当たるんだ。)


(分かりました。)



鍼灸の人が手際よく刑事さんを手当していく・・・


(私は香港で鍼灸師をしています。医師ではありませんが医療の知識は少しあります。指示をください。)


(分かった。映像で見る限り(盲管射創)だから、止血できても弾丸を取らなければならない。そのためにもすぐに治療が必要だ。止血は出来てるか?)



盲管射創・・・・・銃弾が人体内に留まっている状態。




(はい、だいぶ収まってはいますが、体温が下がってきていて気を失っています。弾丸を取り出して銃創の治療が必要かと思います。)



(愛、そこに消毒液や何かケガの手当につかうものはないか?)


(デモ隊の人が治療箱を持っています。)


(それを見せてくれ。)


治療箱の中には、ガーゼ、傷薬、消毒液、絆創膏、包帯など家庭にあるようなものは揃っている。


(ハサミとカッターナイフはないか?)


お店のおばさんが、


(これでいいかい?こういうのもあるよ。)


ハサミとカッターナイフそれに細い包丁のようなものも出してくれた。これは魚の骨をとる道具らしい。


(OK. タブレットの電源は大丈夫かい?)


(はい、大丈夫です。)



なんだか用意は出来たけど、この先、どうするの?


(愛、よく聞いてくれ・・・以前、全日空の機内で応急処置したことがあるだろう?)


(あ・・はい、血圧計とか使って・・・)


(そのときのことを思い出して、鍼灸師の人と手当をするんだ。)


(へ? 私がですか???)


(こちらも助手を呼んで指示をするから・・・やるんだ。)


やるって・・・まさか、私が手術を???


(大丈夫よ、愛なら出来る。私たちも補助に付くから。)


ソンファやリンさんもそういうけど、これだけは医師ではないと・・・


(あの・・無免許で医療行為をすると日本では逮捕されて、あの、その・・・)


(そんなこと言ってる場合じゃないんだよ。後のことはなんとかするから今すぐ準備するんだ。)


チーフも早くするんだと映像から見てとれる・・・



(大丈夫よ。あんただったら出来る。早く刑事さんを助けてあげて。)


おばさんも私にやってくれと泣きそうになってる。


(僕も一緒にやるから。大丈夫、弾丸を取って傷口を閉じるだけだから。 おばさん、塩水は出来ますか?あとオトギリソウもあれば・・・それに百草も・・)



(あるわよ。今、持ってくるから・・)





オトギリソウ・・・止血・肝炎・抗癌に効く薬草。


百草モグサ・・・・食物繊維、クロロフィル(葉緑素)、ミネラルが豊富で、浄血、増血作用のほか、止血作用もある万能薬。



(愛さん、やろう。一刻も早くしないと助からない・・・)



私は迷った。医師でもないのに手術などしていいのか? 仮にやったとしてこの刑事さんに何かあったら私は責任がとれるのか? いや、それだけではない。オックスフォード大学には何か問題があったらすぐに帰国するという約束で香港に来ている。


こんなことが伝わったら私は間違いなく退学処分になる。いや、医師免許もないのに医療行為をしてこの香港で逮捕されるかもしれない。


全日空の機内でした(応急処置)とは全く別物なのだ。 (大学編 第14話)



しかし、今、私の目の前には命を彷徨っている人がいる。 私ならどうするか・・・


助けたい・・・絶対に助けたい!!! 退学でも逮捕でも、もうどっちでもいい!!




(チーフ、指示をお願いします!!!)



私は、熊本、救命救急医療センターのチーフドクターに指示を仰ぎ、弾丸摘出手術を執刀することになった。
























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