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32.早朝の来訪者
深夜を回ってしばらく経った頃、ようやく寝付けたというのに、明け方頃になって起こされてしまった。
起こしに来たのは、祖母だ。
まだ早いからって断ったんだけど、どうしてもって言うからね――
眠い目をこすりながら、浅沼は祖母の言葉を反芻する。
祖父母は仕事柄、日の出とともに働き始めるからこの時間には既に起きていた。そして仕事に出る準備をしているところで訪問者に出くわした。日の出の時刻、明朝も明朝だ。学生の浅沼はまだまだ寝ている時間なのに、その訪問者はどうしてもと言って譲らないという。
こんな時刻に訪ね来るのは、一体何者か。
「……わかった。すぐに行く」
祖母にはそう返して、浅沼は上体を起こした。
誰かを聞くまでもなく、浅沼にはわかっていた――他には思い当たらないからだ。
しかし、
「…………」
ゆっくりと白んでいきつつある稜線を窓から眺めながら、浅沼はややためらう。
苛立ちや、眠気を差し引いても――なんとなく、彼女らには会いたくない気分だった。




