11.状況開始
「作戦は二段階だ」
遠く、立ち上がった“だいだら”を見据えつつ、高坂は呑まれかけていた白城に言う。
「え、あ、はい」
「まずはあれをこの土地に縫い付ける――閉じ込める、まあ言い方は何でもいいが、とにかくこの地に留めることが第一条件だ。だが、もしもそれが不可能であると判断されれば――」
肩越しに、白城を見る。
白城と、白城の携えている武器を。
「お前と、その刀――“夕霧”の出番となる。まあ、そうならないのがベストだが、構えておいてくれ」
「はい!」
それを強く握って、白城は力強く返す。それを受けてにやりと笑い、高坂は胸元に仕込んであるマイクから、全部隊に指令を送る。
「総員に告ぐ――これより任務を開始する」
高坂の声音には、不安というものは一切ない。聞く者を鼓舞させる、不思議な響きをもった声だ。
それが、白城を含む全員へ向けて、鳴る。
「手筈は事前に説明した通りだ。――この任務は、ランクこそ高いが、第一種戦闘任務ではない。だから、直接的な危険は、我々にとってはほぼ、ない」
だが、と高坂は続ける。
「軽視してはならない。この任務、我々の背後にいるのは無辜の人々だ。そのことを忘れるな。我々の戦いは、そのためにあるのだから――」
了解、という言葉が返る。
いくつも、いくつも返る。
展開した全員から、返答がある。
そして勿論、白城も、応じる。
了解、と。
その全てを聞いた高坂は、一つ頷き、手を振り上げると、
「任務開始! 状況を開始せよ!!」
袖音を立てて、振り下ろす。
相対が、始まった。




