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4 その神具、効果抜群

 自称女神のエルメスから貰ったサイコロについても記しておこう。


 このサイコロ、イカサマなどのギャンブル必勝法ではない。

 何度かギャンブルで効果を試してみた。

 俺がギャンブルをした訳ではない。

 カス親父を賭場まで迎えに行ったときに、こっそり使ってみたのだが、勝つ確立が上がる程度だった。

 等倍の1倍から最大6倍まで。

 確率が上がる程度の効果。

 1倍の効果が出れば、絶対に勝つどころか何も変わらないし、最大の目が出ても勝つ確率が6倍にしかならないのだ。

 勝つ確率が上がることは間違いないのだから、上手く使えばギャンブルだけで生計を立てることも可能かもしれない。

 しかし、毎回そんなことをすれば、怖いお兄さんが出てくること間違いなし。

 胴元は、生かさず殺さずをモットーに金をむしり取っている訳で、常に勝つ奴がいれば、疑問を持つし、不審点がなくても邪魔なら消すはずだ。

 つまりギャンブルは身の破滅につながるのだ。

 しかもよく見ていると、親父が行く賭場ではイカサマも時々行われていた。

 そんなところで勝ち続けることはできないのだ。



◆◆◆



 俺は子供達とは遊ばず、シスター達と仕事をしているのだが、それを面白く思わない子供達がいる。

 簡単に言えば、俺の兄とか、その友達とか。


 シスター達が、俺にばかり構って、自分たちに構ってくれないのが面白くないのだ。

 しかし、こいつらはまだ5歳の子供。

 しかも親は貧乏で共働き、子供に構う暇もないのだ。

 教会の優しいお姉さまに構って欲しい気持ちも少しは分かる。


 しかしシスター達だって、遊んでばかりいて手間の掛かる子供よりも、自分の仕事を手伝ってくれる子供をかわいがるのは道理だろ、と思う。

 俺が羨ましいのなら、一緒に仕事を手伝えばいい。

 とは言っても、体だけではなく心も子供の兄達に、それを望むのは酷というものだ。

 俺は体は子供でも、心はシスター達よりも大人だ。

 子供である兄達にも寛大な態度を取りたい、と常々思っている。

 しかし、そういう上から目線の態度が、失敗を招くこともある。



「おいラルフ、お前ばっかり良い格好してるんじゃねえぞ」

 俺に因縁をつけているのは、俺の異世界での兄であるブルーノ。

 ブルーノの周りには、5人の仲間が俺を睨んで威圧している。

 子供たちの威圧なんて、俺から見ると非常に可愛らしいもので、とても微笑ましい。

「兄さんごめん、僕まだお手伝いの最中なんだ」

 そう言ってその場から立ち去ろうとするが、そうは問屋が卸さない。

「俺の言ってる意味が分からないのか」

 ブルーノが凄みを効かせる。


 クスッと笑いそうになったが、我慢した。

 相手は本気なのだ。

 でも5歳児が本気でやっていると思うと、更に笑いがこみあげてくる。

 我慢しなきゃ。

「ぷぷっ」

 やっちまった。笑いを堪え切れなかった。

 仕方ないだろう。

 例えば親戚の小さい子が、『お菓子をくれないとひどいことをするぞ』と凄んで見せたら、皆はどういう反応をするのだろうか。

 大概の大人は、『可愛いからお菓子あげちゃう』となるんじゃないだろうか。


「何笑ってるんだよ」

 ごめん兄さん、その行動すべてが可愛くて、笑ってしまったよ。

 馬鹿にしているつもりは全くないんだが。

 そう言ってブルーノは俺に殴り掛かってきた。


 子供のパンチ、簡単に捌くことが出来る。

 捌くと、簡単にバランスを崩して転んでしまう。


「お前やったな」

 後ろで控えていた友達が、俺に殴り掛かってくる。

 パンチしてきた腕を手刀で軽く方向をそらして捌いてやると、5歳児くらいの子供はバランスが悪いことからあっさり転んでしまう。

 このくらいの子供だと、体に比べて頭が大きく、体幹が鍛えられていないため、すぐ転んでしまうのだ。


「お前やったな」

 転んだブルーノを見て、別の友達も殴り掛かってくる。

 無限コンボの出来上がりという訳だ。


 しかし、子供といえども永遠に転がされている訳ではない。

「一斉に捕まえるぞ」

 と、数の利を使おうとする者が出てくる。

 その時に、サイコロスキルを使ったらどうなるんだろう、とふと思った。

 試しに、頭の中にあるサイコロを回転させながら、加速にそのスキルを振ってみた。

 出目は3。

 自分が思った加速の3倍で俺は加速していた。

 ブルーノやその友達は、俺を一瞬見失っていた。

 (面白い)


 俺は、暖炉の掃除をしていたことから、暖炉の灰や燃え残った炭を持っていた。

 俺は、燃え残った炭を手にすると、サイコロスキルを使って、出た目を加速に振った。

 兄やその友達の額やほっぺたに〇や×を描いた。

 本当は、『肉』とか『犬』と描きたかったのだが、そういう文字と文化が異世界にはないのでやめておいた。

 もし、そんなことをして、俺が異世界から来た人間だとバレる原因になっても困る。


 全員の顔に落書きが終わったところで、俺達のドタバタに気が付いたシスター達が駆け寄ってきた。

「みんな、何しているの」

 俺以外の子供たちは、シスターから視線を外してうつむく。

 年下の子を寄って集っていじめようとしていたとはさすがに言えない。

 気が付いたら、俺だけがニコニコしていた。


「ラルフ君、みんなで何していたの」

「お遊び。みんなで落書きごっこしてたの」

 俺は元気に答えた。

「めっ、遊ぶときは遊んでも良いから、お手伝いが終わってからしてね。あと、お顔に落書きは駄目よ」

「は~い」

 俺だけ元気に返事をした。


 それ以後、俺は兄グループに構われることがなくなった。


 そんなことがあってからというもの、俺は魔法を使うときもサイコロスキルを併用して使うようになった。

 そうすると、効果はてきめん、魔力が劇的に持つようになった。

 失敗しても1倍。大成功すれば6倍の効果だ。

 とは言え、教会の仕事は多岐にわたる。

 俺より大人である教会のシスターでさえ、魔力を使い過ぎれば、体調不良に見舞われる。

 なのでシスター達は自分の魔力を使わず、俺を使っていれば、そういう不調に見舞われることもない。

 そのため、俺はシスター達に重宝された。

 魔法を使う際、みんなに見えないサイコロを併用しながらも、日に何度も倒れながら、寝て回復し、回復するたびに魔力を使い、教会に奉仕するようになっていた。



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