2.これは走馬灯?
魔女か…。それもそうね。魔女だわ。前世の記憶を活かしすぎた。あの女みたいに頭が良くなかったわ。だから殺されたの愛した人に。取られたの愛した人を。
でも、もしかしたら愛した人に殺してもらえた私は幸せものなのかしら。
出来れば普通の幸せがよかったのだけれども。
ふぅ、これで良かった。良かったのよ。私ってどうしようもないもの。
そう考えれば転生させてくれた神様は、とても心が広い方なのね。天国に行ったら会えるかしら。…天国は無理か。私の人生で考えれば行ける場所は地獄かしら。まぁ、良いわ。貴族の令嬢も頑張れたもの、きっと頑張れるわ。
…それより、死んだ後ってこんな考えられるものかしら、前世の時とは違うわ。それに暗いわ。ふふっ私、一人だけの世界ね。
走馬灯だって見る気、満々だったのに。走馬灯すら流れないじゃない。まぁ、見たって気分がいいものじゃないけれども。あぁ、でも、あの子には会いたかったわ。見れるならあの子と過ごした日々だけ見れればいいかしら。あの子は、元気に過ごしているかしら。婚約者が決まってから、会っていないものね。もう、忘れてるかもしれないわ。悲しくなるからやめておきましょう。
…いや、おかしいわ。何がおかしいって?
今、名前が呼ばれてることよ。そして、明るいの。
なんで?なんで?おかしいじゃない
「私は死んだのよ!!!」
「…じょさま!お嬢様!いつまで寝ていらっしゃるのですか?!寝ぼけたことまで言って!」
「え、アルナなぜ…?」
私の目の前には、当たり前のように侍女のアルナがいた。綺麗な茶色の髪と目を持っていて。毛先が揃ったショートカットの。そう、前世でもとても、お世話になった人。
いや、分からない。分からないわ。私は死んだのよ。アルナだって…私のせいで、死んだのよ。私のせいで。
「え、何故って…はぁ、お嬢様、寝すぎです。」
アルナが目の前にいる。この世界は走馬灯なのかしら、こんな立体的な走馬灯を皆見ているのね。これは、辛いわ。
「…おはよう、アルナ。ごめんなさい。」
「おはようございます。お嬢様。珍しく素直ですね?熱でもありますか?」
アルナはそう言って、私の額に手を添えた。
アルナは生きているように暖かいのね。不思議ね。
「大丈夫よ、ごめんなさい。」
「謝ることではありませんよ。主人の体調は私たちにとっての一大事ですから。」
「そうね。ありがとう。本当にありがとう」
「妙にしおらしいというか。本当に大丈夫ですか?」
「えぇ!もちろんよ!貴方に会えてとても元気が出たわ!」
「そうですか?昨日もお会いしたのに?」
「えぇ!…え?昨日も会った…?」
おかしい、起きたばっかりだからかしら…。
悩みすぎていると、アルナから、怪訝な目を向けられていることに気づき。
「えぇ、会いましたよ?今日はお嬢様は、本当に具合が悪いんですね。」
「わ!悪くなんてないわよ!」
そう言って、アルナは、私を無理やりベットに戻し
「ゆっくりおやすみなさいませ。」
「ちょ、アルナ!!待ちなさ…い」
バタンと扉が閉まられてしまった。
手荒いわ。とても手荒い。あぁ、アルナだな。アルナは、手荒いけど、優しいのよ。私の性格的に、無理やりでもしないと言う事聞かないって知ってるものね。
アルナには本当に申し訳ない。私についてこなければ、結婚なんて未来もあったのに、私のために学園にまで、付いて行ってくれて……でも、おかしいわね。これは、本当に走馬灯なの?昨日が、ある走馬灯なんて不思議ね。この調子じゃ明日も来て、上に行くまでにかなりかかってしまうわ。走馬灯って、短時間だったと思うのだけど、分からないわ。
それに、アルナが若かったのもおかしい、失礼だが。いや、おかしくないのか走馬灯なのだから。彼女、死ぬ時何歳だったかしら、たしか、私の3歳上だから18歳だったかしら。ん?あれ、私の手ちっちゃくない?
バッと起き上がり、鏡の前に行くと。
「な、なんだとぉぉぉぉ!」
そこに映ったのは…7歳の時の私、ダリア・ルルーシュであった。