30.なんとかなるさ
「ッツ…誰ですか!ただの少女を…気絶させるなんて!」
「ただの」と言うのは余計だと思うけど……って全然ただの少女じゃない。ヒロインよ?このゲームの主人公。それに貴族が多い学校に入学できる頭よ?ただの少女じゃないわ。ツッコミ所が満載だが赤毛の青年は気絶をして眠っているヒロイン、アリフィアを見て悲しそうに言う。
「うるさいわよ、眠っているのだから静かにして。犯人は貴方じゃない、本当に何を言ってるの…」
「はぁ〜ダリアはノリが悪いなぁ」
「それはどうも。それにしても…」
ヒロインだから目が覚めるのが遅いのかしら?そろそろ目を冷めてもいいんじゃない?先生もすぐ目を覚ますと仰っていたのに…
「…目覚まさないわね」
「ね、ダリアだったらすぐ目を覚ますのに」
「私は、まぁ頑丈ですからって、そんなことはいいのよ!貴方、本当に分かってる?貴方のせいでこうなったのよ?」
「分かってる分かってるよ〜謝らなきゃって思ってるよ」
「そうよ!謝りなさい!絶対に謝りなさい!」
「喧嘩はそこまでにして、どうだ?目を覚ましたか?」
私がロキに言っていたらサファイアが部屋に入ってきた。ロキの生意気な口を聞かれたかもしれない。ロキの顔を見ると青い顔をしている。流石にサファイアに聞かれたら焦るわ。
「目は〜まだ覚ましてませんね…」
「そうか。女なのに力は強いんだな」
まだ誤解をしているのか…。いやサファイアは気づいていてロキをいじっているのか。口元のニヤニヤが隠せてませんよ…
「違いますって私は男です!!」
ロキには、口元のニヤニヤがバレていないらしくロキは一生懸命、サファイアに伝える。
「ははっすまない。いじるのも面白くてな。ちゃんと分かっている」
「ソレナラ、イインデスケド…」
いじられたのが気に入らなかったのかロキはスネてしまった。ロキってスネると大変なのよね。アルナも頭かかえるくらいだし…ま!大変なのは私ほどではないって言ってたから、まだ全然いいらしいんだけど!サファイアと見合わせスネてしまったロキをサファイアと2人で機嫌直しをしていると、慌ただしく扉が開けられた。その方向を見ると息を切らしたルビーがいた。
「ルイ…すみま…!!」
「リーア無事かい?!」
取り乱したようにルビーは私の肩を持つ。こんなルビーは初めて見るけど!少し力が強い!!
「すみません…い、痛いです…」
「あぁごめん!大丈夫かい?」
「大丈夫ですが彼女が…すみません。私の力不足ですわ」
「何故、僕に謝るの?」
「ご友人でしょう?」
「友人だが……僕はリーアの方が……はぁ…まぁ、とにかく無事でよかった」
ルビーは、ホッとしたようで私が座っていた椅子に腰掛けた。そこまで心配をしなくても良かったのに…
「サファイア…ありがとう」
「いや、俺は何も。ロキが助けたんだ」
「そうなのか。ロキもありがとう」
「いえいえ、主を助けるのは当たり前ですから」
先程のスネた顔と違いキリッとした顔…いや、ドヤッとした顔でロキが言う。そこから「アリフィアが気絶したのはロキのせいです」なんて言ったら、さっきの青い顔になるかしら?ふふっこんな意地悪はやめときましょう。
「2人が助けてくださったので私は大丈夫です」
「うん。良かった良かったよ」
やっと安心したらしい。いつものルビーに戻った。
「そう言えば、リラ嬢が心配をしていたよ」
「あら」
「マークスが落ち着かせるのに大変そうだったから行ってごらん。ここは見ておくから」
「分かりましたわ。失礼します」
あ!忘れていたわ。お礼をまだ1回も言ってないわ!
扉をそっと開けると、ルビーが気づいた。
「どうしたの?」
「ルイ…その、心配をしてくださってありがとうございます」
「ふふっいいよ。さ、行っておいで。じゃないと手がつけられなくなるからね」
コクンと頷き、ロキとその場を離れた。
心配をして泣いてるかもしれないと思い急いでリラの元に着くとリラは…暴れていた。
「ダリーを悪者にしようとするなんて!許せない!!」
「リラ!落ち着けって!」
「落ち着けるわけないでしょう!」
「おい!相手が悪いって侯爵家のロイルクスだって言うだろ!喧嘩を売ろうとするな!なぁ、お願いだから落ち着けって」
わぁ…これはこれは……以前マークスのお喋りで大変だわって思ったけど…これはマークスも大変ね。リラって意外と短気なのね。リラといる時は平穏すぎて気づかなかったわ。
「そうよ。リラ落ち着いて、大丈夫だから」
私が話しかけ私の顔を見るとリラはパァっと明るい顔になった。
「ダリー!良かったわ!心配したのよ!授業の後に令嬢と揉めたって噂が回ってきたし、そこからダリーってば、授業に1回も顔を出さないんだもの!」
「ごめんなさい。でも大丈夫よ。安心して」
「本当に?」
「えぇ本当に。だから師匠をあまり困らしちゃダメよ」
「そう、それなら良かった。ごめんなさい。マークス、もう落ち着いたわ」
「全然いいよ、とりあえず、止まってくれてよかった…」
落ち着いたらマークスが落ち着きがなくなった。マークスは私とロキを交互に見て首を傾げる。
「なぁサファイアは?」
「ルイと一緒よ」
「あぁ、じゃ後で来るかもな」
そう言って「んー」と空を見上げていた。この時のマークスの考えていることは私には分かる。師匠は稽古をしたいって顔をしている。
「師匠、お相手しましょうか?」
「お!やるか!」
「えぇ!よろしくお願いしますわ!」
サファイアと、もしかしたらルビーも来るかもしれないが2人を待っている間、私と師匠は稽古。ロキとリラはお茶をして待っていることにした。
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サファイアには残ってもらい事情を説明してもらった。まぁロゼッタ嬢はダリアとアリフィアに嫉妬をしたから行動をしてしまったらしい。ダリアは無傷でアリフィアは頬に傷を受け気絶をしている。気絶をしたのはロゼッタ嬢じゃないらしいが誰がやったかは苦笑いされて誤魔化された。まぁ、このことは許せないが今はまだ行動をするべきじゃないとサファイアと話した。
「じゃサファイア、リーアのところに行ってもいいよ」
「分かった…」
弟は不服そうな顔をしている。昔から納得がいかないと眉間にシワを寄せる癖は抜けない。
「何?その顔。何かあるの?」
「…いや、また今度に聞く」
アリフィアを見てそう言う。あぁなるほど。
アリフィアとの関係は何なんだって顔をしてる。本当に昔から分かりやすいが、アリフィアとは、ただの友人だ。けど、まぁ面白いから聞かれるのを待っとこう。
「ふふ、わかった。また聞いて」
「じゃあ」と言ってサファイアは部屋から出ていった。部屋は静かになった。やることも特にないので、ぼーっと窓から外を眺めていた。「守れなかったな…」と空を見て呟く。ダリアを守ったのは僕じゃなかった。サファイアだ。僕は何故、彼女の変化に気づけなかったんだろう。彼女が居たのは気づいていたんだ。だが話掛けには行かなかった。幸せそうに話している中に僕が行くのもと気が引けた。でも行けば気づいたかもしれないのに…後悔だ。今回のことは、怪我がなかったから良かったけれど、いつか大怪我をおってしまうこともあるかもしれない。彼女の婚約者が僕じゃなければ……なんて、たまに考えてしまう。考えてしまっても彼女は僕の婚約者だ。そして、ふと何故かサファイアが頭の中に浮かんだ。「うーん、本当に僕はどうしたいんだろう」と、ため息をついて外を眺めた。
「……あの…ごめんなさい…ルビー様ここは?」
後ろから、やっと目を覚ました彼女が不安そうに聞く。
「あぁ、やっと目を覚ましたんだね。保健室だよ。気絶をしたらしくてね。ここに運ばれて眠っていたんだ。大丈夫だったかい?」
「そうなんですか…はい、大丈夫です。ありがとうございます」
「僕じゃないよ。僕は何もしていない」
「でも私を心配してくれたんですよね?ありがとうございます」
彼女は言う。そうなのだが何故かセリフのように聞こえてしまうのは自分だけなのか…。
彼女と話すと楽しい。楽しいのだが、ただ楽しいだけなのだ。僕は、何を言っているのかと自分でも思う。思うが彼女と話していたらあまりにも楽で楽すぎて…。こう違和感を覚えるのはダリアとの会話と全然違うからなのだろう。ダリアも面白い。ダリアは生き生きとしながら話してくれる。
「君が無事でよかった。じゃあ僕は彼女が心配していたから無事だったことを伝えてくるよ」
「え?ここに居てくれるのではないんですか?」
「?いや、彼女が心配をしていたから伝えてくる。まだ痛いの?」
「いえ全然。わかりました…ありがとうございます」
大丈夫そうになった彼女を残して僕は心配をしていた婚約者のところに向かう。と言うか僕が彼女の顔を見たくなった。彼女のことで悩んでいるのだが彼女が笑ってくれれば不思議と僕のこの考えも少しは軽くなるのだ。そして彼女は悩んだ時に言う口癖を借りて言う。「まぁ、なんとかなるかな」って呟いて。
ダリアやサファイアたちの元に向かった。




