表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
市子さんは流浪する  作者: FRIDAY
肆:暗がりの奥で眠る記憶を
112/148

08.過去①

 

 

「あの子が守護連に確認されたのは、そんなに昔のことではないの。今からおよそ5年前――そしてそれは、調査によれば、あの子が恐山を降りてからのこと」

「恐山――そもそもどうして、恐山を降りたのです?」

「降りたというか……降ろされた、らしいのよ」

 どこか難しい顔で、向枝は言う。

「あの子の体質……わかる?」

「体質……ですか?」

「そう。――集霊体質」

 霊を集める体質――と、向枝はそう言った。

「それも、異常なほどに強力な、ね。ただ“在る”だけで、“よくないもの”を無尽蔵に集め続ける。そして、わだかまったそれらは、互いに干渉し合い――」

「――やがてより大きな災厄を引き起こす」

 それは、聞いたことのない話ではない。条件が整えば、いつでも起こり得る現象であり、それらを解決していくのも、守護連の仕事だ。

 だが、あくまでもそれは、条件が整った場合だ。

「たったひとりで……それも、ただ“在る”だけで、災厄を?」

「生活していた場所も、ちょっとよくなかったのよ」

「……恐山」

 極東でも指折りの霊山だ。

 それも、迷えるもの、まつろわぬものを集めやすい、“渦”のひとつ。

 そこに、それほど強力な集霊体質者がいれば。

「……でも、恐山で問題が起こったという話は聞いたことがありませんけれど。恐山に生まれ育ったのなら、そういった問題がいくつも起こっていてもおかしくない、いえ、むしろ起こっていないとおかしいのでは」

「生まれ育ったわけではない……のよ。それも、わからないことのひとつでね」

 向枝は白城の言葉を、わずかに否定する。

 わからないこと。

「出生不明、なのよ。わかっているのは、あの子が恐山にて、とある高名なイタコに育てられた、ということ」

「高名な、イタコ」

「その方は、どうやらもう亡くなってしまっているらしくてね。そしてその方が亡くなられたときに、そのままあの子も山を降ろされた」

「降ろされて――それから?」

「よくわかっていない、わ。ただ、そうね、高確率でできる予想として――その後数年間のどこかで、あの子は“魔女”にコンタクトした」

「そうだ――それもわからないんです」

 向枝の言葉を受けて、白城はもうひとつ思い出した。

「以前、任務中にも聞いたのですが、その“魔女”というのは、何者なんです?」

「それは……」

 訊いたとき、向枝はこれまでの中で一番渋い顔をした。

「……“魔女”。“魔女”っていうのは、まあコードネームみたいなものでね。正確な名前は、多分守護連の中に知っている人間はいないわ」

「そんな……一体」

「最強の魔女」

 端的に、向枝はそう言った。

「最高にして最強にして最悪の魔女。私も、直接に見たことはないわ。でもその逸話は有名よ。知らない人間はいないっていうくらい。――そうね、守護連の書庫に行けば、資料が結構あるはずよ。その中でも飛び抜けて大きいのは……」

 数拍、向枝は置いて、言った。

「――“魔女”による守護連壊滅事件」

 

 


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ