表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
-Pieris japonica-  作者: 水谷 愉徒
発展する国と衰退する国
9/13

ホテル:少女

狭いワンルームの部屋のほとんどを占める程の大きさのレースのついたベットがある。

先程、食事をすませたあたしは身を投げるようにしてベットへ倒れ込んだ。

「データアップデート、カンリョウ、カンリョウ、プラリネ、ホメテ、ホメテ」

高めの少年を機械化したような声が部屋に響き渡る。

リッスン(ここでは自立式音声会話装置)がアップデートを完了したみたいね。だけどあたしは褒めてあげない。

なぜなら、さっき喧嘩したから。

だって、行きたくもない教会へ行けって言うんだもの。

先週だって食事のバランスを考えて食べろーなんて言ってきたし……カロリーメイトが一番効率がいいの!

謝るまで絶対に口聞いてあげないんだから。あたしはリッスンに背を向けてふかふかのベットで寝ることにした、が

「プラリネ、ゴメンネ、ゴメンネ」

と、意外にもリッスンがあたしに謝罪してきた。

いつもは「プラリネ、オヤスミ」って言ってくるくせに。

今日はどうしてかすごく素直だった。

だけど、あたしはまだ話さない。どうしてかは分からなかった。

なぜだろう……ここ最近でこういった事態が多いような気がして……どうしてあたしはリッスンと話さないの……

その間もリッスンは「ゴメンネ」と、電子音で謝っている。

あたしは手に持っている機械(この国には存在しない高性能携帯端末)で今の気持ちを検索してみた。

『好意の表れ』画面にはそう表示された。

好意? あたしが機械のリッスンに恋をしてる? バカバカしい、あたしは孤高の天才発明家だし、友達だってあたしは要らない、必要ない。必要ない……? ならどうしてあたしはリッスンを作ったの? やっぱり友達が欲しいから……? 分からない、分からないよ……

続いて「好意」と検索をした。

『好きだ、と思っていること。また、ずっと一緒にいたいと思えること』

そう表示された。

確かにリッスンとは一緒にいたいけど……好き、とかじゃないよ。

「どうしてリッスンはそんなに優しいの?」

理解できない問題を自分の中に残しておくほど私は寛大じゃないしマヌケじゃない。解けない問題を解決するまで考え続ける。

「プラリネ、トモダチ、ダカラ、ヤサシイ」

ふと、あたしはリッスンと喧嘩していたことを思い出した。

少しリッスンの表情が気になって寝返りを打ってみた。

リッスンの声がする機械の画面には二人が手を繋いでいるシルエットが表示されていた。これはあたしとリッスンが友達だ、そう言う表現なのかな……

その画面を見ていると胸がドキドキして熱くなった。もっとリッスンと居たい。もっともっと近くで居たい。自分の感情が抑えられないくらいリッスンが欲しい。

これが恋……あたしやっぱりリッスンのことがす__バァーーーン!!

え? 何? 何今の音? 銃声? 発砲!? どうしてどうして!?

恋の熱でオーバーヒートしたあたしには冷静に働く脳の回路は残って居ないのか、寝巻きのまま部屋を飛び出して階段を大急ぎで駆け下りた。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ