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6.僕の宝物


僕の名前は、ソロン・ルルーシュだ。

今年で13歳となる。

僕は公爵家の跡取り息子である。

そして、実はというと、僕は養子である。


この家の養子となったのは、僕のこの白い髪をきみ悪がった、実の親に捨てられ、そこに通りかかった、今の父と母であるノーマン・ルルーシュ夫妻に拾われたからだ。


2人はまだ、子どもがいなかったので、僕のことを本当の子どものように可愛がって育ててくれた。


僕は2人に感謝し、2人に少しでも恩返しがしたいと、勉学や剣術に励んだ。


2人に可愛がられて毎日が幸せだった。


だけど、ある日、僕にとっての悲劇が起こった。


母、カーネンが子どもを授かったのだ。


父と母は喜び。僕は素直に喜べなかった。


また、捨てられると思ったのだ。

実の親も僕をきみ悪がっていたが、跡取りが必要だと言って、僕を残していた。

弟ができた途端、僕は用済みとなり山に捨てられた。


最初は捨てられたとは思わなかった。

外に出れたことにはしゃぎすぎて、親とはぐれてしまったと思ったのだが、夜になり、朝になり、だんだん気づいていった。

何も食べられず、死にそうになっているところを2人に助けられたのだ。


だが、また捨てられるかもしれない。


2人は僕の髪を綺麗だと言ってくれた。天使のようだと褒めてくれた。だけど、二人の子どもが産まれたら、僕はいる価値があるのだろうか。また、用済みになって捨てられるのではないか。

あの時の恐怖が蘇る。


2人にはとても捨てられたくない。僕から出て行くことが一番ではないかと思った。

だから、父に話に行った。


父は僕の話を聞くと、額にシワを寄せ悩んでいた。


その後、すぐ笑顔になり、

「ソロン、よく話してくれたね。君が悩むだろうなということは、カーネンと一緒に話していたよ。」


「はい。本当に色々貰っていたのに、このようなことを言ってしまって申し訳ありません。」


「いやいや、不安がるのも無理はないよ。だけどね、ソロン、ソロンは僕たちの初めての子どもだよ、出ていくなんて言わないで欲しい」


「え?」

予想外だった。

僕のことを子どもだと、息子だと思っていてくれたことに。


「カーネンも悲しむよ、カーネンが産んだ子ではないけれど、僕たちにとって、君は僕たちの大事な息子なんだ。

最初、君を見た時、天使からの贈り物だと思ったんだ。カーネンだって、この子は私たちの子どもになりたくて舞い降りて来たんだわって言っていたよ」


「だから、出ていくなんて言わないで欲しい、この家にいてくれないか?」


嬉しかった。

また、救われてしまった。

涙が止まらなかった。

溢れるように出てくる。

止めようとしても止まらない。

答えを言わなきゃ。僕はここにいたいですって。

「ゆっくりでいいよ」

優しく言われ背中をさすってくれる父の優しさでもっと泣いてしまう。


「ぼくは…っ…ここにいたいですっ」


「うん、ありがとう、ソロン」


父のその時の優しい嬉しそうな顔は一生忘れないだろう。


その後、臨月を迎えた母に会い。

母は、微笑み優しく頭を撫でてくれた。

「ソロン、あなたの弟か妹か分かりませんが、仲良くしてくれますか?」


「もちろんです、大事な兄弟ですから」


「ふふっありがとう、私たちの天使」

と言って額にキスをしてくれた。

ちょっと恥ずかしかった。


父が羨ましいという目を向けていたことは内緒である。


何日か経ち、母の陣痛が始まった。

母の居る部屋で父と僕はずっと8の字を書くように動き回っていた。


かなり時間が経ったあと、部屋から赤ちゃんの声がした。

父と僕は顔を見合わせ、喜んだ。

侍女が呼びに来て、僕達が飛び込むように部屋に入ると、母が笑顔で迎えてくれた。


「旦那様、ソロン、女の子ですよ」

「可愛らしい女の子だね」


母の腕の中にいる、小さな宝物を覗いた。


可愛い、僕の妹だ。


「あ!ソロン、ちょっと抱っこしてみなさい」

「え!?」

「そうですよ、はい、抱っこしてみて」

「危ないですよ!」

「大丈夫だから」


父と母に押され、僕はそっと妹を抱っこする。

妹は、僕の腕の中ですやすやと眠っている。


「僕らの天使が2人になったね」

「ふふっそうですわね、幸せですわ」


僕は宝物を大事に慎重にと精一杯すぎて、2人の会話は聞こえていなかった。


あれからもう、8年か。

僕もダリアも成長した。まだまだ成長するが、ダリアの成長は、早いと思ってしまう。

この前、赤ちゃんだった気がするのにな。


ダリアと庭を歩いていると、そんなことを思ってしまう。

ダリアは母に似てとても綺麗だ。これからもっと綺麗になっていくだろう。ちょっとやんちゃな所もあるけどそれも魅力の一つだ。


ダリアは僕を慕ってくれて、僕もダリアが大好きだ。


そしていつの日か、婚約者か恋人、ダリアを愛してくれる人が現れるだろう。

その時は兄の僕が、本当にダリアを幸せにしてくれるのかどうかを見定めなければならない。


友人には、「そんなに過保護でいいのか?」と言われているがいいんじゃないかと思う。


まぁ、ダリアが嫌がったらすぐさま辞めるつもりだし、彼女に過保護な者は多いから。


僕一人減ったって、そんなに変わりはないと思うしね。


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