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市子さんは流浪する  作者: FRIDAY
弐:遠く遠く、遠くまで
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13.戦況②

 

 

「なっ――」


 どうして、という思いが白城の腹底に落ち込む。どうしてか。

 “山茶花”は、結界術式の中でもトップクラスのものだ。しかもそれを、50を超える人数で支えていた。

 そんなあっさりと打ち破られるはずがない。

 しかし現実に、目の前で、“山茶花”は崩壊した。

 中央から突き破られるようにして破砕し、光の欠片が千々に散華する。

 あれが、神なのか。

 “山茶花”を、こうも容易く打ち破ることができるのなら、自分ではどうやっても敵わない――


「――妙だ」


 つぶやきが聞こえた。

 高坂だ。

 その声音からは、いささかも覇気が減じてはいない。

 砕け崩れていく“山茶花”を睨みつけていた高坂は、やおら通信機を開放すると、


「聞こえるか? 被害程度を報告しろ」


 聞く。そして、


「……零? 本当にか?」


 眉をひそめた。

 結界術を、あれほどまでに派手に崩落されておいて、パスを繋いでいた術式をあれほど豪快に破砕されておいて、その反動を受けることもなく、被害零?

 被害がない、ということは、胸を撫で下ろしてもいいことではある。

 だが、不可解の感は拭えず。

 むしろ、強まる。

 そんなわけが、ないのだ。

 結界に関わらず、自身の魔力を通した術式を強引に崩されれば、大なり小なりその反動を受ける。

 “山茶花”。第一級の結界系術式。

 なればこそ、術者は――50人超過の作戦部隊は、いっそひとり残らず『大』なる反動を被っていたはずなのだ。

 それが、『幸いにして被害が少なかった』というわけでもなく、『零』だというのであれば、


「介入か……!」


 判断は瞬間だ。


「“山茶花”はあと何度張れる? ――二回か。十分だ」


 マイクに向かって、命ずる。


「作戦を変更する。――総員、総力を以て“だいだら”の退治を敢行せよ!!」


 縛に回していた魔力を、全て攻に転じる。

 それでも、足りるかどうか。


「高坂さん? いったい何が……」


 未だ状況を把握し切れていない白城に、高坂は振り返ることなく応ずる。


「お前も構えておけ――俺たちも出るぞ」


 しゃらん、とどこからともなく引き抜いた錫杖を、鳴らす。


「“彼女”がいる――“恐山の忌み子”が、いる」

 

 


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