22.神代の物語
神代、つまり神話の時代、生れ出たものは神々だけではなかった。神々の一挙手一投足は、全てが何かを生み出していった。それらはどの存在も、今から見ると神に等しい、けれど神通力の劣る名もなき、役割なきモノたち。
意志を持つモノもいた。意志を持たないモノもいた。特に意志を持たないモノたちは、天道や地脈に影響されやすかった。天道の穏やかなときは潜み、地脈の荒ぶるときは激した。
ところで人もまた、神々から世界を受け継ぎ版図を広めていく。山川草木、道がなければ切り開き、遮るものは焼き払う。そうして力のあるままに世界を広げていく人と、カレらが衝突しないわけがなかった。
意志を持つモノたちは、己を守るために。
意志を持たないモノたちは、人々の敵意を反射して。
長く、長く争いが続いた。
世界が出来上がっていく過程で生まれ出たカレらの中には、人から見れば歪な者たちも多かった。恐ろしく、おぞましく、醜い姿。その威容を無闇に恐れ、恐怖を駆逐するために、人々はカレらを蹂躙する。
それは戦争だった。
のちに朝廷と呼ばれるようになる血族を長と仰いだ人々と。
己の世界を守らんとするカレらと。
初めの頃しばらくは、人よりも神々に、世界に近いカレらの方が、圧倒的に優位だった。カレらは人には扱えない、摩訶不思議な力があった。
ところがあるときから、人々の陣営にもまた超常の力を有する者たちが現れ、趨勢が一挙に逆転した。
数人の、王の側近。彼らは、あたかも神々と等しい力を操り、カレらを蹂躙した。
側近たちは、目に見えない力を行使した。その力はカレらの力を遥かに凌駕し、吐息ひとつで雲を割り、指運だけで山を平らげた。
彼らの力に、カレらは為すすべなく、世界から居場所を失っていった。
日の当たる世界から、深く暗い闇の中へ、カレらは身を潜めていき、人々は己の覇権を固めていった。
人々は、カレらとの戦争を勝利へと導いた王の側近を、畏怖の念を込めてこう呼んだ。
守人、と。




