22.兄とのお出かけ…
久しぶりに兄とのお出かけだ。
つい先日、アルナにかなり怒られしょげていた私を見て兄が「久しぶりにお出かけしようか」と提案をしてくれたのだ。
兄とどこに出かけるかは聞いてはいないのだが楽しみだ。
「お嬢様落ち着いてください。落ち着きがありませんよ?」
「あ、はーい」
「はーいではありません。はい、ですよ」
「すみません」
アルナがこの前から厳しくなっていった。
理由は私でも分かってる。あれは…サファイア様にぶつかったときは本当に焦った。
「ヤメノ笑ってないで手を動かしてください」
「わ分かりました、でも…ふは」
アルナから報告というか愚痴られたのだろう。ヤメノは私を見る度に笑うのを我慢している。そろそろ笑わなくてもいいのでは?もう数日経ったわよ…。
「はぁ面白いですね。お嬢様って」
とヤメノは落ち着きを取り戻して髪を結ってくれる。
「はい、完璧ですよ」
「ありがとう、アルナ、ヤメノ」
さぁ!遊びだぁー!ソロン兄さんの所に向かおう。と思ったら扉がノックされた。兄さんが来たらしい。
「準備出来た?」
「えぇもちろんですわ」
「ふふっ今日も可愛いね」
「でたよ、ブラコン」とボソッとヤメノが言ったのは聞こえない振りをした。ソロン兄さんに聞こえたら怖い怖いいいい兄さんに聞こえてたみたいだ。だがヤメノとソロン兄さんはニコッと笑って喧嘩はすることはなかったので良かったが注意を…
「ソロン様、申し訳ありません。ヤメノ、私語は慎みなさい」
とアルナ先輩に小言を言われていた。流石…先輩!
ヤメノと私ってアルナに凄い迷惑かけてるよね、きっと…よし!あまり迷惑かけないように頑張ろう…!
「ソロン兄さん!今日はどちらへお出かけなさるの?」
「それは行ってからのお楽しみ」
とエスコートをされながら馬車に乗った。
アルナとヤメノも私の付き人として、来てくれる。ただ服を着替えているので、たぶん街とかに行くのだろう。どんな街なのかしら〜楽しみだわ。
街に着いた。街は私たちがお忍びで行く街だった。お忍びで行く街でかなり人とも交流がある。兄さんにここによく来ることがバレてしまう…!
「兄さん、どうしてここを?」
「何だか落ち着くだろう、僕たまに息抜きでここに来るんだ」
ナイショだよと言ってウインクをされた。我が兄…可愛すぎます。
「あ!兄さん!落ち着く場所ならありますよ!案内してあげます」
「え?本当?」
「えぇ!参りましょう!」
と、兄さんの手を取りあの場所へ駆け出した。
あの場所に着くとそこにはサファがいた。
「サファだわ、サファだわ〜!」
「え?」
ダリアはアルナについ先日注意されたことを忘れ、サファに飛びついた。
「ダリー久しぶり」
「えぇ!お久しぶり!サファ」
私を見てサファは喜んだ顔を見せたが一瞬で顔色が青くなった。「?」と首を傾げると後ろから寒気が…。
「ダリア…その子は?」
「あ、えっと友だちのサファです」
「そう、サファくん。はじめまして。兄のソロンです。」
と兄は笑顔を向けたが兄の笑顔はいつも通りではなく寒さを伴う笑顔だった。
「は、はじめまして。サファです。ダリーとはここでたまに話をしたりしてます」
「そうなのか、この子は友人が少ないから友人ができることは良いことだ。ありがとう、これからもよろしくね」
あぁ、兄さん!認めてくださったのね、笑顔が暖かいわ!
「じゃ、少しだけサファくんと話したいから、アルナと…ヤメノと買い物でも行っておいで」
「え、あ…はい!行ってきます」
大丈夫かしら?サファじんわりだけど汗をかいていたわ。でも、兄さんが私の友人に悪いことすることなんてないのだからきっと大丈夫よね!
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ダリーの兄とふたりきりになった。
というかダリーは何人兄妹なんだ?ロキさんもいるし姉もいただろう。首を傾げていると
「何故、貴方様がここにいらっしゃるのですか?」
「?」
「いや、とぼけないでください。サファイア様」
は?こいつ今、サファイアって言ったか?
俺の心を読んだかのように、ダリーの兄は続ける。
「わかりますよ。普通に。分からないのは私の妹くらいですが」
「そうなのか?完璧だと思ったんだが」
「いえ、普通にわかります。それにお名前もサファなんて、貴族のものだったりしたらすぐに分かりますよ。」
「でも、ダリーは…ダリーは貴族なのか?」
「え……もしかしてご存知なかったのですか…?」
ダリー…が貴族。先程この兄はダリーのことをダリアと呼んでいた。そう言えばダリア・ルルーシュの兄の名前はソロン・ルルーシュだった………………
「ダリーはダリア・ルルーシュだったのか…」
「すみません。ご存知だと思ってました」
「いや、構わない。ダリーがダリアであったら兄の婚約者だ。俺とここで会っていることが知れればまずいな」
「そうですね、まずいですね」
はぁなんてことだ。まさか似ていると思ったが本人だったなんて。身分差ではあるがダリーに婚約者になってもらおうと思ったのに……決意して数日過ごしていたのだが無駄だったか。あ…まずい……兄は…!ルビーはこのことを知っているのか!?頭がよく回るからもしかして気づいているのでは…!!!
「あぁ、頭が痛い」
「すみません。私もです…」
「とりあえず俺は帰ることにする。すまないが伝えててほしい――」
「えぇ……かしこまりました。お気をつけて」
「あぁありがとう」
俺はその場を去った。もう彼女とここで会うことはないだろう。先日の出来事から一気に落とされた。ソロンが今日来なければ、今日ダリアたちと会わなければ…俺が行かなければ…
「こんな風にはならなかったのかな」
いや、そう考えても無理だ。会えていたことが、おかしいのだから。帰ったら謝ろう。
ルビーに謝らなくては…。
「なんでだろうな」
涙がなぜか頬をつたう。溢れてくる思いが消えてくれない。彼女が好きだ。彼女の隣に居たかった。でも、叶わない。気づくのも…遅かった。
「ははっ初恋は叶わないって誰かがそういえば言ってたな」
ジョイアだったか恋バナ好きの使用人たちだったかもう忘れたが…城への帰り道、サファイアは1人涙を目いっぱいに溜めながら走ってその場を去った。




