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-Pieris japonica-  作者: 水谷 愉徒
発展する国と衰退する国
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クルマ:スパー

「……遅いな」

自分一人しかいないクルマに中で独り言を喋る。

スパーがホテルに入ってから随分と時間が経ったように感じられた。

ふと、自分の左手に付いている時計を確認すると、スパーがホテルに入ってから30分も経っていた。一体彼女はあの中でなにをしているんだろうか……まさか蛮族に襲われたり!……はしないだろうな、門番の人も安全だと言っていたし。自分なりに色々と思考を凝らして考えて見た。

結果、今僕がやっておくべきことは不慮の事態に備えての武器の整備と言う結論に思考がたどり着いた。

実は四人乗りのこのクルマにはいろんな武器が隠されているのである。

まず最初に、僕は自分の右太ももに装着しているホルスター(この場合、ハンドタイプの銃をしまっておく器具)から銀色に輝くリボルバータイプのハンドガンを取り出した。

このハンドガンには色々思い出があったことを思い出す。このハンドガンで何人の人の命を救い、奪って来たのだろうか。今となってはわからない。考えるだけ無駄だろう、と僕は作業の手を動かし始めた。シリンダーとシリンダーに入っていた薬莢を一度取り出し、それが入っていた穴を細い棒の先に湿った紙をつけたモノで中をひとつひとつ綺麗に掃除していく。

「あんまり汚れてないな、よかった」

これは心から出た声だ。このハンドガンは自分の生死を共に切り抜けて来た相棒なのだから。

次に、ハンドガンのインナーバレルの掃除に取り掛かった。インナーバレルとは発射される弾が通る道のようなもので、バレルの長さによって集弾性が変わるのだ。インナーバレルの掃除を怠っていると弾詰まりが起きたり暴発したりする。ここぞと言う局面で弾詰まりなどしていては生き残れない。自分を叱咤しながら作業に根を入れていく。

僕は自分のハンドガンに銃弾の火力を上げる自作の弾丸を使用していて、半固形物のものがよく漏れていることがある。そのため、インナーバレルは念入りに掃除した。

こうして作業を始めて40分くらいは経過しただろうが、まだスパーはなにをしているのだろうか。

そして、作業は終盤に差し掛かって来た。残すはトリガーとハンマーの調整だ。トリガーは大体予想がつくだろう。そう、銃の引き金だ。これの調整が出来ていなければ話にならない。トリガーが緩んでいたりすると誤射や事故の原因となり得る。一方、ハンマーも同じである。ハンマーとはリボルバータイプによく見られるリボルバーの後ろに付いているヤツだ。これを引いて打つことにより、シリンダー内の銃弾の中の雷管と呼ばれる発火機構が刺激され弾が発射される。僕が使うこのハンドガンが一般的なシングルアクション(ハンマーと引き金が連動しておらず、ハンマーを引いてから引き金を引かなければ弾が発射されない仕組み)なのでハンマーの調整も不可欠なのである。

ちなみにだが、一応護身用のためにスパーに持たせている銃もリボルバータイプのハンドガンなのだが、僕のとは違いダブルアクション(ハンマーと引き金が連動しておりハンマーを引かずとも引き金を引くのと同時にハンマーが引かれる仕組みになっている)で稼働する仕組みになっていたりする。

色々考えながら掃除しているうちに銃の整備が終わってしまった。しかしスパーは一向に帰って来る気配がない。

「はぁー、しょうがないなー。 お姫様は僕がお迎えに上がらなきゃ……」

そう言って僕は先ほど整備していたハンドガンのパーツを元通りの形に戻してホルスターに収納し、クルマを出てホテルへ向かった。


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