07.状況③
「予測?」
「そう。土地神が完全にいなくなる、という状況は、恐らく過去に前例は残っていないので御座ろうが、ごく短期間であれば、ある土地に土地神が不在、という状況も発生し得るので御座るな」
淡々と、白犬は説明する。あァ? とぬいぐるみは、
「ンな瞬間があんのか?」
「あるので御座るよ。なに、実を言うと、これならそこまで珍しいことでは御座らん。俯瞰してみれば、世界のどこかで常に起こっているであろうことで御座るよ」
「まどろっこしいなァおい。つまりなんなんだ」
しびれを切らしたぬいぐるみが再び耳を引っ張り始める前に、白犬はさらっと、
「代替わり、で御座るよ」
「あァ?」
「代替わり。土地神の代替わり、で御座る。本来土地神は、別に神霊妖物に限った話ではなく、むしろ今回からしてそもそも物の怪が土地神となっていることがレアケースなので御座るよ」
「なら……なら、何なんだよ」
「まあ、“長老”で御座るな。屋久島の千年杉などがいい例で御座るし、それでなくても、鹿や、猪、鯰にも御座る。要は自然生物であり――長命ではあっても、寿命はあるので御座るよ。そして寿命があるなれば、代替わりの瞬間も御座る。選定、と言えばまるで誰かが選んでいるようで語弊が御座るが、次代が決まるまでの間で御座るな」
「次代……それがどうやって起こるのかは、まあいいとして。んじゃあ、その間、代替わりまでの間に、何があるっていうんだ?」
ぬいぐるみの問いに、白犬はやや考え、しかしうまい言葉も思いつかなかったようで、
「こう言うとやや過言では御座るが……まあ、天災で御座るな」




