妖怪の現代:雪女
《では、今日のニュースを始めます。全国的に酷い大雪になるでしょう。
東京も例年にない大雪になるでしょう。交通網が一部麻痺するおそれがあるので外出する方は十分気をつけてください……》
はぁー、この雪じゃ、明日会社はいけないな、、、明後日はクリスマスかぁ、なんか虚しいなー。
今年は12月24日、東京は1Mを超す大雪に見舞われた。
俺、及川 拓也は元々新潟県出身でこの程度の雪には慣れていた。東京に上京したのは都会の方が色々な仕事があるし面白いんじゃないか。ただそれだけだった。
コンビニ行って、食料買いだめしてくるか、、東京じゃ融雪装置も無いし、この雪じゃ、しばらくは大変になりそうだからな。
ガチャ
アパートの扉を開けた途端に雪が襲いかかってくる。
うぁ、吹雪いてら、ココ本当に東京か?
流石に此れだけ吹雪くと寒いなぁ、、はやくコンビニにいかないとな。
コンビニに着いた俺は缶詰め、レトルト、乾燥食品を大量に買い漁った。
いやぁ、東京はコンビニが何処にでもあるから便利だな、、、ん?
あれ?人が、倒れて、る?
⁉︎
俺は急いで倒れている人に駆け寄って声をかけた。
だ、大丈夫ですかわ!?っと噛んだ!
あの、大丈夫ですか⁉︎
倒れている人は女性だ、そう判断したのは茶色の長い髪が白い雪の中から見えたからだ。服装は白のファー付きのダウンジャケットに白のパンツにヒールも白。
遠目では雪と同化して人かどうかすぐには分からなかった。
ユサユサ
呼び掛けに応えないので揺すって呼び掛けると、彼女は頭を上げ、長い髪の間から顔が覗いた。
目はブルーのカラコン、鼻筋は通っていて、唇は薄いピンク、、、かなり美人だ、、
でも格好からするにホステスだろうか?
何か事件に巻き込まれたのか?いや貧血かも?
俺の頭の中は余計な思考でグルグル渦巻いていた。
さむい。
その言葉で我に帰った。
ああ、そうだ、救急車よびますね!
呼ばなくていい。
じゃあ、病院まで送りますよ!
いい。
じゃあ、、、
あなたの家で少し休ませてくれないかしら。
彼女から発せられた言葉に耳を疑った。
いきなり、知らない人の家に来て休むなんていわれてもなぁ、東京じゃ普通なのか、、
それじゃあ案内して?
彼女は立ち上がり俺の腕に彼女の腕を絡ませてきた。
うえっ?ちょ、、
はやく案内して。
は、はい!
俺は一切の思考を捨て自宅のアパートまで帰ってきた。
あの、狭いけど自由に座って。今暖房入れるから。
ええ、あなた アパートで一人暮らし?寂しいわね。
う、酷いな、確かにそうなんだけど、、、
そうだ、自己紹介してなかった。俺は及川拓也、君は?
私は雪那。
へぇ、セツナか、今時な名前だね。俺なんか拓也だから何処にでもいるし。
そう、拓也て名前、私は好きだけど。
え?あ、ありがとう。今お茶入れるね。
なんか変わった娘だなぁ、歳は20代前半くらいかな?やっぱり、格好からしてホステスかな?
拓也。
うえっ?な、何?
何か手伝おうか?
いや、大丈夫だよ。今持ってくから向こうで待ってて。
そう言って、紅茶とカップヌードルを持っていった。
はい、こんな物しか作れないけどどうぞ、身体があったまるよ。
うん、ありがとう。
ズズー
部屋に麺をすする音だけが響いていた。
な、何か気まずな、、あ、と聞かないといけない事があった。
そお言えば雪那はなんであんな道中に倒れてたの?仕事の帰り?
私、田舎から一人でこの町まで出てきたの。
、、、大好きな人を追って。
途中で疲れて倒れちゃったの。
恋する家出娘ですかぁぁぁ!どうしよう、どうしよう、この場合はどうしたらいんだ?!
あの、、それで彼が見つかるまで暫くココに泊めて貰えないかしら?こう見えて、お料理洗濯は得意なの。お願いします。
三つ指立ててお願いしてくるギャルに驚愕しながら、、、
うん、いいよ。
俺なんていった!?いいよ⁉︎どの口から、、、
1人で悶絶している俺に彼女は眩しいほどの可愛らし笑顔を向けていた。
彼女は伊与部 雪那 22歳 俺と同い年で同じ新潟県から幼馴染みである想い人を訪ねてきたという。
ねぇ拓也!お布団敷けたよ、寝よ?
ちょ、ちょっと一緒にねるの?!
だって、ココ狭いし私は大丈夫だよ?嫌?
いや、そんな事は、、
そして二人で眠る事になった。最初は眠れなかったが、次第に眠気が襲ってきた。
その時、身体に重みを感じ目を覚ました、
俺の身体の上に雪那がのしかかっていた。
泊めてくれたお礼だよ、、、
彼女はそう言って服を脱ぎキスをしてきた。
そして二人は一晩共に寝たのだった。
翌朝、目が覚めると何か美味しそうな匂いが漂っていた。
あっ拓也おはよう、起きた?朝ごはん作ったから食べよ?
ん、おはよう、美味しそうだ〜
って!き、昨日はその、何ていうかゴ、ゴメン!
何が?私から誘ったんだから気にしないで、当たり前だから。
あ、当たり前って、、
ガラガラ
あっ、まだまだ酷い雪だね、1週間くらいは降り続くってニュースで言ってたよ。
ああ、これじゃ、暫くは外に出られないな。
雪那も人探しは無理だしなぁ。
拓也!御飯食べたら外で かまくら作ろう!
かまくら!?
そう言って朝食を食べ終えた俺の手を引き雪の降る中 かまくら 作りがスタートしたのだ。
雪那って外見ギャルなのに子供っぽいな、、昨晩の件は別として、、
流石に二人とも雪国出身なだけあってテキパキと かまくらを仕上げていった。
出来上がると二人とも中に入り寄り添って、用意した七輪に火を点け、家にあった保存用のお餅を焼きながら、オレンジ色に灯る明かりを眺めていた。
ねぇ、拓也はもう新潟に帰らないの?
んー、いつかは帰るかもだけど今は帰らないかな、、面倒だし。
、、、そっか。
彼女はそう言って少し悲しげな顔をした。
それから1週間、雪那との楽しくも甘い日々が過ぎていった。
おっ、雪も止んだし、さっき、上司から電話で明日から会社が再開するから這ってでも来いって。雪那も明日から人探しするのか?
ううん、もうしない。
、、やっぱり俺たちがこういう関係になったからか?だったら俺、ちゃんと責任、、
違うの、最初からもう出会ってたの。
え?どういう事?
私は あなたを、拓也を探しにきたの。
いやまてよ、俺は雪那とあったこともないし、クラスメイトにもいなかったはず、、
ストーカー?!でも雪那なら、、??
そんな事を考えていると雪那はいきなり窓を開けた、窓からは冷たい風と粉雪がキラキラ舞い込んでくる。
私はずっとあなたを見てきた、そしてあなたは毎朝私に話しかけてくれた。
彼女の髪は一瞬で黒くなり身につけている服は白装束に変わった。
子供の頃はよく貴方と雪だるまや かまくら 、、冬になるとよく遊んだわ。
大きくなってからも見えなくなった私に話しかけてくれた。
そう言いながら雪那は窓に吊り下がる氷麗を撫でる。
その時、フラッシュバックのごとく思いだした。そうだ、子供の頃に雪那とよく遊んでいた、ただ周りの子供や親には雪那が見えなくて、冬になるとこの子はおかしいて言われ
たっけ、、
それに自分でも変だと思うけど冬に毎朝、窓に吊り下がる氷麗に おはよう!とか
綺麗だ!て言ってたな。
私は生まれてからずっと貴方と一緒にいたの。冬の間だけ会話が出来てとても嬉しかった、、、貴方は自然を愛する人、そんな貴方を私も愛した。
でも貴方はある日を境に居なくなった何年も、、だから私は全ての力を使って貴方に逢いにきたの。
貴方の部屋にあった雑誌を見たりして貴方に好かれる格好もした、何カ月も貴方の気配を頼りにさまよったりもした、全て貴方に逢うために、、
貴方の魂と永遠に寄り添いたい。
彼女は、雪那は雪女だ。雪女は人の精も魂も吸い取り人に死をもたらす。ばぁちゃんが言う伝承ではそう聞いた。
雪那、俺の魂が欲しいのか?
ええ、欲しいわ愛おしいほどに、、
その目は凍えるように冷たかった。
バッ!
なっ!、拓也!?
その瞬間、俺は雪那に抱きついていた。
俺の魂で良ければ持ってけ、雪那に出逢って懐かしくて安心出来るって思った、都会に居て冷えた心を温めてくれた、、おまえが好きだ。
雪那はふっと笑うと優しく抱き締め返してきた。
拓也、ありがとう、、でも私には貴方の命は奪えない。
そう言う彼女の目からは雪の結晶の様にキラキラ涙が零れ落ちていく。
私は貴方の居ないあの地では生きていけない、自分の命を全て使い切ろうとも貴方に逢いたかった、触れたかった。でももう十分よ、最後に思い出が、、二人の思い出が欲しかったの。
それに貴方は私に心をくれた、私への真心、愛を。
雪那、、
二人はキスをした。
キラキラ粉雪が舞う中で雪那は粉雪の様に散っていった。
ただ一つ俺の手の中に氷麗を残して、、
《今年は例年にない大雪に見舞われましたが
明日の元旦からは晴れるでしょう、、、》
あ、もしもし 母ちゃん?元旦そっちに帰るわ。
え?ロクに連絡もよこさなかったのにどうしたって?
いやなんかさ、たまには地元に帰ろっかなって。ははっ、何もないよ心配しなくても。
あ、後俺の部屋の窓に出来てる氷麗壊さないでね!え?別に〜なんでもないよ。
じゃあ、帰るから!
俺が生まれ育った土地だもんな、
これから毎年冬には必ず帰るからな。
雪那、待ってろよ!