夜空
僕は冬の夜が好きだ。
昼は子供たちが競うように遊んでいた公園のブランコが、夜には誰にも見向きもされず一人風に揺れ寂しさを訴える。
缶コーヒを右手にそんな寂しいブランコに寄り添って、何を考えるわけでもなく唯無意味に時間が過ぎるのを待つ、そんな時間が僕は好きだ。
初めは湯気の上がっていた暖かかったコーヒーも今では冬の夜の冷気に晒されて冷たくなり、厚手のジャンバーのポケットに入れた左手までもが冷たくなり始めた頃、ふと、上を見上げとそこには木々に縁どられた夜空が広がっていた。
夜空の色はバケツ一杯青色の水に、一欠片の墨を溶かしたような色をしている。
溶け出た墨がバケツに漂い、一定の濃さでは無いのと同じように夜空もよく見ると色の濃さが一定ではない。
ずっと見ているとだんだんと、夜空がこちらに近づいてきているのか、それとも僕が近づいているのか、どちらかはわからないけれど、僕と夜空の距離が近づいているように感じる。ずっと見ていると飲み込まれそうになる。
だが、星という目印が僕を地上に繋ぎ止めている。
小犬座(Canis Minor )のフロキオン、大犬座(Canis Major )のシリウス、オリオン座(Orion)のベテルギウス、この三つの星からなる