08.状況④
「天災……ですか」
驚いた表情の白城に、高坂は軽く頷く。
「土地神はなぜ土地神なのかって話さ。要は、その土地を守っている、みたいなもんなんだよ。安定させている、って言えばもっと近い。龍脈上であればもっと顕著なんだが、それでなくとも、安定は必要だ」
「安定、ですか」
「わかりにくければ、そうだな、稲作を考えてみればいい。古い時代には、春先に豊穣の祈祷をやったりしていたっていうのは、知ってるだろ?」
「あ、はい。高校で習いました」
「その祈祷先が、土地神なんだって考えればいい。豊穣は人間の都合だが、稲穂が健やかに育つのは安定だ」
「それなら、その安定が崩れるとすると」
「そう。例えば旱魃になったり、とかな。それが酷いときには、大嵐とか、地震とか、それこそ天災レベルに見舞われる」
そして今回は、と高坂は先を続ける。
「天災レベルが起こるかどうかは、さすがにわからんが、その確率も低くない――だが十中八九起こるであろうことは、まあ、わかると思うが」
高坂の促しに、白城は頷いて応える。
「天候不順……ですよね」
「わかりやすいところではな。他にも、特定生物の大量発生、という現象も考えられる。次代の土地神がすぐに現れるのであれば、それもすぐに収束するんだろうが」
「現れない……のですか? 土地神が死亡した際には、代替わりはすぐに行われているのでしょう?」
白城の疑問に、高坂は渋い顔をした。それがなあ……と。
「前例がないから、わからんのよ」




