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“殺人鬼”『篠ノ木獅弓』

『殺人鬼』とは人を殺す役割を持つ人外である

増え過ぎた人を殺人という行為によって調整し、人の数を管理する

“人を殺す鬼”、読んで字の如くの『殺人鬼』

人ではなく鬼である私ではあるけれど、ならば殺す側である私を殺すのは一体何なのだろうか?



そんな、答えのない問いを思い出したように考えながら私『(シノ)木獅弓(ギ シユミ)』は昼過ぎの街を歩く

人外『殺人鬼』であり、殺し屋として生計を立てている私ではあるものの、やはり休日というのは必要だ

仕事でしか人を殺さないと決めたのはいつの事だったか、そんな事はとうの昔に忘れてしまったが(こんなことを言っているが私はまだ二十四歳である)、たまにはこうして予定のない時間を過ごす事も悪くはない


ここは一つ顔馴染みが経営する喫茶店で奴の淹れたコーヒーを飲みながら久々の休みを満喫するのも悪くはない


等と、そんな事を考え喫茶店へと足を進めようとした時だ

仕事用の携帯電話(旧式のガラケー)が震える


「・・・・・もう少し、休みが欲しいな」


ここ一ヶ月ほど、休み無しで働いている私から出た、せめてもの要望である




前述した通り、私の職業は殺し屋である

この御時世、誰かを殺したい、誰かに死んでほしいと望む者は結構いるもので、それで飯を食べている私からすれば大変有難いことではあるが、休みがないというのは私のモチベーションが些か落ちるというものだ

とはいえ、どこの業界も信用が一番である

クチコミと言ってもいい


休みがほしいから仕事を断った、なんて噂が流れてしまえば私の評判はがた落ちだ

そうなれば飯を食う事もままならない

馴染みの喫茶店でコーヒーを飲む事なんてのも、当然出来ない

それは私としては大変困る、一社会人としてあまりに惨めであり、友人や家族からなんて言われるかも想像に難しくない


メールの内容は仕事の依頼と、直接会って詳しい話がしたいという簡単なものである


私は直ぐ様了解を伝えるメールを返信し、指定された住所へと歩を進める

有難いことに、その住所は今いるところからわりと近所のところだった



たどり着いたのはなんの変哲もないタワーマンションだ

強いて欠点をあげるとするならば、顔を会わせたくない知り合いが一人暮らしているという個人的な問題だろうか


無論、そんな事で引き返すような性分でもないのでエントランスで指定された部屋のインターホンを鳴らす


「……………はい、どちら様ですか?」


「ご利用有り難う御座います。ご依頼されて伺いました、『篠ノ木獅弓』、殺し屋をしているモノです。

仕事に関してお話がしたいという事でしたので、こうして訪ねさせていただきました」


「……………開けるので入ってきてください」


「有り難う御座います、それでは失礼いたします」


若い声

いや、ここは幼い声と言った方が正しいだろう

そんな幼い声の持ち主に促される通り、開かれたガラス扉を抜けてエレベーターへと乗り込む

お茶の一つでも出るのだろうかと淡い期待を密かに胸にしまい、部屋の前のインターホンを押した


「……………どうも」


「どうも初めまして、『篠ノ木獅弓』です。ご依頼された『葉守羽澄(ハガミ ハスミ)』さんでよろしかったですか?」


「そうです。あがってください」


予想した通り、出てきたのは小学生程の少年だ

こんな少年が殺しの依頼等、世も末というものであろう


「さてさて、早速ではありますが仕事の話をしてもよろしいですか?」


「……………その前に、聞きたいんだけどさ。僕の依頼でも引き受けてくれるの?」


「えぇ、キッチリと私の方で指定させていただく金額さえご用意出来るのであれば年齢は問いません。赤子から老人まで、それが“人”であるのならば誰であろうと殺してみせましょう」


「そう、ならいい。それで、その金額っていうのはいくら?」


「そうですね。単純に殺しだけならば五百万からの金額で仕事を引き受けております。もちろん、対象の周囲の状況や複数人という話であれば値段の方も変わってきますが。

流石に厳重な警備を潜り抜けて依頼された人物を殺してこい、という依頼でしたら金額の方もそれ相応を値段となります」


殺風景の部屋、というよりも既に誰も住んでいないような部屋で淡々と仕事の話を進める

これは、お茶の一つも期待出来そうにない、残念だ


「なら、“殺人鬼”を殺してほしいっていうのならいくら?」


「……………殺人鬼、ですか?」


「そう、僕のお父さんとお母さんを殺した“殺人鬼”。そいつを殺してよ」

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