ホテル:少女
狭いワンルームの部屋のほとんどを占める程の大きさのレースのついたベットがある。
先程、食事をすませたあたしは身を投げるようにしてベットへ倒れ込んだ。
「データアップデート、カンリョウ、カンリョウ、プラリネ、ホメテ、ホメテ」
高めの少年を機械化したような声が部屋に響き渡る。
リッスン(ここでは自立式音声会話装置)がアップデートを完了したみたいね。だけどあたしは褒めてあげない。
なぜなら、さっき喧嘩したから。
だって、行きたくもない教会へ行けって言うんだもの。
先週だって食事のバランスを考えて食べろーなんて言ってきたし……カロリーメイトが一番効率がいいの!
謝るまで絶対に口聞いてあげないんだから。あたしはリッスンに背を向けてふかふかのベットで寝ることにした、が
「プラリネ、ゴメンネ、ゴメンネ」
と、意外にもリッスンがあたしに謝罪してきた。
いつもは「プラリネ、オヤスミ」って言ってくるくせに。
今日はどうしてかすごく素直だった。
だけど、あたしはまだ話さない。どうしてかは分からなかった。
なぜだろう……ここ最近でこういった事態が多いような気がして……どうしてあたしはリッスンと話さないの……
その間もリッスンは「ゴメンネ」と、電子音で謝っている。
あたしは手に持っている機械(この国には存在しない高性能携帯端末)で今の気持ちを検索してみた。
『好意の表れ』画面にはそう表示された。
好意? あたしが機械のリッスンに恋をしてる? バカバカしい、あたしは孤高の天才発明家だし、友達だってあたしは要らない、必要ない。必要ない……? ならどうしてあたしはリッスンを作ったの? やっぱり友達が欲しいから……? 分からない、分からないよ……
続いて「好意」と検索をした。
『好きだ、と思っていること。また、ずっと一緒にいたいと思えること』
そう表示された。
確かにリッスンとは一緒にいたいけど……好き、とかじゃないよ。
「どうしてリッスンはそんなに優しいの?」
理解できない問題を自分の中に残しておくほど私は寛大じゃないしマヌケじゃない。解けない問題を解決するまで考え続ける。
「プラリネ、トモダチ、ダカラ、ヤサシイ」
ふと、あたしはリッスンと喧嘩していたことを思い出した。
少しリッスンの表情が気になって寝返りを打ってみた。
リッスンの声がする機械の画面には二人が手を繋いでいるシルエットが表示されていた。これはあたしとリッスンが友達だ、そう言う表現なのかな……
その画面を見ていると胸がドキドキして熱くなった。もっとリッスンと居たい。もっともっと近くで居たい。自分の感情が抑えられないくらいリッスンが欲しい。
これが恋……あたしやっぱりリッスンのことがす__バァーーーン!!
え? 何? 何今の音? 銃声? 発砲!? どうしてどうして!?
恋の熱でオーバーヒートしたあたしには冷静に働く脳の回路は残って居ないのか、寝巻きのまま部屋を飛び出して階段を大急ぎで駆け下りた。