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16.戦況⑤
“だいだら”が爆発した。
高坂が拳を打ち込んだ一点を中心に、衝撃波が荒れ狂い、暴風と水蒸気で“だいだら”が見えなくなる。
これなら、と白城は拳を握った。
さすが特務。日頃からともに鍛錬しているのだが、それでもこうしてその実力をまざまざと見せつけられれば、足の震える思いがする。
高坂なら。
本当に、神を打倒することもできるのではないか。
だが、結果は思わぬものだった。
「なっ……!」
遠く、戦況を見守っていた白城は息を呑んだ。
煙の中から、ぬっと、まるで何事もなかったかのように“だいだら”が姿を現したのだ。
高坂のタイミングは完璧だったはずだ。“雛罌粟”が無力化され消失していく中を、それを隠れ蓑にして飛び込んだ。
直撃だったはずだ。
だが、“だいだら”は小揺るぎもしなかった。
完全に、防御された……?
言葉にならない白城に対し、しかし向枝は眉根を寄せ、遠くを睨み付けると、
「いや……違う」
つぶやくように、言う。
「どこかにいるはずだ。どこかに――」
眼光鋭く、向枝は“だいだら”を見据え、
「………!」
背から得物を引き抜いた。




