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02.少女
とても古い家だ。
相当に長い間あるのであろう、補修の跡が至る所にあるし、増改築の痕跡も散見される。何より、その家はあまりにも自然に周囲の森に溶け込んでいた。
集落間の了解では、この家もまたとある集落に属していることになってはいるのだが、実のところこの家はその集落から多少離れた位置にあり、周辺は完全に森に囲まれていて、自然の気配がかなり濃い。
そんな家の、庭。
庭といっても別に何かが植えられている、などということは全くない。それどころか、そこは庭らしい手入れなど一切されてはおらず、ただの木々の隙間に生まれた空間、と言われても違和感を覚えないような場所だ。背の低い草花がひしめいている。
そんな庭ともいえない庭に、今は少女がひとり立っていた。
その少女は、年の頃は十歳にもまるで届いていないだろう、六歳かその程度と見られ、和装にその痩身を包んでいた。黒髪は肩口でやや雑に切りそろえられ、飾りげなど一切ない。
そして、顔立ちこそまだ幼く可愛らしいけれども、静かに佇むその雰囲気には、どこか達観したような、老成したものがあった。




