23.兄はやっぱり兄なのだ
「兄さ〜ん!帰ってきましたわ!」
兄は気まずそうにこちらを見た。首を傾げたがあることに気づく。サファがいない。
「兄さんサファは?」
「彼はね、帰ったよ」と言われてしまった。
「え?用事があったのかしら?」
「いや違うよ」では何故…?と言おうと思ったら兄に
「サファ君は事情があってね。もう…ダリアとは会えないって先程伝えてくれと言われたよ」
「へ?もう会えないのですか?」
兄は無言で頷く。
「え?一時とかではなく?」
「違うよ、もう会えないんだよ」
「嫌です!なんでなんですか?兄さんサファに何か言ったんですか?サファに何か言ったんですか?」
兄は無言だ。
「兄さん…私の友人に!何を言ったんですか!」
目から涙が溢れ頬をつたう。小粒だった涙はいつの間にか大粒となって溢れてくる。
「すまない。それは言えない…がダリア落ち着いて聞いて。君は忘れているのかもしれないが…君は第1王子の婚約者だ。その自覚を持って行動してほしい」
「ですが!サファは…!関係ないでしょう…!」
「いや、関係あるよ。婚約者がいる身の君が他の男と会ってるなんて世間での印象は悪くなる。君は大丈夫かもしれないが…ルビー王子は?それに会っていたサファ君は?どうなるか、わからないでしょ?」
「……この先どうなるのか、わからないからこそ慎重に考えて行動をしてほしい。ダリア…お願いだから…(もう失いたくないんだよ)」
最後、兄が何かを言ったが小声すぎて聞こえなかった。
「ダリアごめんね。サファ君は大事な友人で僕からも仲良くしてほしい…と数分前に言ったのに」
兄さんの言っていることは正しい。だけど兄さんのせいで大事なサファを失ったというのはおかしい。私が軽率だったのだ。昔は気をつけていたんだが……この頃、気が緩みすぎていたらしい。いや、待てよ…まだ失ってはないのでは…?私に…私に
「私に…婚約者がいなければサファと友人でいれる?」
「!?!?何!?言ってるの?!?」
「「!?!?」」
思ったことが口から出てしまったらしい。
兄さんとアルナは唖然としている。ヤメノ…ではなくなっているロキはお腹を抱えて笑っている。でも、サファは失いたくないのよ。ずっと一緒にいたいのよ……ずっと一緒に…?あら…もしかして私…
「サファのこと好きなのね…」
「は!?なんで!?!?」
そうなるの!?とソロン兄さんは珍しく大きな声を出した。アルナとロキは先程と同様…いや、ロキの方が笑う声が大きくなった。
「でも、そうじゃない?だってずっと一緒にいたいのよ?これって好きってことじゃないの?」
「いやいやダリア…ダメだよ?」
「えぇそうです。ルビー様がおられますのに」
「そうそう。ルビー様がいるというのに…それはダメだと思うよ」
「でもサファが好きなんだもんn…グォフォッ……い、痛てぇ」
うわぁ…痛そう。兄さんとアルナが同時にロキに腹パンチをお見舞していた。気が合いすぎて怖い怖い。だが、兄さんたちが言っているのは本当に正しい。私にはルイがいる。ルイを裏切るなんて…考えたくない。学園に入ったら…裏切られるかもしれない。でも私は慣れている。構わないし覚悟はできている。
そうね…忘れましょう。
「冗談ですわ。冗談。だからさっきの冗談は忘れてください。ごめんなさい」
「ダリア…」
なんでそんなに悲しそうな顔を皆するの?ロキ貴方、笑いなさいよ。なんで…なんで…
「お嬢様…どうぞ」
アルナは私とお揃いのハンカチを渡してくれた。あぁ、また泣いたのね。ごめんなさい。
「ごめんね、ダリア」
私の頭を撫でながら兄さんは謝ってきた。
兄さんは悪くないわ…誰も悪くないわ……
でも、涙は止まらなかった。止めることが出来ないくらい彼との別れが…彼ともう会うことの出来ない辛さが…止められない感情が涙から出ていく。
前も大切だとは思っていたけどまさか自分がサファに恋をしていたなんて…ロキが「今日くらいは思いっきり泣け」なんて言うから私は、泣きたくないのに一日中泣いた。兄やアルナ、ロキは私の傍にずっと居てくれた。
兄は悲しそうな顔をしながら、私のそばに居てくれた。そんなにずっといなくてもいいのにと思ったが過保護な兄なので離れることはなかった…兄はやっぱり私の兄なのだ。
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外はいつの間にか雨が降っていた。
俺は今から…これまでのことを…兄に謝りに行く。
「…ルビー」
扉を開けるといつも通りの笑顔のルビーがいた。
「ん?なんで泣いてるの」
「いやこれはどうでもいい」
「そう…で、何?」
「ルビーすまなかった。そのダリーが…」
「あ、やっと気づいたの?」
「やっぱ気づいてたか」
くすくすと兄は笑って言った。
「怒らないのか?」
「んー妬くことはあったけど怒りはしないよ」
どこかで妬いていたのか……
「そうか、すまない」
「あーうん、そんな謝らなくてもいいと思うんだけど何?何かあったの?」
「いや、何も無い。部屋に帰る」
「…そう」
俺の謝罪はあっさりと終わった。兄は婚約者だもんな…この前、ダリアの顔が赤かった理由も兄から教えてもらった。あんなに最初…嫌がっていたが今はお似合いなんじゃないか。
俺は彼女の幸せを願おう。兄ならきっと幸せにしてくれる。大丈夫だ。俺の兄なのだから。
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弟が自分の気持ちに気づいたみたいだ。だが、相手が悪かった。弟の想い人は僕の婚約者だった。
この前…婚約者のリーアは僕の部屋から去った後、サファイアに見遅れて行くところをちょうど窓から見ていた。そしたら驚いた。リーアが弟といることに驚いたのではなく…弟の幸せそうな…悲しそうな顔をしているのを見てかなり驚いた。ポーカーフェイスすぎて顔から表情が読み取れない弟だがあの時は誰が見ても分かる顔をしていた。普段、共にすごしている僕とジョイア、父上に母上なら分かるだろうが…あの時の顔は本当に誰が見てもわかる愛しい人を見るような顔をしていた。
「さて、どうするかな…」
僕は弟もリーアも、とても大事だ。
2人の幸せを願ってる…けど
「どちらが幸せになれるかな」
これからの事を考えると少し気が重い。




