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60 苦悩と嫉妬

随分と投稿が遅れて済みませんでした。

ゴールデンウィーク中に、もう何話か追加する予定です。

  ハランは、そりの練習場に来ていた。

 今は、王都のレースに集められた選手たちだけが走れる専用コースになっているが、見るだけなら誰でも可能だ。


『ラルフ君はいないかな』

 ハランは練習しているライダーを一人ひとり確認する。

 20~30人のライダーがコースを走ったり、マシンのメンテナンスをしている様子がうかがえる。


「これが選ばれしライダーか」

 独り言が口からこぼれる。

 ライダーの中でも、今ここで練習できる選手は、まさに選ばれし者たち。

 職種は違えど、商人として父親にも認められていない自分とは違う人たちだ。


 ハランは、その中からラルフを探す。

 小さい体なので、探すのは簡単だと思ったが、意外に見つからない。


 そんな時、急に競争を始めるライダーが出てきたため、他のライダーがコースを譲る様子が見えた。


「あれ?」

 ハランは、競争しているライダーを見て、目が釘付けになる。

「ラルフ君?」

 どう見てもラルフにしか見えない。

 あの礼儀正しく、大人しく見えたラルフが、ほかのライダーの迷惑になっている競争を始めたのだ。

 あれがラルフ君の本性なのか。


 見ているライダー達から、囃す声が聞こえるので、周りは迷惑と思っていないのかもしれない。

 迷惑どころか面白い見世物が始まった程度にしか思っていないのかもしれない。

 それとも、レースの前に手の内をさらけ出してくれている奇特な出場者と思っているのか。



 父親(サイモン)が言った、ハランの生き残る道。

 父親の認めた男と結婚するのが嫌ならば、ラルフを利用するか。

 でもどう利用すればいいのか分からない。

 どう協力を求めればいいのだろうか。


 父親の言う通り、飛び抜けた商才がないことは十分承知している。

 父親が何を見て、ハランに才能があると言っているのか。

 分からない。

 しかし少なくとも、父親が跡継ぎにハランを選ばない程度に、才能がないことは自覚しているのだ。

 そもそも本当に父親にはない才能がハランにあるのなら、教えてくれてもいいだろう。



 ラルフが赤い車体を抜いた。

 赤い車体とラルフがデッドヒートを繰り広げている。

 素人であるハランでさえ、彼らが普通のライダーと比べて、速いことが理解できる。

 その速いライダーが、本気の勝負をしているのだ。



「くっ」

 あんな小さい(ラルフ)子が持つには相応しくない才能に嫉妬してしまうハランがいた。


『あんな小さいころから、大人相手に一歩も引かない才能があるなんて羨ましい』

 ハランは小さいころから、王都を代表する一流の商人になるべく、父親の後姿を見ながら商売に励んできた。

 ある程度はやれる自身は付いたものの、父親からの評価は高くはなかった。


 ところが、突然現れたラルフという少年は、商売ではないとは言え、その父親から一目置かれるほどの才能を持っているらしい。

 そりのレースで地方都市カーヴ第一代表。

 地方都市カーヴで、チンピラ紛いのクランとして有名だったジャッキークランが彼に手を出して潰れる。


 そんな商売とは違う才能があるかどうかなんて、ハランにとってはどうでも良いことだった。

 何よりも重要なことは、父親(サイモン)(ラルフ)を認めたこと。


 最も、アーマーベアを単独で倒す人材を確保しているというだけで、稀有な存在だ。

 人材は人財。

 自分が商人として成り上がるために、優れた人という財産は、喉から手が出るほど欲しいのだ。

 そんな人材を雇うにはいくらお金が必要なのだろうか。

 そもそもそんな人材がフリーで存在するのか。

 どこの誰に頼めば、そんな人材を紹介してくれるのか。

 父親(サイモン)だったら、どんな伝手を使って確保するのだろうか。


 しかもあの女騎士、アーマーベアを退治するのに、防具を装備せず、剣一本で倒していた。

 攻撃を大きくかわす戦い方ではなく、一歩も引かず力押しで戦い切る。

 アーマーベアを倒すのに、防御を捨てて大丈夫と判断できるその技量、胆力。

 どこを探せばそんな人材が見つかるのだろうか。

 誰が誰をどう指導したら、そんな人材が育つのだろうか。


 それだけじゃない。

 その女騎士が受けた傷、軽傷に毛の生えた程度だったが、それでもあっさりと治すヒールの腕前を持ったシスター同伴。

 あのパーティーは、おかしい。


 (ラルフ)はたった七歳。

 その年齢で、そんなおかしいパーティーの中心人物なのだ。


 その人を引き付ける才能が羨ましい。

 彼に、地方都市カーヴ第一代表になれるという才能があるだけではなく、才能がある人物さえも彼に引き寄せられている。

 妬ましい。

 嫉妬する。

 ハランはラルフの才能が欲しいとは思わない。

 ただ、父親に認められるだけの、才能が欲しいだけなのだ。


 彼のように、一瞬で父親に認められるような大きい才能が欲しいとは言わない。

 努力して報われるだけの才能が欲しい。


 赤い車体と接戦を演じているラルフを見ながら、ハランは湧き上がる嫉妬を抑えきれなかった。


本当は、しばらく投稿を休む予定でした。

その予定は変わりありませんが、もう少しだけ頑張って投稿します。


リアルで、転勤&引っ越しのコンボがあり、普通の引継ぎでさえ忙しいのに、上司に追加で仕事を頼まれて心にも時間的にも余裕がありませんでしたので、計画外の投稿休止になってしまいました。


更に転勤先では、大きな未処理&隠蔽未処理があり、更に報告期限切れや期限直前の仕事が手付かずで残っていたりと血管切れそうな状況であり、転勤前より大変なひと月を過ごしました。


とりあえず仕事の目途が付いたので、もう少しだけ頑張ります。

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