“魔法使い”『獄門院鴒覇』
「あーくん、君に少し頼みがあるんだがいいかな?」
魔女が営む『喫茶向屋』であーのと共にコーヒーを飲みつつ話に花を咲かせていた時だ
殺人鬼にして殺し屋として働く獅弓のが声を掛けてきた
「おう、獅弓の、久しいな。生憎あーのは私とコーヒーを飲んでいるのだ、手短にな」
「獄門院、お前は相変わらずあーくんと一緒にいるんだな」
「当然だな、何を疑問に思うことがある? 私とあーのが仲睦まじいのは皆知っている事だろう?」
「あぁ、そうだな。まぁいい、あーくん、君にお願いがあるんだ」
「なんですか、獅弓さん。ぼくが出来ることならとりあえずやりますよ?」
「そう言ってもらえると有り難い。君は『万華鏡』を知っているな?」
「はい、万華鏡とはよく話しますよ、それがなにか?」
「君が言っている万華鏡は『万華鏡朝陽』だと思うんだが。まぁその姉に頼まれてね、君に会いたいそうだ。会ってくれないかい?」
「万華鏡にお姉さんいるんですね、いいですよ別に。何処に行けばいいんですか?」
「ちょっと待てあーの。お前は本当に万華鏡のの所へ行く気か?」
「そうだけど、なにか問題あるの?」
「万華鏡のは『吸血鬼』だ。そんな所へあーのを行かせるわけにはいかない」
「それの何が問題なの? 獄門院に関係ある?」
「吸血鬼というのは人の血を啜り人の上位に位置する事を役割にしている。はっきり言って万華鏡のはほぼその特性がないとは言え危険な事には変わりはない」
「だから、獄門院にそれの何が関係あるのって聞いてるんだ。行くのはぼくであって、獄門院じゃない」
「私はあーのに危険な目にあってほしくないのだ、分かってくれ」
「悪いけど先にお願いされたのは獅弓さんからなんだし、獄門院のそのお願いは獅弓さんのお願いが終わってから聞いてあげる。
それに、ぼくがどうなっても獄門院には関係ないでしょ?」
何故だ
何故分かってくれないのだ
私はあーのが心配なのに
「……………そこまで心配なら着いていってはどうだ、獄門院。万華鏡には恐らく獄門院も付いてくると念は押してある。どうせ向こうもその腹積もりだろうさ」
「そ、そうか。ならば、着いていってもいいだろうか、あーの?」
「それは獄門院の好きにしたらいいんじゃない? ぼくにどうでもいいよ」
「そうか、ならば私もあーのに着いていくぞ」
何故初めから思い付かなかったのだ
あーのが心配というだけで、こうも頭が回らないというのは私の悪い癖だな
「……………あーくん、確か君には妹が居たはずたね? その妹は何歳くらいだったかな?」
「さぁ、覚えてないです。確か小学校には通ってたと思いますけど、それがなにか?」
「いや、それならば私の勘違いだろう。先日君に似た女の子と出会ったんだが、その子も君と同じで高校生くらいだったからね」
「はぁ、そうですか。アレについては唯一ちゃんの方が詳しいと思いますよ、どうでもいいですけど」
「そうか、まぁそれについては気にしておくとしよう。万華鏡の屋敷なら獄門院、お前は知っているな? あーくんを案内してやってくれ」
「うむ、任せると良い。それではあーの、行くとしようか。デートだ、デート。二人きりのランデブーだぞ」
「それじゃあ獅弓さん、また今度」
「あぁ、気を付けてな」