三着目「美化委員長はスライムスク水幼女?!」
遠山 さち (とおやま さち)
誕生日 9月27日 10才 小学5年生
身長 139cm 体重 36kg
アホの子。通称さっちん
スク水は新型スクール水着(白パイピング)
能力:みすたーいんびじぶる(命名さっちん)
発動中は全ての攻撃が無効。空間を泳げる。最強の防御スク水の一つ。
学級委員、風紀委員、学校には様々な委員がある。
どれも学校のため、生徒のための活動であるが積極的に行う人はそう多くはないだろう。
そんな委員の一つに美化委員というものがある。
学校の環境や衛生を良くすることを目的とした委員で、花壇の管理やゴミの分別等を行う。
これももれなく人気はあまりない。掃除より遊びが優先の子ども達には仕方がないことだろう。
ここに花壇に佇む幼女というより少女が一人。
毎日欠かさず花壇に水をやりに来る。
花壇は彼女の手で綺麗に掃除されており、彼女の真面目さが伺える。
「お花さん今日も綺麗だねー。たくさん栄養取って大きくなってねー」
和やかな話口から、彼女のおっとりとした性格が伝わってくる。
髪は肩下のストレート、身長は少し高めだろうか。そして眼鏡を掛けている。
制服はパリパリにアイロン掛けされており、靴もピカピカに磨いてある。
しかし、何やらおかしい。
見た目ではない。彼女の行動が、だ。
彼女はジョウロを持たずに手から水を出し、花にあげている。
それに花壇の隅に生えている雑草を彼女の身体から伸びている触手のようなものが吸収している。
いや雑草だけではない。どこからか飛んできたゴミもその触手が捕まえ、吸収している。
失礼、見た目も少し、いや、大幅におかしかった。
しかし、彼女のそのおっとりとした雰囲気がそれを感じさせなかったのだ。
水やりと掃除を終え、ちょうど朝の予鈴がなると彼女は教室へと戻って行った。
少しばかりの心を残して。
「ねえ、リア。転校してきたのはいいけれど。どうしてそんなに私にくっつくのかなぁ?」
「気にしないでいい。それよりもリアが転校してきた理由。知りたくない?」
「それはもちろん知りたいけれど、一回離れてくれないかなぁ?」
リアの転校初日、面識があるという事でリアは透子の隣の席になった。
そして今はお昼休み。
定番のクラスの子からの質問攻めをすり替えたロリアに任せ、屋上で二人で話をしている。
「リアが転校してきた理由は、トーコを守るため」
「私を守るって、この前家に来たときはそんなこと言ってなかったよね?」
「あの後考えたの。これからよろしく」
「守ってくれるのは嬉しいけれど、それっていつまでなの?」
「ずっと」
「ずっとって、私そこまで子どもじゃないんだから……」
「大丈夫。大人になっても守る」
「いや、そういう意味じゃ……」
話しをしていると突然「あんたたち!!」と声が聞こえた。
屋上のドアが開いた音がしなかったので不意を突かれた二人は身体をビクつかせた。
「二人して何話してるの。私も混ぜなさいよ!」
「遠山さん!」
「誰?」
「出たわね転校生!ってあれ、あなた教室にいなかったっけ?」
「えーっとね遠山さん、実は……」
透子は遠山さんにリアのことを話した。
リア自身話されることに抵抗は示していなかったので、金曜日、あの後に起こったことを。
「それじゃああなたもスク水幼女ってわけね!よろしくね!えーっと名前はなんだったっけ?」
「ツェツィーリアーノ・フォン・ブラウンシュタイン=ベルヴォルグ。気軽にツェツィーリアーノ・フォン・ブラウンシュタイン=ベルヴォルグって呼んで」
「ツェツィーリアーノ・フォン・ブラウンシュタイン=ベルヴォルグちゃんね!よろしく!ツェツィーリアーノ・フォン・ブラウンシュタイン=ベルヴォルグちゃんはスク水幼女としてどれくらいなのかな?」
「遠山さん、それギャグだから……リアって呼んであげて……」
「えっ!そうなの!?」
「トーコ。この子バカ?」
「誰がバカよ!」
「あーもうめちゃくちゃだよー」
三人のスク水幼女が出会い、透子の周りは非日常ながらも賑やかになった。
スク水幼女ではあってもその前に幼い子ども。仲が良くなるのは早い。
ほんの数日の出来事ではあったが、透子にとっては長い、出来事でもあった。
透子も少しずつではあるが、その非日常に順応してきた。ほんの少しではあるが。
「じゃあリアって呼ぶわね。それに透子ね」
「この前はちゃん付けだったのに」
「だって!引き分けたからね!」
「ああ、はい。じゃあそれで」
「それに私のことは『さっちん』って呼びなさい!二人して名前呼びってずるいじゃない」
「さちじゃなくてさっちんなの?」
「昔からあだ名で呼ばれてみたかったのよねー」
「はいはい、さっちん」
「よろしい。よし、それじゃあ透子。良いこと教えてあげる」
「良いこと?」
「この学校でスク水幼女になったからには挨拶をしておいた方が良い人がいるわ」
「何そのヤンキー漫画みたいな展開」
「そんなにおっかない人じゃないわよ。むしろ優しい人よ」
「それはリアも気になる」
「それじゃあ今日の放課後、校舎横の花壇に集合ね!」
放課後。集合とは言われたものの、全員同じクラスな訳で、全員足踏みを揃え花壇へと向かった。
道すがらリアが遠山さんもとい、さっちんをからかっていたようで、それが透子には微笑ましく思えた。
「さあついたわ!ここが花壇よ!」
「ここに誰かいるの?」
「あれ、いつもならここに。あっいたいた!」
さちが駆け寄った先には眼鏡を掛けた生徒が一人。
さちの高いテンションを受け止めるかのように話を聞いてあげている。
「真美さん!この子たちがね、新しいスク水幼女なの!」
「あらー可愛らしい子たちねー」
おっとりとした目で見つめられ、透子は思わずどきっとしてしまった。
綺麗な大人なお姉さんって印象を受けた。
「あの、始めまして。五年生の一透子と言います」
「同じく五年の、リアと言う」
「透子ちゃんに、リアちゃんね。よろしくね」
「二人とも私の親友なんだから!」
「リアはさっちんの親友になった覚えはない」
「せっかく親友って言ってあげてるのにー!」
リアとさっちんが傍で言い合いをしていると、真美は透子に近寄ってきた。
「透子ちゃんね。この間は大変だったわね。急に覚醒しちゃうものだから」
「いえ、私もあの時は何がなんだか。でもリアが助けてくれたみたいで、なんとか」
「それはよかったわ。良いお友達を持ったわね」
「友達、はい。そうですね」
リアとさっちんに目を向ける。友達。そう、友達。
「それじゃあ私も自己紹介をしておくわね。私は篠崎真美。六年生よ。そして美化委員長を務めているわ」
「六年生。ひとつ先輩でしたか」
「ああ、畏まらなくていいのよ。普段通りでいていいわー」
「ええ、はい」
「それに加えてスク水幼女。まあ、幼女って言うほどの体型でもないけれど」
そう言われ透子は真美の身体を見る。
身長は同じ年の子よりは高い、それに、出るとこがかなり出ている。
透子の断崖と比べると、おっとやめておこう。
「そろそろスク水幼女も卒業ってところね」
「いえ、そんなことは」
「冗談よ。それで、たぶんさっちゃんが私のところに二人を連れてきたのと関係があると思うけど、私の役割を教えてあげるわ」
「役割?」
「ええ、役割。私にはこの学校のスク水幼女を、というよりこの学校を守る役割があるわ」
「守るって、他のスク水幼女からですか?」
「それもそうね。たまにこの学校にスク水を奪いに来るスク水幼女もいるから戦ったりもしているわ」
「真美さんが戦うんですか?」
「こう見えて私、強いのよ」
おほほと上品な笑いをする真美さんの後ろではリアとさっちんが落ち着いたようでこちらの話に加わろうとしていた。
「それで、本来の役割ですけどね。スク水幼女を悪用しようとする人から、皆を守るためよ」
「悪用って……」
「スク水幼女の力は計り知れないわ。それこそ一人で街ひとつを壊滅できるほど。それを集めて、自分たちの思う通りにしようとする悪い人達がいるのよ」
「そんなことって、でもニュースとかにはなってないし」
「透子、スク水幼女っていうのは裏の存在よ。表になんかでやしないわ」
「さっちん。そうか、そうだよね」
「それでその悪い人たちがこの学校を襲ってこないように。襲ってきた時は撃退できるようにするのが私の役割なの。だから、ここにいる限り、あなたたちは私が守るわ」
「大丈夫よ!真美さんすっごく強いんだから!私も強いけどね!」
「頼もしいわ。さすがさっちゃんね」
透子は少し動揺していた。
数日で、こんなことに対して少し耐性はついたと思っていたけれど、またもや話が飛びすぎていて。
動悸を抑えようと胸に手を当て、深呼吸をする。
その手にリアが手を重ねてきた。
「大丈夫」
「リア……」
大丈夫。その一言で、透子の動悸は収まり、息がすっと抜けて行った。
そしてその奥から、燃えるような情があふれ出してきた。
「真美さん!私たちも手伝わせてください!」
「ええ、それはもちろん良いけれど。透子ちゃん最近目覚めたばかりでしょ?少し心配よ」
「大丈夫です!私やれます!」
「うーん。困ったわねえ。それじゃあ……」
真美としてはそれは本意ではなかった。
目覚めたばかりのスク水幼女を手伝わせるほど、現状困っているわけでもなかった。
しかし、透子の熱に少し押されてしまったし、今後この先、助けが必要になるかもしれない。
だから、テストを行うと約束してしまった。
無事テストに合格できれば、真美のお手伝いとして美化委員になるというものであった。
「それなら場所はリアが用意する」
リアはシートを広げ、バーチャル空間を作りだす。
今回はサッカー場。
リアとさっちんは実況席にて二人のバトルを見守る。
「それじゃあルールはこうね。一発でも私に攻撃を当てることができたら透子ちゃんの勝ち。それにハンデとして私はいっさいの攻撃をしません。制限時間は10分」
「分かりました!」
「それじゃあ私の能力は……」
能力を言おうとする真美を透子が遮る。
自信の現れではない。透子としての決意から来るものだった。
「いえ、前情報はなしでお願いします」
「やる気に満ちているみたいね。いいわよ」
実況はさっちん。解説はリアでお届け致します。
「さあ!始まりました!真美選手と透子選手の一騎打ち!10分以内に真美選手に一発でも当てることができれば透子選手の勝ち!できなければ透子選手の負け!リアさんこれをどう見ますか!」
「トーコの瞬発力からすると勝ち目がないわけではない。が、あの人そうとうできる。ってあれまtt……」
「リア解説からお言葉頂きましたところで、いざバトルスタート!!」
開始の宣言がされ、両者睨み合う。
足に力を入れ、いまにも突っ込みそうな透子と相反して力を抜き、ゆらゆらと揺れているような真美。
互いの距離未だ10mほど。だが透子の射程圏内には余裕で入っている。
「だあっ!!」
力をため込んだ足を、膝を、開放する。
力に延ばされた透子の身体は真美めがけt?
トトン
1mすら進まずに止まった。
「あれっ!」
当の透子は困惑し、おっとりした真美でさえも困惑している。
透子はもう一度だけ、踏み込んでみる。
「てやぁっ!」
トトン
30cmと言うところかな。
実況席はというと。
「おおっと、透子選手どうしたものか!全く進んでいません!」
「解説リア、トーコを解析した。トーコ、スク水着ていない」
「なんというアクシデント!透子選手スク水を着ていません!」
真美は警戒を解き、リアはバーチャル空間を解く。
四人は元いた花壇にへと戻った。
「そうだったあー!スク水着てなかったあー!」
「あらあらまあまあ」
「トーコ。どんまい」
「何してるのよ透子!これから私の名実況が始まるところだったのに!」
「迷実況の間違いでは?」
「リアはどうしてそうも私に突っかかってくるのかしら!」
またリアとさっちんが小競り合いをしている最中、膝をついて倒れている透子に真美が近寄る。
「ええっと、そういうこともあるわよ。透子ちゃん」
「真美さん……あの、質問いいですか……」
「ええ、よくってよ」
「スク水幼女って、年がら年じゅうスク水を着ているものなのですか……?」
「他の子はよく知らないけれど、私はいつも制服の下に着てるわね」
「ああ、私も着てるわよ」
「リアも着ている」
透子は膝をついたまま、なおうなだれた。
非日常には耐性がついてきたが、その辺りの羞恥心というかなんというかには耐性というか理解が及ばないらしい。
「みんなおかしいよ。なんでずっと着てるの……」
「大丈夫。トーコ、私が何とかする」
「というか透子、あんたスク水は今どこにあるの?今日授業で着てたスク水はこの前のじゃなっかたわよね?」
「ああ、あれはお母さんに新しく買ってもらったものなの。だから能力があるスク水は今家にある」
「まずはそれを毎日着ることから始めないとね」
「ああ、あぁ、どうやってあのスク水をまたお母さんから借りよう」
「借り……透子ちゃん。そのスク水ってお母さんから借りたの?」
「はい。元々は昔お母さんが使っていたものらしくって。ついこの間私の古いのがなくなったので借りることになって」
「そう。それは気になるわね」
「へ?真美さん何が気になるんですか?」
「そのスク水を透子ちゃんのお母さんが昔使っていたってことは、透子ちゃんのお母さんは元スク水幼女だったかもしれないという仮説が立つわ。でも、スク水幼女には誰もが成れる訳ではないから。そうじゃない可能性もあるから、迂闊に調べられないけれど」
「もしそうだったとしたら?」
「透子ちゃんのルーツを知ることができるわ。それは透子ちゃんに取っても、そのスク水に取っても良いことになるかも。でもまずは透子ちゃんのスク水をもう一度着ないとね」
「あい、そうします……」
少し半ベソをかきながら透子は立ち上がる。
それを心配そうに見つめるリア。しかし、その心配は別のところにあるようにも見えた。
「それじゃあ今日は解散しましょうか。透子ちゃんのテストはいったん保留にします。その間、透子ちゃんは美化委員(仮)」
「美化委員(仮)」
「透子ちゃんのやる気は素直に私の心に響いたわ。だけどテストはまだだから(仮)」
「あ、ありがうございます!」
透子の顔から笑みが零れる。
さっきまでの半ベソはどこにやら。
「それじゃあ解散。気を付けて帰ってねー」
「「「はーい」」」
三人は足並みを揃えて下校する。
その道すがら、またリアがさっちんをからかって遊んでいる。
透子は新しくできたこの非日常が日常になっていくような気がした。
だからこそこれを守りたいと思えるようにもなってきた。
それを守るためにはあのスク水を毎日、と思うと少しだけ憂鬱になる透子なのでした。
ここに花壇に佇む少女が一人。
彼女は物思いに耽り、独り言を口ずさむ。
「もしあのスク水が代々受け継がれているものだとしたら。それにあの能力が本当に語り継がれるあの能力だとしたら」
彼女は夕暮れに染まる空を見上げ、口を一文字に結ぶ。
おっとりとした表情が少しだけ、強気に染まる。
「私も、うかうかしていられないわね」
彼女はランドセルを背負い、花壇を後にし、下校した。
少しばかりの心を残して。
今回はバトルなしのほのぼの回?
透子、さっちん、リアの三人が揃ったところで漸く話が進みます。
というか真美さんの能力発揮する間がなかった!
次回!四着目!
「旧スク、新スク、白スクの集い」