五着目「学校への来訪スク水幼女」
東雲 真美 (しののめ まみ)
誕生日 5月20日 12才 小学6年生
身長 157cm 体重 45kg
おっとりみんなのお姉さん
スク水は新型スクール水着
能力:身体をスライムへと変化させる
触手を出したり、液状化したりとスライム同等の力を得る。
また身体を切り離し、別行動を取らせることもできるなど応用力は広い。
「あそこで間違いない?」
「ああ、間違えはないみてえだ」
二人のスク水幼女が遠方より学校を覗いている。
スマホを操作しながら、地図と照らし合わせている。
「それで目標はこの、なんだ、名前なげえなこいつ」
「あら、ナノカ知らないの?この子のこと」
「知ってるに決まってるだろ。ただフルネームは知らなかったな。なげえ」
「こんな辺鄙なところまで、何を考えているんでしょうかね」
「そんなこと知るかよ。ひとまず、人の目が少なくなるまで待つか」
「ナノカにしては真面目なのねえ?」
「うるせえよカリン。気分の問題だ」
二人は一度その場を離れ、機会を窺うことにした。
「やっと授業終わったわねー。もう疲れたわよー」
「さっちん。授業中寝てた」
「ね、寝てないわよ!目を瞑って机に伏してただけなんだから」
「さっちん、それ寝てるよ……」
いつも通り三人は放課後、一緒になっていた。
今日は透子が真美のテストを受けられる日だ。
花壇へ向かう道すがら、透子がリアに話しかける。
「でもさ、こうやってどんどん強くなってるけど、本当に敵が襲ってくることなんてあるのかな?」
「この学校には真美さんが結界を張っているみたい。だから敵も迂闊に来れない」
「そうよ。真美さんは凄いんだから!」
「さっちんっていつから真美さんと知り合いなの?」
「そう、あれは雨降る六月のことよ……」
さっちんの昔話を聞くこと三分、花壇が見えてきた。
すでに真美さんが待っている様子だった。
「真美さんお待たせー!」
「さっちゃん。全然待ってないわよー。授業、お疲れ様」
「真美さん、今日はよろしくお願いします」
「透子ちゃんもリアちゃんもお疲れ様」
「うん。お疲れ様」
「それじゃあさっそく始めちゃいましょうか。準備は良い?」
真美が今回のテストについての説明を行った。
前回は透子が覚醒し始めのころだったのでハンデを付けていたが、今回はそのハンデを抜きにするようだ。
「それじゃあルールはこうね。前回同様、一発でも私に攻撃を当てることができたら透子ちゃんの勝ちで、ハンデはなしとします。つまり私も攻撃します」
「ハンデはなし。透子が成長した証拠ね」
「よし!気合入れなきゃ!」
「シート起動。仮想空間発動」
リアの能力によって四人が仮想空間へと送られる。
透子はスイッチを入れていた。肉体的にも精神的にも成長を遂げている。
真美はというといつも通り、ゆるやかな雰囲気を醸し出していた。
「それじゃあいつでも来ていいわよー」
「さっそく行かせて頂きます!」
眼にも止まらぬスピードとはこのことだろう。
一瞬で間を詰めた透子は真美に向かって拳を放つ、が、よけ……られた?
真美のミゾオチ目掛けて放ったはずの拳は空を切っていた。
しかし、真美は動かず、目の前にいる。
真美の腹だけが大きな穴を空け、そこから透子の腕に粘液が垂れた。
「私の能力は……」
透子は瞬時に身を引き、体勢を整える。
真美は空を空けた腹を粘液で戻していた。
「私の能力は、スライム、とでも言っておきましょうか。透子ちゃん、スライムって知ってる?」
「ええ、ゲームなどで」
「スライムって弱いって思われがちだけれど、実は凄く強いのよー」
そういうと粘性の触手を伸ばし、透子を捕まえようとする。
そこまで早さはないが数が多い。数十本の触手を同時に伸ばしてくる。
だが、難なくそれを避ける透子に真美は少し驚いていた。
「まあ、凄いのね透子ちゃん」
「まだまだやれますよ!」
動きに余裕を残している透子ではあるが、少し悩んでいた。
先ほど真美の粘液に触れた腕が少々痺れる。
つまりこの触手は恐らく『触れてはダメなもの』ということだ。
スライムというと、モノによっては毒性があるものもいるという。
それにその粘性の身体に取り込まれると脱出は難しく、消化されてしまうらしい。
「迂闊には触れないかな……」
一定の距離を保ちつつ、様子を窺う透子。
真美は一歩も動かずに、触手での攻撃を続ける。
「トーコ、苦戦してる?」
「逃げてばっかりで大丈夫かしら」
このままでは埒があかないと踏んだ透子は一気にスピードを上げ、触手から距離を取る。
腰を据え、真美目掛けて、強烈な一撃を放つ。
放たれた衝撃波により、触手ははじけ飛び、真美は体勢を崩した。
透子はそこに踏み込み、放つ。
しかし真美はそれをも避ける。身体を素早く軟化させ、液状になることで下に回避した。
今度は真美が距離を取る。液状の身体を元に形成しなおす。
「今のは危なかったわー。貰っちゃうところでした」
「さすが真美さんです」
すぐさま同じように距離を取った透子は立ち止まり、一度だけ深呼吸をした。
「また同じ手は通用しないわよー」
先ほどよりも一回り大きな触手を何本も透子に向かわせる。
それが透子に当たろうかとしたとき、透子は目を見開き、構えた。
身体から衝撃波を発し、巨大な触手を吹き飛ばす。だが破壊まではできなかったようで……
「さっきよりも大きくしたから簡単には壊れないわよーって、あら?」
いや、触手には切り刻まれたような後があり、その切り口は塞がらず、地に伏して溶けてしまった。
これには真美も驚いたようで、困惑の色を隠せない。
「あらあら、これは」
「これは私の初めての技…」
透子の両腕には衝撃波が舞い踊り続けていた。
それは全てを切り刻む嵐のように見えた。
『舞い踊る嵐龍』
透子は先ほどと同じように真美に向かって突っ込む。
しかしスピードは段違いに上がっていた。
そのまま、踏み込み真美目掛けて一撃放った。
まみは透子の攻撃に反応こそできたものの、避けることはおろか、防ぐことさえもできなかった。
粘性の身体は切り刻まれ、周囲に飛び散った。
「防御はさせない!」
「勝負あり」
リアは仮想空間を解き、四人は戻ってきた。
仮想空間での出来事とはいえ、真美には疲弊の色が見える。
「合格よ、透子ちゃん。おめでとう」
「や、やったよお。ありがとうございますー」
透子は膝をつき、脱力する。
すかさずリアとさっちんが肩を貸す。
「透子やったじゃない。これで真美さんにも認められたってことよ」
「トーコ、頑張った」
「ありがとう二人とも。なんか安心したら力抜けちゃって」
「ふふふ、少し休むといいわ。リアちゃんの能力下とはいえ精神力は使うものだから」
勧められ、透子たちはベンチに座り、しばし休憩をする。
透子は自分が成長したことを実感するとともに、認められたことを素直に喜んでいた。
またリアとさっちんも同様に喜びを噛み締めていた。
しかし、喜ぶのも束の間。
それを憎憎しそうに遠見しているスク水幼女が二人。
「カリン、あいつだよなあ?あの幸せそうにボケこいている奴ら」
「ええ、間違いないわ。あの子よ。邪魔するスク水幼女は排除していいらしいわよ」
「言われなくてもそうするよ!!」
いち早く異変に気がついたのは真美で、その次はリアであった。
学校を囲んでいた結界が消えたのだ。壊されたのではない。
「結界が……」
真美は結界の消失理由及び侵入者の捜索を行う。
リアはすぐさまシートを起動し、情報を集め始めたが、その原因の二人は目の前に現れた。
一人目のボーイッシュなスク水幼女が煙を巻き上げながら透子たちの方へ突っ込んできた。
「おうおう、鳩が豆鉄砲食らったような顔してどうしたんだ?ご自慢の結界がなくなって慌ててんのか?あんなもの俺の能力に掛かればどうってことなかったぜ」
「急にお邪魔してごめんあそばせ。この子、口が悪いけれど気にしないでね?」
「口が悪いとはなんだよ。いつもこんな感じだよ」
「それで突然で悪いけれど、その子を渡してくれないかなーって思って来たのよ」
二人目のウェーブの掛かった金髪長髪のスク水幼女はリアを指差した。
「ちょっと何よあなたたち。名乗りもしないで急にリアを渡せだなんて何よ」
「私はカリン。そしてこっちはナノカ。これで良いかしら?」
「え、あ、うん。よろしく」
「さっちん、そこはちょっと違うと思う……」
「甘美なる花の庭園……」
真美が穏やかな顔を少し崩し、呟く。
「おっ、私たちのこと知っているのか。なら話は早いな」
「真美さん。甘美なる花の庭園って?」
「スク水狩りを行う集団のことよ。強いスク水を求めて、スク水幼女を襲うの。ただ、ここでその名を聞くなんて正直冗談みたいだわ」
苦笑いを含みつつ、真美は三人を自分の後ろに下がらせる。
いつ攻撃されてもいいように気を張りつめる。
「まあ、簡単に言うとだな。ウチのリーダーがそいつが必要だというもんだから連れて来いってさ」
「普段ならスク水だけ剥ぎ取って終わりなんだけど、今回は幼女ごと連れて来いって言われてるのよねー」
「そんなこと知りません!」
真美が後ろに下がらせていた透子とさっちんが前に出る。
「私たちの友達を渡すわけにはいきません!」
「そうだそうだ!それになんかあなたたち悪者っぽいし」
「なんだあ。おとなしくしてたら何もしねーのによ」
「またナノカったら。おとなしくしててもするくせに」
「二人とも下がって!」
真美が声を掛けるのが先か、ナノカが透子の顔面に一発。
しかし、それを手で防ぎ、ナノカを睨みつける。
「精々俺を楽しませてくれよ!」
透子の腕を掴み、投げ飛ばす。そこに空かさず蹴りを加えるが、受身を取った透子のカウンターが決まる。
きれいに決まったカウンターはナノカのみぞおちに入り、吐血する。
「いいねぇ。良いカウンターだ。気に入ったよお前」
「別にあなたに気に入られてもうれしくもありません」
「そうつれないこというなよ!」
カウンターを決められたナノカであったが執拗に近接格闘を行う。
透子に取っては一番の得意分野であるため、難なく攻撃を交わし反撃をする。
「あらあら、ナノカったらあんなにやられて大丈夫かしらぁ」
「そういうあなたは他人の心配をしている暇かしら?」
真美は透子とナノカが戦闘を始めた瞬間にカリンを触手で捕らえた。
四肢を封じられ、身動きの取れないカリンは何をするでもなく透子とナノカの戦闘を見ていた。
「リアちゃんとさっちゃんは透子ちゃんに何かあったらフォローをお願い。今の所は大丈夫みたいだけれど」
「透子めっちゃすごいじゃん!」
「トーコ、優勢。だけれども」
「そう。二人ともスク水の能力を使っていない。油断は禁物ね」
透子の優勢は圧倒的だった。ナノカの攻撃をすべて見切り、反撃を繰り返している。
ナノカのパフォーマンスも下がって来ているのが目に見えて分かってきたころ、ナノカが足を止めた。
「一発いっぱつがかなりはやい、そしておもい。俺でなきゃ立っていられないほどになあ」
「もう降参したらどう。いくら能力を使っていないとはいえ、その身体じゃあ……」
「ふふふ、ははは、何を言ってるんだ?いまからじゃないか。おいカリン待たせたなあ!」
「待ちくたびれて寝てしまうところですよ」
「いったい何を……?」
ナノカはカリンの方へ手を掲げる。
『状態交換』
「ふぅー。それじゃあ今からは本気でいかせてもらうぜ」
「な、そんな……」
身体中傷だらけだったナノカの身体に現在、傷は見受けられない。
が、代わりに拘束されていたカリンの身体は全身が傷だらけでさっきまでのナノカのようだった。
「これが俺の能力状態交換さ。今のは俺のダメージをすべてカリンに移した」
「どうして!?仲間でしょ!?」
透子が思わず耳を防ぎたくなるような声で叫ぶ。
「ああ、うるせえなあ。これが俺らのやり方なんだよ」
「そ、うよ……これ、が私たちの、や、り方」
話すのがやっとだと思いきや、カリンはその後に高笑いを始めた。
先ほどの透子の叫びにも劣らないほどの声で。
「痛い!痛い!痛い!痛い!ああ、ナノカはこんな痛みを感じていたのね!こんな……ふふふ、ぞくぞくしちゃうわ……」
奇妙すぎる光景に、思わずさっちんが叫ぶ。
「リア!これどうなっているの!」
「恐らく、カリンの能力はダメージを負うごとに戦闘力が増す。つまり、二人の能力相性はかなり良い」
「あーもうどうすんのよこれー!」
カリンは真美の拘束を解き破り、長い髪を逆立てながら真美に近寄る。
あまりの物々しさに、さっちんが一歩下がる。
「リアちゃん!透子ちゃんと二人でそちらの相手をお願い。能力を分析し、打開の鍵を探して頂戴。リアちゃんならできるわ。さっちゃんは私のフォローを」
「リア、トーコを助ける」
「はい、真美さん任せてください!」
能力を発動し、仕切りなおした敵二人。
戦局は少し傾き、打開の鍵を一から探す四人。
透子は本当のスク水幼女の力を知ることになる。
漸くバトルっぽくなってきましたね。
もうしばらくこのバトルっぽさは続くんじゃ。
次回!第六着目
「学校への来訪スク水幼女Ⅱ」