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八着目 「スク水解放!新の能力!」

「二人とも、これを見てください」


透子はそう言うとスク水から一枚の電子メディアを取り出した。


「SDカード、かしら?」

「どうしたのよ、それ」

「リアが私を突き飛ばした時に一緒に私に預けれくれたみたい。たぶん、リアのことだから敵の情報を分析してくれたんじゃないかと」

「あのぼろぼろの身体で……」

「真美さん、ここにパソコンって」

「ここにはないわ。私の家に行けばあるけれど」

「今から行ってもいいでしょうか?」

「そうね、でも二人とも一度お家に帰ってからいらっしゃい。ご家族の人も心配すると思うわ。夜にこっそり集まりましょう。それに、私も身体を戻すのに少し時間が掛かるのよ」


真美は少し背伸びをして小さな身体をアピールする。

状況が分からない今、急ぐのは早計かもしれない。

まずは体勢を整え、情報を整理するのが得策だ。


「それなら仕方ないわね。透子もそれで大丈夫?」

「リアのことが心配だけれど、仕方ないね。それにリアは大丈夫な気がするの」

「奇遇ね。私もなんだか大丈夫な気がするわ。透子はなんだかんだで大丈夫そう」

「二人ともありがとう。それじゃあまた後で連絡するわね」


三人は一度別れ、支度を整えた。

何事もなかった、普段の日常のように家に帰り、ご飯、風呂を済ませる。

しかし、心の中はリアを取り戻すことしか考えていなかった。

夜も更けた頃、こっそり家を抜け出し、真美の家に急ぐ。


「二人ともいらっしゃい。入って入って」

「「おじゃましまーす」」


出来るだけ小声で言った二人だったが、真美が


「大丈夫わよ。ウチは今私一人だけだから」

「もしかして一人暮らしですか?」

「いいえ、お父さんと二人暮らしですが、出張が多いもので」

「大変、なんですね」

「もう慣れましたわ。それより早く私の部屋にいらっしゃい」


足早に真美の部屋に行き、透子が持ってきたSDカードを差し、読み込む。

出てきたファイルを開くと中にはこのようなことが書かれていた。



襲ってきた甘美なる花の庭園について手短にまとめる。

敵主要メンバーは今回襲ってきた「ナノカ」「カリン」「アジサイ」の他に後三人いる模様。

恐らくその内の一人がボスだと思われるが、名前や人柄までは現在不明。

敵のアジトについてだが、「アジサイ」の能力で別次元にあることが分かった。

本来干渉できない次元を操ることができる能力者で、こちらからアジトまで行くことはほぼ不可能。

行ける手段としては同系統の能力者とアジトのヒントになるモノが必要と思われる。

しかし幸運なことにどちらもこちらには揃っている。

ピースはさっちんとリア。

時間がないためここまでしか……


「私と、リアがピース?」

「さっちんの能力って空間を泳ぐ攻撃受けないって奴でしょ?それがどう繋がるのかな」

「いえ、それはかなり近いかもしれないわ」

「どういうことですか真美さん?」

「さっちゃんの能力は確かに見た目は空間を泳いで攻撃を受けないように見えるけれど、同じ次元にいるように見えて、別の次元にいるってことじゃないかってことよ。まるで水面に映った月のように、見えるけれど触れない本当は別のところにあるみたいな」

「つまり、さっちんの能力を使えば敵のアジトまで行けるってことですか」

「ええ、ですが今のままでは難しそうね。さっちゃんの能力を引き出してあげなければならないから」

「私の能力を引き出す?」

「簡単に言うとさっちんのスク水には秘められた力があるのよ。それを引き出してあげれば助けに行けるという事よ」

「リアを助けに行くためだったらなんだってするわ!その引き出しだって開けてみる!」


さっちんは身を乗り出し、真美に詰め寄る。

その表情、眼からは本気のモノが伝わってくる。


「ただね、本来はそれってスク水の経験値を積んで能力を開花させていくのよ。付け焼刃でどうにかなるものじゃないのよ」

「そんな、それじゃあリアは……」


うなだれるさっちんの肩を持つ真美。

それを見つめる透子が真美に向かって、


「本来はってことは何かあるってことですよね、真美さん」


と突っ込む。


「透子ちゃんの言う通り、本来そうではない方法もあることにはあるのですが……」

「あるんですか?!もったいぶらないで教えて下さいよ!」

「それをしてしまうと、二度とスク水が着れなくなってしまうかもしれません」

「二度と」

「スク水が」

「私の能力でそういう薬が作れます。一時的に能力を飛躍的に高めてくれるものが。しかし、その反動として、使用者の身体からスク水力を削っていきます。もし仮に持っているスク水力がなくなってしまうと、能力を発揮できなくなってしまいます。それでも……」

「やるわ」


即答であった。

さっちんは自らの身体のことよりも友だちであるリアのことを優先した。

これはさっちんがリアを思うが故の心からの発言である。

当初真美はさっちんの発言次第では自分が、とも考えていたが、あまりにも即答。

そして熱意に満ち溢れている眼を見て、さっちんの決意をそのまま汲みあげた。


「さっちん」

「透子、私たち友だちだよね」

「うん」

「じゃあそれだけでいいよね」

「うん」

「真美さんそれってすぐ作れますか?」

「いくつか保管してあるものがあるから、すぐにでも投与できるわ」

「それじゃあいつでも行けますね。後はそのアジトについてからどういう行動をするかの計画を」


さっちんの能力を得てして、アジトがどうなっているかは分からない。

到着したら敵が目の前に待ち構えているかもしれないし、どこぞのダンジョンみたいになっているかもしれない。

臨機応変な対応が求められるが、ある程度動きを決めておけば、いざという時に焦らなくて済む。


「それでもう一つのピースのリアっていうのは」

「恐らく、能力を得たさっちゃんが目印にするモノがリアちゃん、という事だと思う。次元っていうと多すぎて分からなさすぎるから、今敵のアジトにいるさっちんを目標にすれば、アジトに向かうことができるというわけじゃないかな」

「それなら簡単ね!リアとは学校でもずっと近くにいたんだから、あの子の空気だけでもどこにいるか見つけてあげるわ!」

「なんだか今日はさっちんがすごく頼もしいな」


ふふふっと透子が笑う。つられて真美も笑う。


「何よそれー。いつもは頼もしくないってわけ?」

「そうは言ってないよー」


笑うことで少し気持ちが解れた。

こういうことができるのがさっちんなんだなと透子は思った。


「それじゃあ投薬を始めるわね。一応何かあったときのために予備も渡しておくわよ」

「ありがとう真美さん」


投薬を始める。

身体が熱い。全身の毛が逆立ち、血管が躍動し、神経が光るようだ。

それが数十秒続くと、次第に身体は落ち着きを取り戻して来た。


「どう、さっちん?」

「ふふふ……」

「??」

「ふははは!透子、真美さん、手を繋いで!リアを見つけたわよ!」


二人の手を取りさっちんは能力を解放する。

瞬時に三人の姿は消え、部屋には沈黙をPCの光が照らしていた。

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