8.試合開始!!!
今回の主役が出てきてお茶会が始まった。
ご令嬢らは、うっとりと、その主役たちを見ている。
恋する乙女だわ…。
もちろん、私は遠くにいる。もう観客席だ。
何名かの貴族の方たちに挨拶を済ませ。
あ〜王子たちの所にも挨拶に行かなきゃ行かないといけないのかしら〜って思いながら。
まぁ、1人は私を殺した相手ですしね。
行きづらいですよ…。殺される理由は今はないけれど、怖いわ。
でも早めに済ませておけば、あとは楽なのだからと頑張って足を進ませ。
「お久しぶりです。ルビー様、サファイア様
今回もお招き頂きありがとうございます」
と、淑女の挨拶を完璧にこなした。
「ルルーシュ嬢お久しぶりです。今日はごゆっくりなさってください」
そう言ってルビーは優しい笑顔を向けてくる。
私は知っている、知っているの。この人は本当に恋をし、愛した人には、すっごい甘いフェイスになることを、この笑顔は社交のための笑顔だ。
でもこの笑顔に騙される人は今日も沢山いるのね…可哀想に……
後ろにいる弟のサファイアは以前のお茶会では、無表情だったのに、今回はニコって笑えるようになっていた。前世は、ルビーしか見ていなかったから、失礼な話、サファイアは、私の中で空気だったわ。本当に失礼よね。
でも、笑ったらルビーそっくりだわ!
やっぱり双子ってすごいのね!
テンションは上がったが、平静を保ちつつ。
「ありがとうございます。失礼致します」と言ってその場を去っていった。
1人で会場の隅っこで、ジュースを飲んでいる。
はぁ、アルナと約束した、
ミッションをこなさなければ……。友人になるってどうすれば良いの?友人ってどうつくるんだっけ……。
んんーと頭を悩ましていると。
急にスっと隣に人影が
「お一人なんですね」
急に声をかけられた方を見ると、そこには
「ええ、そうです。サファイア様もですか?」
「いや、私は少しだけの休憩を」
「なるほど、そうなのですね」
何故!?サファイアはいらしたの?人があまり寄らないところだから、休憩にはとてもいいところではあるけれど……
何故!?私の隣で!?!
「あの、聞いてもいいか?」
「あ、はい。なんでしょう?」
「…ありがとう。少し気分を悪くされるかもしれないが、この前のお茶会では、兄のことを気に入っていた貴方が何故この場ではアピールをしないのか、不思議に思ってしまって」
少し眉を八の字にし、申し訳なさそうにサファイアは聞いてきた。
他の令嬢なら、怒るか、サファイアが気にかけてくれたと喜ぶことだろう。
でも、私は怒ることも喜ぶことも無い。
できれば、なるべくルビーに関わりがあるものには近づきたくない。
しかも、双子の弟だ。選択を間違うとどうなるか。もう、二度とあんな風に死にたくない。
でも…
…なんてっ率直に聞くの!?!?
そりゃ、今回のお茶会は、婚約者候補を決めるという大事なお茶会でもあるけど!
「私には勿体ないお方ですから」
「???君は、公爵令嬢だろ?身分は十分釣り合うと思うが」
なんと…うぅ。
「違うのです。私のようなわがまま令嬢は、あの方の負担となってしまいます。もし婚約者となって、あの方の負担になってしまったら、私耐えられませんもの。」
「自分のことをしっかり理解をしているのだったら、大丈夫だろう」
「いや、だ、駄目なのです。」
どうして!?サファイアは食い下がってくるの!!?!!?
もう、ルビーには気はないの!あの顔は、遠目が十分よ!!!
「ふーん、大変なんだな。婚約者第1候補も」
「…え?」
今…なんと…?
「あぁ、今のところ貴方がルビーの1番の婚約者候補だ」
「えええええええええ!!!?!!?!」
あまりの驚きで、声に出して驚いてしまった。
サファイアはかなり驚いたようで、目を大きく見開いている。
「し、失礼致しましたわ!少し驚いてしまって」
「少しだっただろうか…?」
「少しではありませんでした…かなり驚いてしまいました…私がその、1番の婚約者候補だったなんて」
なんてことなの…だって今回はベタベタしてないのよ…?!なのに婚約者候補1番なんて!試合とは言ったが、おめでとうございます!第1王子の婚約者になれますよ!みたいな優勝トロフィーが、欲しかったわけじゃないわ!参加賞よ!とりあえず参加は致しました、の参加賞!…が欲しかったのに…あぁぁぁ逃れられないのかしら…。
「まだ、決まっているわけじゃない。1番の婚約者候補と言うだけだ」
「そうですわね…でも、やはり私には務まりませんよ」
「…」
「あ…、別に嫌というわけではないのです。私が第1候補と言うのは光栄なことですし、嬉しいことなのですが…」
光栄なことということは本当に思っている…が!嬉しくはない、死にそうだ…、もしかしたら死のルートに向かっているのかしら…。
「それは分かっている。不安になるのもわかる。まだ決まっていないことなのに、俺の不用意な発言で困らせてしまったようだ…すまない」
不安が顔に出ていたようだ。まぁ、サファイアが思っている不安とは違う不安なのだが、心配してくれたらしい。
「いえ、大丈夫です。謝らないでください。素直に受け止められない、私も悪いのですから…。」
「では、おあいこと言うことで」
「はい、ありがとうございます」
「では、ルビー1人では大変そうなので、失礼する」
颯爽とした雰囲気でサファイアが去るのを笑顔で見送ったが…
ふぁっ…!どっと疲れが…!!!
だ、第1候補だったなんて…!!
運命なのかしら…!?喜べないのだけど…!!
やっぱりシナリオは変えられないのかしら…。