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#25 二人は部屋を借りる

「素泊まり一泊。二人だ。一部屋で頼む」


「大人ひとりと子供ひとりね。900ギルだ」


 ジャラジャラジャラ、と。小銭を机に置く。


「ちょうどだな。これが鍵だ。番号はそこに書いてある」


 店主が粗末なプレートを下げた鍵をエアハルトに向けた。軽く礼を言いながらそれを受け取る。


「私子供じゃないのに」


「大丈夫だ。17歳なら子供扱いされても問題ないし、あと見た目的にも問題ない」


「それ、どういう意味?」


「……そのままの意味だ」


 ちょっともう! エアったらひどい! ルカがプンスコプンスコ怒りを露わにするが、その様子もまた子供っぽい。

 おかげさまでエアハルトは笑いをこらえるので必死だった。


「次言ったら何しようかな……」


「さて、俺は何をされちゃうんでしょうか」


「ちょっと、ナメてるわね! 絶対、ぜーったいに何かやって私が立派なオトナなこと認めさせてあげるんだから!」


 ついにこらえきれず、ハハハッと笑いながらエアハルトはルカの頭をなでた。「こんなことされたって、許してあげないんだから……」などと言うルカだが、若干頬を膨らませこそしていたが、怒りは落ち着いたようだった。

 ……これで落ち着くところも、また子供らしいな。とは、とてもエアハルトには言えそうもない。


「さて、この部屋だな」


 そう騒いでいるうちに、ついたようだった。ドアのプレートには214、鍵のタグにも214と。

 鍵穴に差し込んでちょっとひねるとガチャリと音がする。


「さて、ここが部屋だ」


 エアハルトがルカの顔を見て様子を確認し、ドアを開く。


「うおおお……お…………お……お?」


「まあ、こういう町の宿屋、特にこういう安いところはこんなもんだ。まあ、目的の町ではもっといい部屋用意してやるから、今日はこれでガマンな」


「ううん、全然大丈夫だよ!」


「さてと……」


 ドサドサッ、ゴンッザンッ、バサッ、


「えっ」


「ん? どうした?」


「なにそれ」


 何もない空間から唐突に現れたそれらを見て、ルカが唖然とする。


「なにって、見ての通り荷物だ」


 大量の物の山となったそれを見て、エアハルトの言葉を聞いて、ルカは更に唖然とする。


「量もヤバイし、てか今までそれどこにあったの?」


「んー、なんていうか、異空間?」


「うわあ、見事な規格外」


「規格外って……別に今までにも見せたろうが、ほら、移動中にお前に渡した金属塊とか、それからメシの肉とか」


「えっ? あっ……」


 そうだ、よくよく考えてみれば今までそういうタイミングでエアハルトはどこからともなく物を出していた。

 てっきりカバンがなにかから取り出してるのかと思ったけど。


「すごい……」


「まあ、これは簡単な魔法だぞ。《格納コンテナ》っつって、使用中は自分の魔力の一部が使えなくなる代わりに異空間に物を詰め込むことができる。ルカはまた総魔力量が少ないから使うとフラフラになりかねないけど、そのうちまた教えてやる」


「うん!」


 エアハルトはしゃがみながら、置いた荷物を簡単に整理する。


「さて、荷物も置いたことだし、そろそろ行くか」


「……どこに?」


「どこってお前、お腹減ってないのか?」


「あっ……」


 ペタッペタッ、自分のお腹に手を当てて、ルカがハッとする。


「空いてる! 空いてる!」


「よし、それじゃあ何か飯でも食いに行くか、昼飯」


「うんっ!」






「へいらっしゃい!」

 

 エアハルトが暖簾をくぐると、威勢のいい男の声がした。

 町の通りの中で、ルカが直感で選んだ食事処。木製の床と、木製の机、イス。壁は下半分が木製で、上は白色だった。


「すいません、二人です」


「どうぞ、空いてる席に適当に座ってください」


 ルカの手を引いて、エアハルトが隅っこの席に座る。ルカはその対面に。

 なかなか感じのいい店だった。


「はい、これメニューね」


「ありがとうございます」


 ちょっと男勝りな感じの女性が二人のもとにやってきた。


「ふうん、兄さんと嬢ちゃんで、一緒に旅行かい?」


「まあ、そんなもんです」


「いったいどこまで?」


「かなり向こうではあるんですが、農業都市の方まで」


「へえ、それはよかったね、嬢ちゃん。あそこはいいとこだってよく聞くよ、楽しんでおいで」


「うん!」


 機嫌が良さそうに女性は厨房の方へと向かった。


「そういえば、魚はミリアに食わしてもらったのか?」


「うん」


「どんなのだった?」


「焼いてた」


「焼き魚か……塩焼きか? 照り焼きか?」


「シオ……テリ……?」


 首をコテッと傾ける。


「ああ、わからないか。うーん、それじゃあ今日は焼き魚以外を頼んでみるか。そうすれば被りはしないだろう」


 ピッ、ピッ、ピッとエアハルトがメニューを指差す。


「この煮魚ってやつ、あるいは天ぷらってやつもあるな、好きなのを選んでいいぞ。竜田揚げっていうのもあるみたいだし」


「うーん、うーん、どれにしよう……」


「まあ、好きなだけ悩むといい」


「はいっ、お冷ここに置いておくね」


 いつの間にやら女性がお盆に乗せてグラスを持ってきてくれていた。


「ああ、ありがとうございます」


「今日は煮魚にピッタリのイイ魚が入ってるよ、オススメはそれだね」


「……らしいぞ、ルカ」


「うん、お姉さんありがとうございます!」


「いいのいいの、私はただお客さんにうまいもんを食べてもらいたいだけだからさ。決まったらまた呼んでくれ」


 ひらひらひらっと女性は手を振りながら戻っていった。


「楽しそうな人だったな」


「うん、なんかカッコよかった」


「それで、決まったか?」


「うん! 煮魚にするの!」


「そうかそうか……んじゃ、メニュー見せてくれ。俺もちゃちゃっと決めちまうから」


 ルカから紙を受け取り、内容をザッと見る。さっきはルカに説明するために簡単に見たが、改めて見てみるといろんなメニューがあるんだな。


「そうだな、それならこれにするか」


 パサッと紙を机に置き、エアハルトは厨房に向いた。


「すみませーん」


「はーいっ、少々お待ち下さい!」

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