そして始まるプロローグ
『人生はままならない』なんていうのは、世の常であり、今更問い直すまでもなく当たり前のことだと、俺は思う。
なぜなら、『人生が思い通りになる』なんて人は、未来を予知する力を持っている所謂超能力者や、魔法使いに違いないから。
もしこの世に、1度も挫折をしていない人や、成功するのが当たり前の人がいるならば、「ここはあなたが生きるべき世界ではないので、どうぞファンタジーな世界にでも行ってください」と言いたい。
しかし、こんな事を思いながらも、人生に思い通りになって欲しいと願ってしまうのは、止めることが出来ない。
何も、お金持ちになりたいとか、大統領になりたい、世界を征服したい、などとは言わない。ただ、普通で平凡で、一般的な幸せが欲しい。
俺はそんな事を、眼前の『両親の入っている棺』を見つめながら思っていた。
それは、よくあるような交通事故だ。両親と共に行った久しぶりの外食の帰り道。赤信号を無視した車が突っ込んできた。
寸前に、母さんが突き飛ばしてくれたおかげで、俺は無事だったが、両親は避けることも出来ずに、車にはね飛ばされた。当たりどころが悪かったのか、即死だったらしい。
加害者はすぐさま捕まったと聞いたが、そんなことはなんの慰めにもならない。
警察官の立会いの下、面会をした時に「謝罪も慰謝料もいらないから、両親を返してくれ」と、拳を震わせながら怒鳴り散らしたことは微かに覚えている。
簡素な葬式が終わる頃になって、やっと両親が亡くなったことを実感できたが、立ち直れるかどうかは別だ。
周りで、親戚が遺産の相続や、俺の身柄の押し付け合いをする声を聞き流しながら、俺は暫く棺の前から動くことができなかった。
それが今となっては過ぎ去った過去の出来事。高校二年生の秋の、これからも続くと思っていた、平凡な幸せが崩れ去った日のことであった。