43/148
18.戦況⑦
いきなり通信機に怒鳴った向枝は、そのまま引き抜いた武器を淀みなく展開し、構えた。
「向枝さん!?」
「白城、武器を出しておいて。合図と同時に、私が射撃した地点へ全力疾走」
冷徹にして端的な指令に、白城は半ば自動的に反応する。左手に携えていた己の武器の鯉口を切り、“だいだら”へ向かって半身になる。
いつでも飛び出せる姿勢を。
だが意識は追いついていない。
「向枝さん、いたっていうのは」
「“恐山の忌み子”よ……どうやら本当に、来ていたようね」
それも、“あっち側”に、と苦々しく言いながらも、武器を手繰る手指に迷いはない。
向枝の武器は、銀製の大弓だ。
畳んだままでも一メートルを超え、展開すれば二メートル近くなる。
つがえる矢は破魔の矢。
射程距離は“認識できる範囲”。
特務として、歴戦を潜り抜けてきた大弓だ。
その銘は、
「霊弓“露陰”。――光となりて穿ちなさい」
放った。




