同時爆破テロ
なんだか、ぼんやりとしている。 あれ? なんか真っ白だ。どこ?ここ・・・
(被害者が目を覚ましたわ!! 大至急、チーフドクターを呼んで!!)
医療センターでは、地下鉄、バス、爆発事件の被害者が救急搬送されていた。私が乗車していたバスは2階で爆発物をリュックに背負った男が自爆行為をし、2階部分が吹き飛んだ。 一階にいた私の目の前にあったのはバスの屋根ではなく、2階部分の床だったのだ。
地下鉄4か所、バス4台で自爆行為があり、ロンドンの通勤時間帯はひどい混乱状態となりパニックになった。 地下鉄からは真っ黒になり、血まみれになってる人も多く運ばれており、負傷者も当初の発表より増えている。 バスでは2階部分が吹き飛び、このときにいた人たちの生存は確認されているだけでも数人程度となっていた。 私はこのイギリス、ロンドンで自爆テロの被害者になってしまった。
(あ・・・痛てて・・)
なんか首に巻かれていて足はがっちりと固定され腕もなぜか上がらない・・身動きが出来ない。
(起きたようだね。意識はあるね。話せるかい?)
医師の先生らしき人が話かける。
(あ、はい・・でも体が動かないみたいで・・・)
(しばらく、リハビリも兼ねて入院しなければならないから。回復すれば以前のように動けるからね。)
(あの・・私はどうなったんですか?)
(足と腰の骨がかなりダメージを受けているんだ。それに首から肩にかけても。脊髄には影響はないみたいだから、少し、安静が必要なんだ。)
(そうなんですか・・あ、ところでわたしの英語は通じてますぅ??)
(大丈夫だよ。ちゃんと会話になってる。笑 )
(はぁ・・良かった。笑)
(笑えるなら安心だな。笑)
しかし、私がこんな寝たきりになるなんて・・ あ、ところであのお姉さんはどうなったんだろう?
(あの、私の隣にいたお姉さんなんですけど、席ごと地面に落っこちゃったんです。もう血だらけで・・)
(搬送されてきた人があまりにも多いから、こちらとしては分からないけど、バスに乗っていた人の生存が確認されてるのはまだ、貴女の他に数名だけなんだ。何日かすれば警察も聴取にくるからそのときには分かるはずだよ。)
お姉さんの安否が心配だ。 それにしてもこうも動きが取れないと何もできない。せめてTVくらいは見たいものだが・・・
でも、お風呂とか、食事とかどうするんだろう・・このままじゃ・・
(あ、すいません。あの・・・ご飯とかお風呂とかはどうしたらいいんですか?)
通りかかった看護師さんに尋ねた。
(そんな身体じゃ、シャワーはだめよ。食事は私たちが介助するから大丈夫よ。)
(どんな食事なんですかぁ?)
(まぁ、ペースト状の・・なんかよ。)
ペースト???
(クリームみたいな・・バターのような・・食べてみたら分かる。笑)
(でも、トイレとかは・・)
(もう、大丈夫よ。笑 そのために私たちがいるんだから。心配しないで。 もうそこまで話せるなら安心ね。)
でも、私の留学はどうなるんだろう・・ これではすぐには出来ない。シャロンにもなんて言えばいいのか・・・
私のイギリス留学は自爆テロの被害者として最悪のスタートになった。